第三章 肉声祭 006 遏雲の曲(仮)
銀河見のジュンジューライの声もした。
操縦をやめたらしい。
次第に全てが凪いでゆく――……
『?』
この三十秒は長すぎた。
作戦も読み合いも裏のかき合いもありやしなかった。唯一得られたのは、『O型はかわいい』という結論だけである(狼嫌いには共鳴してもらえないかもしれないが)。
普通ならこの段階で解毒剤を求めていておかしくない、敵の薬剤を不用意に胃に入れたCKB眼帯が逆ギレする。
「おいお前! なんも起きねえぞ!」
「っ、そんな……! 《ZOLマン・タブレット》は、やはり、伝説上の存在に過ぎなかったのか!?」
なんだこの遏雲の曲は?
そう思ったときにはもう手遅れだった。
取り落とした名刺サイズのそれには、見慣れない横文字が颯爽と駆け抜けていた。
そういうことだったのか。
目玉だけはまだ随意に動かせた。
コツ、ぱちゃんと海面に浮かんだそいつを拾い上げたのが黒幕で、
「ふふ。別に食べんでもよかったのに?」
「ウ、ウウウ……!」
人間の行動は九割以上習慣に依存しているという。
それはさておき、愛くるしいたぬき顔の阿波乙女は総じて、小粒でもどろりと甘い、金時系……。
糖尿病には気をつけろ。
「ウルカリオオオオオオオオオ――――――――――――――――ン!!」
その絶叫を境に僕は、《生きる力マン・レモンライム》へと変身した。