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第四章 単なる技術の問題だ 03 ポリアモリー

 ポリアモリーについて。


「昔は誰もが異性と結婚しなければならなかった。当時の空気にその他の道を、押し潰されていたから。でも今は違う。今はカミングアウトがイコールで死に繋がってはいない。要するに男狩りが始まるわけよ。いえもう既に始まっている! その時きみはどうするか!?


 文明が開化する以前は、結婚をした上で狭斜きょうしゃへ行っても外戚腹げしゃくばらをこしらえても、当たり前だったわけ。それからまあ、笑い話になる失敗譚へ変わった。そして絶対に赦されない犯罪行為として、徹底的に糾弾されるようになった。浮気は心の殺人だ――。


 それなら嫡妻ちゃくさいを諦めた方がよっぽど善人でいられると、おじさま達は判断するわけですよ。結局離婚する先人を見て育った若者は、結婚を幸せのゴール地点だとは認識しなくなる。国は子どもを増やせと言う。法律は倫理は牧師は神父は、ひとりだけを永遠に愛し続けろと言う。


 では最新レイテストの幸せのゴールとはどこなのか? 誰もが少なからず自分の住まう州を、県を、市町村を愛している。人口の減少で衰退する未来なんて望まない。なのに問題は悪化する一方だ――。

 最新の問題とは一体なんなのか?


 一、問題から手前勝手な解決方法を編み出して、活用すること。

 二、自分の欲求の更に奥にある本音を、直視する勇気が欠如していること。


 このふたつだと思うのよね。私は。たとえば不倫。普通の脳みそを持っていれば、不倫をして全てを失った馬鹿を見て、『僕も私も浮気しよう』なんて結論を下しはしないわけよ。そこまではいいんだけれど――、それなら『浮気しない』とは具体的にはどういう行動を指すのか? これをちゃんと解ってる?


 お料理番組っていってもいろいろあるわけだけどさ。タレントとしては素人さんな、農家さんか生産者さんかその知人さんか忘れたけど出てる番組を見たことがあってね? なんか結婚して奥さんも居るのに、べったりくっついてきてる妹とも仲良くお料理してんの。『一途でないこと』は、必ずしも『浮気者であること』と等号で結ばれはしないのかもしれない。


 ブサイク芸人の恋人募集! みたいな企画ってあるじゃない? 私ああいうの好きでよく見るんだけど、いや昔はあったのよ、とんでもない美人ちゃんが次々に名乗り出てきて――、でもお付き合いしないとか。お付き合いしても破局するとか。結末は大体ワンパターンなわけよ。『モテるところ』までは面白かったのに。


 つまりこの世にはモテる人、モテない人が居るんじゃなくて、モテやすい人、モテにくい人、そしてモテレベルというものが――存在しているのではないかしら?

 告白成功率が99%の人をレベル99とする。レベル1の男子は、同クラの二十名弱の女子からまるで見向きもされなかったという理由で、そんな浅近すぎる経験則でもって、自分はレベル0で間違いないんだと決めつけてしまう。それって数学的に正しいと言えるかしら? 千人中一人しか興味を持ってくれなくっても、レベル0では絶対にありえないという証左よ?


 モテないことが不可能となったこのグローバルな社会で次に浮かび上がってくるのは、モテたところでどうするんだという難題です! 女子は一途を貫かなかったことだけに激怒しているんじゃない! きみだけを幸せにするというあの誓いを破ったこと! 結果的にだろうがなんだろうが嘘を吐いたこと! 私が嘘を吐かれる程度の女だったと知らしめられた屈辱に! ――憤っているんだと私は思うわ。赦せない。


 隠れてこそこそ遊んだって、全員とお付き合いする分の収入は、どの道必要になってくるでしょうに?」



 殊更に一石を投じてみせてくれなくとも、剥製にされていない湖面というものは、雨やら風やらホウネンエビやらで絶えず波立っているものだ。

 それは、この場所がこの場所であるがゆえに必然的に発生した騒動だった。大筋は予想するまでもなかったけれど、詳細は俺の予測とは、まるで違ったものだった。

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