第四章 単なる技術の問題だ 05 AI探偵
新生寧鑼チームのリーダーを、ひとめ見た一月拱が、大団円をぶち壊してがなり立てる。
「お前の所為だ! おまえエェッ! 全部お前が悪いんだ! 聞いてるんだろおぉがぁ!」
驚かれるかもしれないが、たとえこんなときでなくとも、七七七瀬寧鑼は喧嘩を買わない。
小さくなって俺の後ろへ。姉ながらかわいい。
七七七瀬瞑鑼なら?
「ちょっと、いきなりどういうこと?」強熊こあくは買う人だった。浮遊機のドアをばたんと閉める。「見てわかんない? 私たち今来たところなんだけど? この子に何か因縁でもあるわけ?」
主人公は――とか、そんな格好いい理由じゃない。
単に全滅を防ぐために分けてただけ。
「誰ひとりとしてお前らとは繋がっていない状況で発生する事件にばかり主人公を遭遇させ続けたら、そのことそのものが解き明かさなきゃいけないミステリーになっちまうだろうが! はい解けましたっ、犯人は作者! 犯人はオレ~っ♪ チッ! くそが! 終わりだよ! 今後の探偵小説のタイトルはみ~んな、AI探偵っ♪ で決定♪ ぼくの考えた真新しい探偵も、わたしの温めてきた奇をてらった探偵も、みぃぃ~んな『AI探偵』で固定ですっ!」
「はあ? クスリでもやってんの?」
「お前の所為でオレたちは、全部おしまいなんだよ! おまえらのせえでえええええっ!」
俺は犯人の口による、言い訳がましい自分語りに、さほど抵抗がない方だったのだけれど。
「あっ! あっ! あああ――……っ」
何が起こったのか。事実を並べよう。一月拱がこぶしを握り締めて殴りかかった。長身のこあくちゃんが、掴んだ右腕に冷たい視線を落とす。後遺症のことを知らなかった一月拱が一瞬、感電したことに驚いて、そして――?
何かが吹っ切れたらしく、力なく笑った。