第四章 匍匐漸進 010 BMP12(仮)
10
累々たる成人式よりも重傷な、罪作りな吾輩かと思った。
(おいおい、まさか……、烏骨鶏の遺伝子に、“BMP12”まで組み込んだのか!?)
月光のもとで、存続のために馬謖を切った乳族の我々には、二度と蘇り来ない《青》。
ぐにゅぐにゅと鬱血した、気持ち悪い肉腫だけが唯一、批難できる汚点だったのに。
《土竜》という名前、存在、単語こそ、人類にとっての2改め5及び4ちゃんねるであった。
「弁解を貫き通せ《人食い帆掛け船》!! 《仮釈放する親譲りの悪癖》!!!!」
アルプスを越えるマレンゴの嘶きで、乳母を乗せたジャイアント・ネイクドネック・ウコッシャモが跳んだ。
幸福を呼ぶキーウェスト島が見えなくなる。蹴爪は歪に曲がっていた。バシリスクのように立派な“クレスト”を発達させたミシシッピワニに、激リシュリュー視される。理想のがに股で疾駆してはくれず、トカゲと一緒くたにして、ザックリとしか知らない識者に、コラ画像だと言われがち。
そう、こっちは『まるで』と直喩した途端、『馬鹿が』って訂正を促されるんだよな。
爬虫類という概念が死語になる。
質も量も上だもんとキィキィ豪語する、尾籠な偃鼠のプライドを、生物学的に引き裂いて。
驚き疲れておなか痛い。
「兄貴!?」
「お兄ちゃん!?」
いや、ジャニュ姉、フェビュ姉、マァア姉の次に、エイプルォメイを飛ばしてジュンジューライが産まれたとは思っていなかったよ?
ちくしょう。
ピグマリオン効果ね?
おっぱい。
『イエティ』に『巨大な熊』ね?
はわ~、伏線王、伏線王。
OPPAI!
タブレット(PC)の中で、空から降ってきたワニが、シャチーズに貪り食われる。
海真っ赤。
『Z系』でも『坊系』でも『貉系』でもなく、ただ着ぐるみを着ていただけだったことと、それを脱いでも顔一緒やんだったことが超面白かった(白目)。
ふたりは同じ船で海上を保安している間に、いつしか恋に落ちていたらしい。
ばらちゅー。
また大袈裟に嘆いてみせると思いきや、
『これは興奮する……!!』
ともかく、実兄捜しが彼女、ベリサリオン・イイポズドオの第一目的だったということで。
《小魚遊の美禄団》のリーダー、ジワル・ルサンチマンは逮捕され、レンア・ダルトチルド、トモリ・メメントを含む三十四名の行方不明者が――奇跡的にも――全員無事に救出された。
ルリセと再会を果たすシーンでは、鼻の奥で密かに感涙。
へへっ、BGMが卑怯だぜ。
彼女たちはこの島で何をさせられていたのか?
これは……、遠まわしに説明し様がないな。屠殺だ。人間でも動物でもなくなった失敗作を、食肉へと加工する作業をさせられていた。
女子ばかりを集めたのは保身のため。
男はすぐに、耐えるのコマンドを破壊して、自殺や謀叛を企てがち。
同類を屠り続けるのは辛いけれど、人間を食べてはいけない。だから――
ジャイアントシャモロックとジャイアントモダンゲームと、ジャイアントドンタオ鶏とジャイアントノイヴァイゾン鶏が、うじゃうじゃうじゃーっと首をもたげる。
宇宙船共喰い号は、今日も猫背で必死にこそこそ、カブトガニの内出血を隠して青い。