第三章 肉声祭 001 マンゴーソーセージ(仮)
さあ、明日、例の島で開催される、一大イベントへ向けた準備だ。
シャワーを浴びて、うにゃにゃ成分を洗い流した僕は、昼食を簡単に済ませて厨房へ向かい、冷蔵庫――じゃなかった、あー、まあいいか。生クリ~ム。なんか卑猥。で、板チョコ。を剥いて切る~。ゴッ、ゴッ。
はぁ、これがおだてられて大根おろしおろすマンになった気分か……。はぁ、腕痛い。でもこの切断する感覚、心地いい。まあこれも『自己の忘却』の境地に達するため、忙殺、つまり『作業療法』を求めた結果と考えあっ、いかん、火にかけておかないと。しかし沸騰させないように!
ゴリ、ゴリ。
ボウルを一応もう一度水洗いして、棚にかぶせたときだった。
ぴちょん。
「お。はりきってやっとるな、お兄さん」
甘い香りを嗅ぎつけたミントチョコ姉さんが、ぴょこりっとやってきた。
「なんかてつだおか?」
本日はおでこ丸出しのラフな自宅スタイルで、女性陣からの『いいね』と『kawaii』が半端ない。
「じゃあ混ぜ終わったら、味見してもらおうかな」
「おお、それは重要なしごと!」
ゼスト・メリトクラシーは、ただ今自室のお掃除中。直売店には肉牛スメルが漂っていて普通という理屈も、店長には通用しなかった。僕は他人に部屋を清掃されても平気なタイプの汚い嫌いだった。エロ漫画は男の誇りさ。もとより未成年漫画と一緒に飾ってある。
ウルカリオン・ウルフマインは、銀狐リオン・イイポズドオを伴って、メイド様の子どもたち五人と遊ぶ仕事をがんばり中。脱衣所ではあやうく、ぬけがけマセガキされそうになった。『ウルカリオンすぺしゃる』の製造で、ハイになったからだとか。
にんにくのにおいがガンガンに残っている。僕は火を止めて、砕いたチョコレートを投入した。首に片栗粉をまぶしたら、きっといい手触りになるに違いない。
「私ももっかい練習しとこー」
作り方はこうだ。ミニクロワッサンを切り開き、マーガリンを塗る。野菜なんか要らねえ! 特製のマンゴーソースを注入、多めの油でテラッと焼いたロングソーセージを贅沢に挟む。マヨネーズソースとケチャップはお好みで。
「でけた! これが『メドウユウラすぺしゃる』☆ その名も! 『満点珍おかずパン』……」
「サブリミナルじゃないよ! モロだよ! モロな単語のみで構成された全てだよ!」
「うふふっ♪ 何を言っているの? ほら、はやく口ぱぁして」
「あーんしてと言われたい夢なんか持っていなかったけれど!」
んホォッ!?
ポリッ!
うん。味はうまいというか、
「さっき何食ってたっけ、お前」
「ひーふほリアほ、ふイカいっホまるほほ。あちぃ」
『はみ出るうまさ! ロックフェラーサンド』に変えても、あんまり相違ない気がした。