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体験版 002 冷血なまま熱血を


        2



『クヨクヨ・ウジウジ』の主人公から、『熱血』に代えたのでヒットしました!

 う~ん……?


 果断の栄誉。勇断の誉れ。思い切って馬謖(ばしょく)を斬った。断ち物。願掛け。好きなものを我慢した見返りに、オレの願いを叶えろ。苦心して産み出したキャラクターをひとり、泣く泣く諦めたんだからリターンを寄越せ!

 ――的なアピールが、ひねくれ者の鼻腔には漂ってくるけれど、でもそれって別に、作者が直接『熱血』だけを『主人公』に固定して撮影し続けなくても、『熱血ちゃんがメインの回を五感で捉える、低体温の語り部の中』から適宜描けば、それでも良かった話だよね?


 違うかな?


 こっちの方が『パリピ』と『帰宅部』の両極に、同時に共感を提供できるしさ?

『諦めない』はどこに行った?

 両方助けるんじゃなかったのか?

『せめて創作の中では救い(ハッピーエンド)を描いてあげられる』、とは?



 みんなほんと送り手になった途端、タダ飯……嫌いになるよなあ。

『〇〇を生贄に、●●を召喚!』――の形を。『一番初めの等価交換』を。どういうわけか、商魂たくましくあるべき戦場へ流れ着いてから思い出して、愛しすぎる好きすぎる。


 おそらくそこには、ヒトの目にはめちゃめちゃに魅力的に映るらしい“外聞の悪くなさ”が、ゴールで待つ“黄金宮”と同じルクスで 輝いているからなんだろう。


 みんなと足並みをそろえなかったら。

 悪い意味で要領の悪い生真面目ちゃんが大勢、律儀に自力で真正面から試行錯誤している中、ひとりだけ胡麻を()って媚を売って、師匠から秘伝のタレを頂戴できたら。

『B型は自己中』なんて汚名を着せられて袋叩きに遭うのが日本だし。


 でもそれって『結果』よりも『過程』の方を、愛してるってことだぜ?

 幼い頃から憧れ続けてきた“色を好む英雄”じゃなくって、『正直な本音を大声で伝える』以外での愛情の入手方法は死んでも模索したくない永遠の無名人による“引きずり下ろし行為”を、嬉々としてガンとして足蹴にできない、寝る前の妄想限定の “超絶イケメン”なだけだ。


『無から(きん)の錬成』に、限界まで近づこうとしか、『ガツガツ』がファッションじゃなかったら、考えないはずだからな。



 まあ、愛くるしいヒロインを、瑞々しいその唇を、たわわとかいう単語はむず痒くなるから嫌いだけれど、とにかく もち肌な女の体を、『ポンコツ』と『陰険』が取り合うことなく――

 いや、たとえ取り合っても、親父を含めた男の兄弟が、デートの相手としての『お母ちゃん』の腕を引く “人肌”の程度にまでしか熱は上昇しなくって――

 といった空気には、三度の飯より脳内麻薬が好きな“脂ギッシュ”グループは、不愉快千万、彼女ではない女友達が普通に複数名いて、ドロドロのメシウマの三角関係にならないなんて、最近の若者は気持ち悪いッ! ――ってなるのだろうけれど。


 でもでもだって、あんたらだって、結局奥さんの父親さんと、一緒に酒を酌み交わしたり、露天風呂に浸かったりしたいんじゃんか?

 結局 愛娘(まなむすめ)の女性器でしこたま遊ぶボーイフレンドを、メッタ刺しにしないんだろう??

 嘘つき呼ばわりも、根性なし呼ばわりも するつもりはないけれど、本質は何も違わんよ。


 顔見知りを私怨でもって(ちぬ)れば、完全に無関係な外野の、とりたてて抑揚のない人生に、“HYPE(ハイプ)”の刺激を贈呈してあげられるのだけれど、そんな親切は、こっちにメリットがなさ過ぎて、あんまりにもアホらしくって、実行に移す気が起きない。


 というわけで、えー、クヨ・ウジのターンだ。

 カメラマンが元気マンを……、また後で映しま~す。





 夏休みは終わって新学期が始まっても、土日・祝日は当然あって、労働(バイト)と言っても『おぷてぃみ壮』は『炭火焼肉店』なので、基本的に朝と昼は、開店したとてお客は少ない。


 時間がなかろうが無理して作って こなさなければならない課題もあれば、更にその上に、貯金というか保険というか、『医学部』とも『ラグビー部』とも正反対の位置にいる奴の就活というか……、つまり執筆活動のことだが――があって。

 まあ、プロであれ駆け出しであれ、『広義のクリエイター』に属する者が、壁にぶち当たる話なんて、真新しくないどころの騒ぎじゃないんだけれど、とにかくそれで。

 なんというかこう、実際、事実として、未だに、現実、決定的な動機に欠ける……んだよな。


『至高のマニュアル』が手に入っても、

『時間』を捻出できても、

『体力』と『気力』を取り戻せても――、

 

 いや、実はそこの壁もまだ超えられていない。

『食って元気出す』――ってなんだ?! 全員が柔道部員じゃあねぇーんだぞ?!

 眠りながら飛んだら眠りながら飛べるよ♪ ってアマツバメ様から聞いて即、実行できますか?

 食えたらそりゃあ元気が出るさ。

 いやいや、食っても元気が出なかったりする!

 大成できなきゃ良いものは食えないのに、良いものを食わなきゃ大成できないなんて!?

 

 ……まあまあとりま、そこも越えられた自分が手に入った地点に辿り着けたとしよう。

 マニュアル、時間、体力・気力。

 ここまで手許にそろっても……、何かが足りない。



 誰にだって『個性』というものがある。

 たとえば『人の話を聴くこと』。

 こいつにも『好きすぎる』から『嫌いすぎる』まで、80億人分の幅がある。

『笑いの沸点』。

『低すぎる者』から『高すぎる者』まで、80億人分の距離がある。

 …………。

 前者は『日常』で生活しやすい。

 誰だって気持ちよく喋ってる時に、『うるさい黙れ』なんて舌打ちされたくはないからな。


 短所を長所へ転換させられようが、『後者である』という『個性』は不変だ。むしろ好転させられるがために――はみ出さないということは抜きん出られないということでもあるから――、平凡の利点を欲張る気持ちの方を、叩き潰さなければならなかったりする。


 そうすると一周回って、『日常』では呼吸し辛いまま……なのだ。

 伊達者か賢者か定かでないが、間違いなく協調性には欠けるので(ひだる)い。

 ひとつ、そいつは、確かにキツい。

 永久に。



 それでは根本の問題として、そういう『日常で苦しい苦しい言ってるヤツ』が作ったモノを、いち読者として摂取したいか? したくなるだろうか?

 と、こう、僕は今 自問する。


 ――自分だって、正直言って、『元気マン』チームが情熱的に息を合わせて餅搗(もちつ)き上げた、漫画やアニメが見たかった。

 ――無論、作品にまぜるな危険――彼ら彼女らの『過去の素行』や『現行の承認欲求』は、完璧にシャットアウトすることが大前提だが。


 映像化される自作の主演に、脚の長い美男美女を起用したくならない者から、裏方へ進むしかなかった“ちんちくりん”にも光を、と叫びなさい――。


 生身の『元気先輩』に隣で溌剌とされたら、劣等感に圧し潰されてしまうので、この場所には居て要らない。だから、『全人格を否定しますか?』という選択肢が提示されれば、『はい』を選んでしまいがちになる。しかしそいつは『純粋な善』ではなかった。場所がひどく限定されていて、共感にひどく限定されていて、刹那的な感情にひどく自由を奪われていた。


 適材適所。

 黜陟幽明(ちゅっちょくゆうめい)

『ここには要らないがあそこには要る』。

『あそこには要らないがここには要る』。

 ――といったものしか、逆にこの世には無かったらしい。



『情熱』は、最終的に受け手のもとへ届くまでの間に、次第に失われていってしまうものだ。

 こいつには異を唱えられまい。

 こいつは間違いのない真理だ。


 風邪をひいたときに重宝する『おかゆ』や『経口補水液』程度の“馳走”なら。『すげー気分が重たいときにも だらだら嗜める、奥行きの深くない作品』なら。すげー気分が重たい時に だらだら作っても、仕上がって然るべきだと、世界のルールに対して、ぼんやりと命令していた。

 ……と、いうことなのかな。

 それでは、こいつを逆算すると?

『受け手』へ届いた時点でも、『最低限の熱量』が、残っているべきだから――?



 ノックの音もなかったし、ドアノブがガチャガチャと神経に障ることもなかった。

 いつからじいっと覗かれていたのかは判らないが、いつだって女体のインプットに余念がない勤勉なディスプレイは、前もって入り口に背を向けて固定してあったので無事だった。


「リオくん……、できたよ♥」


 関西人が気まぐれで、閃き任せに、だしぬけに、面白半分で、ちゃきちゃきの江戸っ子を除いた東京人のモノマネというボケをぶっこんでくるのは、今ここに始まった話ではない。

 まったくもってアニオタサイドの人間ではないなんてことは微塵もありえないし、注意力散漫王のこの僕にも、“過集中”が降りてくる時点というものは皆無ではなく――、

 とにかくこの時、僕はただ、『そういやお姉さんだったなあ』という感想を抱いただけだった。『デービルさんの声真似、楽しそうだなあ』と。


 うん?

 できた?

 なにが?

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