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第四章 匍匐漸進 006 鈍感王と理想の犯人(仮)


        6



 美尻んが見えていますからと、冗談めかして付け加えられる空気ではまるでない。

 来なければいいとかやめてくれとか、一応こねることができた心に、人情の片鱗を見つけられた気がして安心する。


 では人は、幸運に恵まれ続ければ幸せになられるのか?

 恨まれるに決まってる。

 みんな辛いのに。


 では人は、永遠に悲痛から逃れられないのか?

 これから前向きに考えようという教科書通りの袋小路では、痛々しい既読無視対策軍俺通信支部が、迷惑行為防止条例の首を獲って嗤っていた。夜深けまで。


(自室の惨状をお前は今すぐ詳細に口述しなければならない)


 避けようがなかったという慰めを、どう頑張っても正当化できない。些細なミスを一度も犯さずに生きられる人間なんかいるものかと、居丈高に負けを認めてみせても、失ったものは戻らない。ありったけのあたたかい嘘をお母さんに求めると、血も涙もない羅刹らせつになった。


 余計な問題を惹起じゃっきしてくれやがって。

 ルリセをさらった真犯人が、ルリセを窃盗犯に仕立て上げたんだ。動機や目的を悟られにくくするために、何かしらは詮索できるであろう痕跡を適当にでっちあげて。ルリセの部屋を荒らしたのなら、あまりにもひねりがないから。なるほどな。


 ゆるがせにされたからだろう。

 僕はどうしてそこまでイジリっ子たちを想うのだろうと、ひらがなが嬌鳥(きょうちょう)する青年漫画を見下ろしながらむすぼれた。

 エッセイ風のポストに憬れない先生方が全員、コミュ障でむちむちな眼鏡腐女子だったらいいのに。


 付き合った期間で贔屓する度合いを変えるのかお前は。

 それも自由だ。

 施してやった感を出すんじゃない。


 世間には、いじめられていることに気がつけない鈍感王タイプも一定数存在するらしい。殴ってでも関わってくれる方が、興味・感心を持ってくれないよりも傷つかないから。

 いや、こんなにも目茶苦茶にひっくり返されたのだ、こじつけてでも激怒した方が良い、



 あのばか! ウルカリオンすぺしゃるも持たずに!



 ものの数分で警察が来た。

 理想の犯人の指紋など、ひとつも見つかりはしなかった。

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