第四章 単なる技術の問題だ 03 侠気
どこも憎めない自信たっぷりなプロデューサー顔で、面白い“画”を期待されてしまった。
(Braggadocio!)
まあ、あんな風体のふたりを従えたまま説く道徳以上に、示しがつかないものもなかったか。
一応、独りで結び目を締め直してみたけれど、まるで侠気が上がった感じはしなかった。
ただ……最後に、面白くはならないよという負け犬発言で、ハードルだけは下げさせてもらいたい。
怠けて太れば、食べることしか能がない豚なのねと吐き捨てられ、克己して鍛えれば、モテたいの? と性欲で動くけだもの扱いをされるように、今回のケースでも、悲鳴を上げてくれなかったら、自慢ですかとそっぽを向かれ、ガチで嫌がられたら、予想できてた。ベタすぎる。つまらない。と愛想をつかされるだろう。
ほかならぬあなたに。
でも止めに行かなきゃいけない。
(ボケ役を泣く々々諦めた、スベり上手のボケたがり屋に、ボケてくるよう命じるか普通?)
無茶ぶりとは本来そういうものだが。
楽屋ウケを第一に考えた無謀な挑戦とは、そもそもそういうものであるが!
「おほん! あー、きみたち?」
はたしてその結末は――!?
「うわっ! なんか来た! だれ!?」
『きゃーっw』
まあまあ。まあまあまあ。自ら混浴の暖簾をくぐっておいて、女性専用車両なんですけどと怒りをあらわにする性格である可能性は、どう見積もってもそう高くはなかっただろう?
「えー、なんだ? きみたちがどういう関係なのかは知らないが、そのー、下のタオルを取れというのは、一度は言ってみてもいいと思うが、ガチで嫌がってたらそこは臨機応変にだな、」
「何もにょもにょ言ってんの?」
「てかなんで目隠ししてんの?」
「…………」
心配は要らない。
寧鑼のを借りて付け加えたパターンだから。
「タオルを着用しての入浴はご遠慮下さいって、ちゃんと書いてあるんですけどぉ?」
『weww』
「……それならば言い直そう。きみたち! その子のタオルを奪うのは、この俺のタオルを、奪ってからにしろ!」
俺の計算では、ここで大スベりするはずだった。
どうしようもないものはどうしようもないらしい。
「うわっ、うわあああっ!」
たすけてお姉ちゃん!