表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/401

第三章 闇髪の注瀉血鬼 03 予言

 魚介にも痛覚があり、植物状態に陥った人にも意識があった。

 停止した体の中で俺は全てを見せられる。

 人生を六千億回、生まれてから死ぬまで体験させられる。


 残り時間、なんと17兆9999億9999万9999年364日23時間56分ドゥルルル。俺は思わず笑ってしまった。これを発狂と呼ぶのなら、喜んで発狂してやんよ! かこかこかこかこ、かかっか過去過去、かかか過去過去、かんかか閑古っ!


 他者の知識からのみ教訓を抽出しようとする妄想ボーイ。自己の経験からのみ教訓を得ようとする思い出ガール。知識と経験をかけ合わせてこそ生まれる『知恵』。発展途上国へボランティアに行き、みんなで笑顔の写真を撮って帰国して、自分の言うことを聴かなかった我が子を包丁で折檻する、やる偽善教信者。利己主義でありかつ利他主義でもある『啓発された利己主義』。


 『働かずにお金が欲しい』と書かれた絵馬。それを見て笑う、働いていない俺。それを書いた、働いている誰か。板きれを売るだけで死ぬほど儲ける神社仏閣関係者。いや、あんたこそそこに勤めなさいよ! そこまで答えの近くに来ていて、お金を払って差し上げるって!? 俺が放った自慢の突っ込みは、意外と明るい大宇宙に、静かに吸い込まれて消えた。


「ああああああああああああああああああっ!」


 しかし死の恐怖も二度は頭をもたげなかった。あと六千億回生き返られるからではない。そんなものは実在しなかったからだ。恐怖はこの世に実在しなかった。死は怖くないし痛くない。むしろ甘美だ。これが真理だった。これこそ最高の快楽だった!


(こんなことを全人類が悟ったら、保険会社は確実に潰れるだろうな……)


 苦しいことは、ほんのちょっとした不注意によってであれ、加害者になることだけだった。間違った『定義』を盲信し続けていることが、ありとあらゆる諍いの原因だった! 最早全てはひとつだった。全は一だということは、地獄は天国だということで、男は女だということで、俺は君だということで、無目敵は人だということだ。


 そうだ。人は『平等』を求め過ぎていた。男が悪い女が悪いと教唆する先生がいるか? いやいない。自分を教育者へと育て上げ、それから人に接するならば。花を育てる気持ちで万人に接するならば――どんな隣人トラブルも解決できるはずだ。


 揉め事が起こるのは双方の精神年齢が幼稚園児レベルだからだ。子どもを上手に扱えないのは、ファザコンな娘に嫉妬するのは、自分を指導者へと育て上げる勇気がないからだ。自己を肯定したいという欲求に負け、毒親に毒入りで固められてはいないと頑なに主張し、激痛を伴う心の外科手術から卑怯にも大人気なく逃げ回っているからだ。


 男女分け隔てなく平等に愛する、夢の中の理想の先生……。

 俺は自力で見つけた気になったのだが、これももう幾度となく予言されていたことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ