第四章 単なる技術の問題だ 03 卍メンディー
場面が変わって心が揺れる。悪魔なのか天使なのか判別がつかない。押し退けるだの、自己主張するだの、選択するだのの重圧に、実際問題抗えないのではないか、この俺は?
ペーパードライバーに手渡された途端、没落の一途をたどった方が、ぐんぐんと高度を増してゆき、ついにはくじらの胃袋へ呑まれて消える、凧よりも間違いなく長寿である。
「っもぉ、なにチキってんの!? はよ! それかして!」
(さっきはいじめてたくせに……)
しかしまあ、過ぎたことは過ぎたことだ。怒号の乱れ飛ぶ天国地獄を、ズンズンと掻き分けて進んでくれるおし、いや背中に、内心感謝する俺だった。
「ちょぉ、変態! 亀レスまぢFK!」
引き金を引いた張本人のくせして……。
「で、どれ!? なに持ってけばいいの!?」
「あぁ!? お前も聞いてたろ!? 取ってきてとしか言われてねぇーよ! あれ!? 服は!? あいつここに裸で来たのか!?」
つまりやはりオニガデルカ・ルクレティオの正体は、人型無目敵!?
どことなくアンデスコニカ=カリカモルファに響きが似ていなくもないし。
「あっそれはあたしがもらった。ほらこの下にあるやつが残りの」
「勝手にもらってんじゃねぇーよ! そして着るなら全部着ろ!」
「卍メンディー」
ショーツはぴったりだったということは、デルカの骨盤は狭くない。骨盤が広がっているということは、女性である可能性の方が高い? ううむ……。
「おい、まさかこいつか!?」
「えっなにこれ? じわるんだけど、うわ重っ!」
バッグの中にはひとつだけ、普段の生活ではあまり目にも手にもしない物体が入っていた。