第四章 匍匐漸進 004 Jアラートレスの夜襲
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ごめん死んだ。
防空頭巾を目深に被った、真っ黒な雪だるまがそこにいた。
這入ってきた瞬間に判った。もとより哺乳類は夜行性の動物だ。せっかくの前向きな計画も吹き飛んだ。やはり地上は地獄なのだ。あれだけのことがあってなお、ライトロード島に平和な日常を期待するのは狂気だったこととは無関係に――
ああ、違う。ルリセは大丈夫。いや、そう考えると既に惨殺されている最悪の映像が浮かぶけれど。
ウルカリオンは心配いらない。あいつは狩る側だ。
イイポズドオに至っては不死身。つまりこれは、ただ、
「~~~っ!」
声が出せない。黙っていないで知らせてくれよと苛立つ気持ちもよく解るが、こちらにとっては、暴漢を折伏することではなく、自分の命を守ることの方が正義のゴールなのだ。下手に刺激しなければ、今すぐに殺されることはないかもしれない。意味もなく、そう、意味もなくというところが最重要のポイントだった。意味もなく死期を早めたいと、人は思うことができない。
(怨恨による犯行!)
そうだよな、『実質生殺し状態なんですけど?』なんて、煽り文句以外の何物でもなかったよな。
僕はぱんつをするんと脱がされて、
あ、違う。
下着ドロの方だ。
(え?)
これが死ぬよりはましってやつなのか。うそ。でもこういうのって、結局殺されるのがパターンだよな? なら今すぐに抵抗――も、できないやあはは。力つええ。すげえ重い。人間の顎の底力に足がすくむ。急所を逸れても止血が十全でなければ失血死するんだぜ?
ふっと部屋の明かりがついた。
瞳孔が縮小する。
明順応には比較的時間がかからない。
「お、お前は――!」
愁眉を開く思いがした。
よくよく考えれば、どちらともこんなに早く出て来られるわけがなかった。
カメラワークを工夫すれば、全員全裸系物語も、深夜にギリ放送できるのではないか。