第四章 単なる技術の問題だ 03 バフォみ
しかし突然なんつうもんを、男子なボディな俺に優しく的確にパスしてくれやがったんだ。
「ブラがブラが……」
再侵入してきたのは、俺が取り込むのを億劫していた、情熱色のボクサーブリーフだった。
「ブラがブラが~~~っ」
肌を思ってくれていることは、惹句を読まずとも伝わってくる。30コ入。
「ブラがどうしよう!?」
大胆にたくし上げられたエプロンワンピースの中身は、Gスタイルから最も遠いジーンズで、大喜利でよく見るフリップみたいな画用紙には、上段に『braggadocio』、下段に『大法螺、法螺吹き』と右肩上がりの尖った黒字で書かれていた。
七七七瀬寧鑼は俺がえッと驚くまで、母親直伝の阿波乙女スマイルをキープし続け、何という質問を耳にして即座に真顔になった。そしてくるりと踵を返し、部屋から出てゆく。
ばたん。
ちょっと待て。
笑い上戸な俺は、嫉妬心をくすぐられながらも、噛み殺しつつ追いかけた。
で、今日の格好はなんなんだ。
「パンいちエプロンワンピース!」
パンいちでは絶対にねぇーけどな。
「私の名前は、バフォみを感じてチュニりたいあなたの、心にいつもバフォ寧鑼!」
誰がどう考えても、バフォ瞑鑼の方が語感がよかったし、イメージにも合っていた。
メイド寧鑼よりもメイド瞑鑼の方が。
バフォメイド寧鑼よりもバフォメイド瞑鑼の方が。
「バフォみを感じてチュニりた~い?」
お前は誰がどう見ても牛キャだろうと言うのは大層憚られたし、それなら上半身裸になれと命ずるのも随分と腰が引けた。
いやバフォみはともかく、チュニるなんて絶対流行んねぇーぞ。
「テュニりた~い?」
「ティニりてゃ~い」
「それならまず服従のしるしに――」
服従のしるしに?
「うわぁ~~~っ! どうしよぉ~~~っ! Braggadocio! www」
だいぶん迷ったけれど、どちらにせよライブから帰ってきて『4』を起動させないのかと問われれば断然NOだった。ただでさえ明日は月曜なのだ。そうと決まると善は急げ。二の轍は踏まないようできる限り努力するに越したことはない。そりゃあ瞑鑼様とアンデスコニカ嬢とアデスディーテ姫を連れて行けば百人力だけれど。うん。
か行で遠慮なくフリックする。