第四章 単なる技術の問題だ 03 スレタイ
息子を医者にする方法。
こいつに大量の草を生やせば、おなじみの玄関口で激しく自己主張してくる、他まとめサイトへのスレタイその一に早変わりするわけだ。
基本的には三種類あるらしい。
ひとつ目は『プラスの意味で面白い、非日常寄りの実体験』。
たとえばこうだ。
お悩み相談委員に変えたら美人がブスだと思ってた話。
――何を? となるだろう。醜陋だと思い込んでいる口不調法ちゃんと親しくなられたハッピーエンドが目に浮かぶだろう。SNS上での薄っぺらい不毛なやりとりにうんざりした非モテがいた。アカウント名をそれに変えたら、自分イジリが大嫌いな人気者がマイナスのプライバシーを積極的に開示してくるようになるはずもなく、悩みとは無縁な陽キャとは、いい感じに疎遠になった……。
しかし人生には、初めて猫を飼ってみて再生数が激増した瞬間など、たった一度しか訪れはしないし、他人の幸せに傷ついてしまう、心がすさんだ丑三つ時もあるのだ。
鬱々としたお話だからといって、頭から投げやりになるわけにはゆかない。
ふたつ目は『代名詞を多用して、ひと息に結論まで言い終えてしまう』というもの。
お芝居の最中ならいきなり、あいつあったまおかしいわあ。面と向かって会話している場合なら、少々空気を読んで遠慮気味に、ちょっと聞いてほしい話があんねんけどかめへん? こないだ俺ひっさしぶりにブチギレてもうてなあ。
筋を取ったささみに小麦粉をまぶして溶き卵へくぐらせ、パン粉をまんべんなくつけてから適量の油をしいたフライパンへ投入、片面三分ずつギリ火でじっくりと揚げる。
みっつ目は『遠回しに要約するか、同種のテーマに沿って手短に一席ぶつ』。
懐古厨にも時には迎合しなければならないようだ。あまりにも文明が機械の方向へ傾きすぎてしまったというぼやきには、昔はよかったというニュアンスが込められていなくはないから。家庭にはそれぞれにルールがある。大人というものはやたらと信念を貫き通したがるもので、ゲームがボーイであった夙昔では、うちは駄目っである方が、坊やは好い児に育ったのだ。