表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
372/401

第三章 肉声祭 006 ZOLマン・タブレット(仮)


 頭の回転が止まっても、そうじゃないだろうと批判する、厭世心だけは無駄に健在だった。


「オコローリヨ! あいつが誘拐犯だったんだ! ちくしょう、ゆるせねえ!」


「潜入捜査やってたんかも!? ほしたら私らの所為で台無しに!?」


 運転手も黙っていた。

 船にはすぐに追いついた。


「止まれーっ! そこの海賊船ーっ! うちの大事なクルーを返せ! 決闘しろ!」


 メドウさんが、流石にそれはないかと俯く。情熱的な冒険団長に乗るしかない。頭の悪い僕にはもう、どうやってここまで来たのかも思い出せなかった。何かやましいことがあるから、逃亡をやめないのだろうし。こちらが乗り込んで乱闘に――


「ええ、うそ! なんだこれ!? え!? こ、お……、遠っ! ぜんぜん届かん」


 なる心配はなさそうだった。

 団長は、帆船しかなかった時代を舞台とした映画みたく、『ぴょいん』と飛び乗る腹積もりだったらしい。かわいい。


「たった1、2メートルがあ!」


 1メートルも垂直飛びできる人間が――いたとしてもこのスピードじゃ、両脚を離した瞬間、真後ろへ吹っ飛ばされるぜ?


 何かを閃いたときの「あっ」が聞こえた。追い越してジャンプか? 振り向くとメリトは、名刺サイズの清涼菓子、クーレットらしき物体を手に、嬉々として格好をつけていた。


 いや、ドヤ顔でチャッチャッと振られても。

 なにそれ?


「《ZOL(ゾル)マン・タブレット》だ!」


 わからん。


「ついにこいつを、使うときが来た!」


 どっ! と大きく傾いだ。ずぶ濡れではあったけれど、船は未だ走っていた。オコローリヨ・ネンネーシナが、ゼスト・メリトクラシーの右手首をねじり上げていた。ゆっくりとそいつを奪い取る。先の金髪は優越感で、後の金髪は悔しさに、それぞれ顔を歪めていた。


「かっ、返せよ……!」


「そいつは無理な相談だ。なにせ俺はこれから、1、2メートルあっちにある俺の船まで戻らなきゃならねえんだからな」


「そんな仕様もないことのために、変身されてたまるか! あーっ!」


 美少女が全裸で眠る古代文明の遺跡のように猛々しい喉仏が、躊躇と逡巡と錠菓をぐるりと咽下する。

 変身?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ