第四章 単なる技術の問題だ 05 盲点XY
もうひとり居た。
慣れ親しんだ自宅の香りは――!?
「二分の『水〇2〇(SLC)』。これはひとまず『Ⅹ』にでも置き換えましょう。そうすれば、当たり前ですが、Ⅹ=456、となります。なんなのかはわからないけれど、とにかくXの値は456になる。234はYとします。Y=234」
ちょっと待って、紙に書く。
「Xが456のとき、Yは234になる。Yは何ですか?」
俺は白紙の白板に、四つ並んだ『?』を再現した。
「もちろんこれだけでは解けません。情報が少なすぎるから。そこで前提条件を紐解きます。紐解いた前提条件で縛ります。ではこの前提条件の解は何ですか?」
いやいや。無理だし、はてなをはてなし続けるとか、静止画なのに動いて見える系の絵で酔う感じ。
「ちょま! 盲点! 四・字・熟・語じゃない!? ここに入んのゎ! だってほら四字熟語のどれかが答えだって予測した場合、どれに決めても決定的な根拠に欠けるけど、四字熟語そのものだったら、違うって言いようがなくない?」
「じゃあその通りだったとして、Yは何になるのよ?」
「えぇ……と、だから、四字熟語辞典の234ページに……? あれ」
「答え言っていいですか?」
『どうぞ!』
なんだっけ? 記憶の中でもう一度入室する。最後にこいつにぶつかったんだよな? 必死に暗記すべき内容に、気を取られずにいられる人間なんていない。最初に白さに驚いた。真ん中で俺は何か“違ったもの”を見たはずだ。そう、丁度、ホワイトボードの真上に――、
「これはですねぇ、四つの『?』というよりは、四つの『〇』なんです。ここに何か四文字の単語が当てはまるのではなく、この四つの丸はなんでしょう? という問題。置き換えられているのは全て同じ『?』という記号ですよね? これらの円は、全て同じものでありながら、四つの異なった側面を持っている――」
「時計……か?」
八人全員と目が合った。
「いや、あの部屋にひとつあっただろ……? あったんだよ、アナログのやつが。目盛まで白かったから、目に入らなかった人もいたかも、」
「アナログ!」
「目盛!」
ペンと紙を全部ひったくられた。
(Xが456のとき、Yは234になる。Yは何ですか?)
視力も落としてはいけないと叱責される眼鏡をかけた少女が背筋を伸ばして集中し続ける。