体験版 004 瀬戸際で泣く泣く摘果
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異世界転生では確実にありえないが、もしかするとこいつは『アレ』で……
なんて言ったっけ?
――『世界改変モノ』、か。とにかく。『広義の異世界転移』に――、
含まれるのか?
違ったか。
主人公を残して、世界の要点が組み替えられた場合と、別未来の自分に意識が乗り移った(あるいは互いに中身が入れ替わった)的な展開の、2パターンがあるんだっけ?
「即ちここは、『にくちゆ! ~おぷてぃみ荘へようこそ~ 体験版』の世界なのよ。β版」
「べーたばん……」
と言われても、まだどちらのパターンなのかは判別がつかないが、確かに元いた世界では、ストレートなメタ周り担当は“僕”ではなかった。
「正確には第3の『にくちゆ!』世界ね。第2も参考にもう一度、ベースをリビルドしたっていうか。『こいつにはこれしかない!』ってキャラデザもあれば、甲乙つけがたい最終候補から、片方を泣く泣く摘果しなきゃならない瀬戸際もある。だから私は3人目の“デビルエンゼル”ってわけ。あなたは死なないわ?」
デビルエンゼルとしては2人目だと思うけど。
泣きぼくろは両目の端に、合計で2個あった。
左うるりに右メドウ――であったはずなのに。
「『2』で名前変えちゃったから、ウルカリオン・ウルフマインと《ゲマインシャフト》は繋がるのに、《ゲゼルシャフト》の何が“驚異の空間”なの? ってなってたからねぇ……」
「?……」
その辺は、間違いなく自分で編集したのに記憶がない。
「メドウセージ髪のネイヴメイド様とも、妙にこう、イメージが混線しちゃってたしさ?」
赤と白の“ウル”カリオン・“ウル”フマインと、
緑と黒の“ライ”サンドラ・“ライ”ムデビルエンゼルでも、
同じ回数韻を踏んで、犬と猫で、陽と陰で、炎と雷で、綺麗すぎるほど美しく、対になっていたというわけか。
じゃあなんで『第2の世界』だけ、まったくの別名に変更したんだよ。
だったらいっそ、平“和”でよかったろ。
「『Lysandra』って本当は『リザンドラ』だし、よく考えればオリジナリティには乏しかった。というか あんまりにも”ポ”クモンすぎた。名前まで徹底してWヒロインを『対』にすること――にこだわるか、『個』の独自性の方に、重きを置いてあげるか……」
「『作者』とやらが ひとつ上の次元に存在しやがるのなら、よっぽど愛されているんだな」
「んふ♥」
『オコローリヨ』と『ジュンジューライ』も、なんだかんだ『これしかない枠』なのだろう。
『バァーミキュライト』と『イイポズドオ』は、後ろ向きに石を投げて決めたのに違いない。
こんにゃろう。
「はぁ~っ、説明の仕事終わり♪ つかれた。もうねよ~っ♥」
さっきは じゃまと吐き捨てた、うにを抱っこしてベッドへIN!
ごろごろと溶け合うと、薄紫色のショーツの端が、お尻の上へ横へ満ち干した。
……ううむ、しかし、『メタ』もアリとなると、どう考えても、『第1』『第2』『第3』全てを知ってるっぽい この“デビルエンゼル”こそが、世界が改変されてた場合なら文語的張本人だし、平行世界を自在に行き来できるのなら、『2』から僕をどうにか連れてきた犯人だろう?
違うのか?
他のやつらも似たようなスペックの持ち主だったら、特定はできなくなるか……。
あきれるほどベタだけれど、『夢オチ』であるパターンもあった。
実に考察したくない。
ゲームは実況者をヲチする方が段違いに安くつく。
おもちゃなんか画像さえスマホに保存できればそれでいい。
どうせ派出所は爆発したって、来週には元に戻っているんだからな。
……いずれにせよ。
宣言通りに両方手に入れろと偉そうな口を叩いておきながら、『第2』へ帰るにしろ、『第3』に居残るにしろ、どうやら《メドウユウラ》か《デビルエンゼル》、どちらかひとりには間違いなくバイバイしなければならないらしく――、
映画一本やるつもりかよ。