第三章 肉声祭 004 ルーガギラリちゃん(仮)
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『そうかもなあ』
チッ、またシンクロしちゃった。
(しかしあれでは、素顔を熟知している肉親でさえ判別がつくかどうか怪しい)
髪型と衣装こそ、ルーガギラリちゃんのものであったが、口にはマスク。目にはサングラス。頭にはついに出た八色目、紫の稲妻、ネムラアメジスの猫耳帽。
隠れたいのか目立ちたいのか。それまでも判らない。ちびっこいからまだ可愛げがあるものの、そうでなければ、隠し持った包丁で刺されるのではないかと距離を置きたくなる風体だ。
目鼻と口元だけは何があっても見られるわけにゆかなかったけれども、そこだけを隠しても全体の雰囲気で感づかれてしまうがためにコスプレをしている一般人を装った本人――という設定のコスプレなら見抜かれる可能性が低くなると考えた、ヴィンカ・パデレウス本人?
ううむむ。仮にそうだったとしても、目的はなんなの? 僕はカタログをだしに、万緑叢中紅一点。
うわああ! ひょいっ×2じゃないよ!
冬ならまだしも。
(どれもこれもめんどいのハードルを越えられれば、ネットで簡単に入手できそうだ)
でぶ猫は褒め言葉だ(小顔だから)の、欲しているこれかなあ?
しかしこんな下品なものを?
女子に性欲はないんだぜ?
女子に性欲はない。
ああ、単に仕事を忘れて遊具を満喫するために?
深夜の近所の公園で、大人が独りではしゃぎまわったら通報されるから。
あの格好で遊んでも……そうだな。『玉砕覚悟で特攻した結果手にした己の0点』の方が、『挑みもしなかったあいつらが知らないうちに手に入れている見えない0点』よりも凄いという自分ルールは、
あ。もうおらん。
『いってきまーす!』
『いってらっしゃい』
また一致。
しーん。
まあ、あんなにも見端の濃ゆい2人組だものな。
こっちはこっちで需要がある? やめてくれ、姫の取り合いだ。
いや、こいつは高所と閉所と眼鏡にまるきり興味がないだけだが。
「ゲームはあったか」
「もうすぐだ」
強情っ張りの紫キャベツめ。
見つからなかったらストパーの刑に処してやる。
中2な私服をベタ褒めすると、素直に受け取られた上でお返しまでくれた。
ど、どうも。
天然で計算高い猫舌猫ローリヨは、『観覧され車』を降りてから、女の部分をまさぐった。
アフレコできるよスポットでは、おもちゃにされたふたりの動画が、早速一位へ躍り出た。