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第三章 肉声祭 002 ピンポン(仮)


        2



 どうしてよりにもよってこうなった。

 僕は開放感を求めた空で出会った鳶のフォルムに惚れ直した。

 隣の褐色☆細マッチョも、そろいたくないのに、白目に近い三白眼。

 どこからか漂ってくるケバブの香りが実にシュールだ。


 暑さを話題にしてもなあ……。

 服? ううん……。


 最近身についた習慣で確認。乳首はどちらも、ほくろと見紛う極小サイズ。……。やれナントカメンにならないためには、ここでおどけてピンポンするメンにならなければならないということだった!

 無理だ!


(女性ファンの数が一番多いメンコンテストで優勝したい欲を押し潰して不可能だ)


 どこが『あねあね荘』やねんと、時折元気に突っ込まれながら、僕たちふたりはぎごちない営業スマイルで黙々と肉を焼いた。

 よりにもよってが重なって、あいつがひょっこりやってくるまでは。


「お!? お前らいつの間にこんなに仲良くなってたの?」


『は!?』


 くそう、またシンクロしちゃった。

 一生の不覚、2。


「こらこら、勝手に食うな!」


「なに笑ってンだ!?」


 知り合いだったのかと驚き合う暇もない。


「ん? なに。ああ、いいよ! いいよ! え? おう、任せとけ!」


 僕は1(ゾル)札を五枚受け取って、ポイをひとつ手渡した。


「んん? どれ、赤じゃだめなの? ラメ? おおあいつか! ちょ、あー! 破れた!」


 きゃっきゃっと取り巻きの美女連中が笑う。

 宝石メダカすくいを頑張る、”人造ラングドシャ猫ローリヨ”にも、ゴリっと突き出た憎々しい喉仏があった。





 盗まれたゲームソフトを捜し出せ!


『盗まれるな』


「……。え。おいおい、おいおい! お前らつめてえな! 冷酷すぎんだろその態度!」


『?』


 バイトであれ接客業に従事していれば、毎日とは言わないまでも結構な頻度で友人・知人に再会するものだ。

 ましてや今日は、『汗みずくで夏をむさぼっちゃお♪ ゆとりトレジャーハントもあるよ 肉声祭』なのである。この暑い中、積極的にラムネハントへくり出す、少なくとも塞ぎの虫にブレインハックされてはいない女子と、出くわさない確率の方が低かった。


「だって無理だろ。犯人がこないだ遊びに来た友人Sだと判ってても帰ってこないようなもんを、どうやってこんなにでっかい島の上に今居る全員の中から捜し出すンだよ?」


「いや、それをみんなで考えようよというか、試みもしないってなに!?」


「あれ、お前、なくなったら新しいの買えばいいじゃん的なスタンスじゃなかった?」


「いやいや、自分はそれでいいからといって、他人にまで強要すんのはおかしいだろ!?」


『? ?』


 僕はオコローリヨ・ネンネーシナと、たぐいまれなるアホ面を見合わせた。

 忘れている人も大勢いらっしゃると思うので、もう一度端的に説明すると、オコローリヨ・ネンネーシナとは、挨拶と同じ感覚で、うちの第一ヒロイン、ウルカリオン・ウルフマインとイチャコラべろべろちゅっちゅする、雄っぱいマウスパッドに閉じ込めた途端、魔改造されること請け合いな、金髪で碧眼で筋肉で鷲鼻で左目眼帯の――、両乳首眼帯だ。


(もう二週間になるのか)


 本日、ルリセリ・ハコベメルは、『白筋兔(ニーラ)』のコスチュームで(ケインズ)の前に現れた。

 オジサマの瞳をハートに変え、鼻の穴をムッハーッと広げさせ、両腕を萌え萌えキュンキュンさせて、だらしなく開いた口から生唾を滴らせる、従来の白バニーを思い浮かべてみよう。


 まず赤系のパーツを眼鏡まで全部青系へ変更。そして鎖骨をオミット。いや待て、落ちついてチャイナドレスを思い出してほしい。ほとんど隠れているからこそ、スリットが生命の輝きを放つんじゃないか。ニーソも穿いてた方がいい。だろ?


 胸にはモフモフのフェイクファー。谷間なんか見たところでなんになる。うるりん系の女の子が、手触りの良さを求めて、無意識で白昼堂々と、そこを撫でるなり揉みしだくなりしている映像の方がよっぽど目の肥やしになる。


 へそ出しはNGだが、ボディペイントではないと言い張れば、彩色を変えるだけでOK。食べすぎた唐揚げをもう見たくなくなった丁度その時に限って運悪く嗅いでしまった、出来たてのコロッケから立ち昇る香り、否、お手洗いに一番近いテーブル席でも懸命においしそうな湯気を放つ皿うどんに酷似した、あのガールですよ感縵々なデルタをスマートに覆い隠すこいつは、マイクロミニショートパンツという。


 網タイツも髭面泣かせの白だった。

 これが新時代のルーズソックスのダイマだ。


「くらえっ、ニーラ・肉シール手裏剣! しゅしゅしゅ!」


「なんの! YESYESハートぱんち! ぺと。イエ~~~ッス!」


「うわあああああああっ!? NOOOOOOーっ! NOシールプリーズ!」


《人造OTOGI(オトギ)》。


 集めたシールでキャラクターの能力を強化して戦うスマホゲームだ。非課金勢にも楽しめる、ルールが少々簡略化されたカードゲームだけでなく、(じん)OTO(オト)シールが豪勢に六枚も入った、人造OTOGIチップスも人気だぞ!


 まさかのコラボ、人造YESYESアオミノウミウシウシりんによって、YESYESハートシールをおへその真下に貼りつけられたルリセが、白筋兔(ニーラ)に成りきって決めポーズ。


 へよ。

 力こぶのちの字もない。

 へよ?


「きゃーっ! ネンネーシナくん、筋肉すごーい! すごい硬い! 両手でもうわあ!?」


「お前も意外とおっぱいでかいな。ケツはちょっとちっさいけど」


「ええーっ!? このひとものすごく遠慮がないwww」


『…………』


 人のことはまるで言えなかった。

 ピーンポーン。

 ぶん殴られた。

 チッ、恥じらうな、気色が悪い。


「あっ、関係ないけど、今夜妹に膝アイマスクしてもらおう」


「お前っ、クソケイン、ズお兄様ぁぁぁ~~~っ!?」


 攻略厨かな。

 我らが冒険団長は、意外にも一番真面目に、まさかのコラボ、アルペン尾鶏を隣の出店で焼いていた。

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