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第二章 カレタ島の冒険 002 胃袋ふたつ(仮)


「ド、ドラララムラ先生!」


 彼女たちが而立を境にメタモるのは、アンチバァーミキュライト系女子が、極寒の新世界で、生きる力を磨いたためらしい。

 従って目が眩むことは自然。

 子孫の健康のためにも!


「『生霊を飛ばしやすい体質』!?」


「あー、いるよね、そういう子」


 少女の名はゾナ・ミゼレーレといった。

 ここ、リユロープ大学付属中学の三年生であるらしい。


 まるで真逆。

 といった感じ。


 この子は比較的長身でありながら、精神年齢は未熟。ご自由に分娩台にまたがり、中学生らしい下ネタを言って自分で笑う。ああ、丸出しだな。すごい見えた。うん。知ってるけど恥ずかしくて言えないなあ。こらこら、そういう単語は人前で言っちゃいけません。


 人手が足りなかったため、このドラララムラ・イシヅキ先生に声がかかったのだとか。

 嫌です、それは自分で注文してください。


 詳しいことは判らない。

 知りたいと思いたくなり辛いハードルがここにはある。

 まあ男の担任には相談し辛いこともあろう。


 ハッピーなイベント満載のこの、焼肉諸島だからこそ、心の病を抱えた人の数は多い。

 誰も彼もが都会で挫折し、逃げてのびてきたのだ。


「ちょっと待て。そしたらなにか? 僕にも霊感あるってことか?」


「半信半疑なんでしょ、だから見えたり見えなかったりするんじゃない?」


 思い当たる節はあった。

 心霊番組が激減した本当の理由を、検索してはならなかったのに。


 デジタルカメラの出現で機械がミスをしなくなったからだというもっともらしい説明こそが、民衆に信じていてほしい嘘だったとしたら? あっと思った。はっとした。ドヤ顔で信じ切っている常識が、植えつけられた贋物である可能性を、誰がゼロパーセントだと断言できよう。そこから日常の崩壊が始まる。異世界が現実になり、現実が異世界になる、そんな日に備えておくのも悪くはない。


 デジタル機器で撮影されたものの中にも、よくよく探せばあるはずだ。

 シミュラクラじゃ説明のつかない指が。

 UFOも今では日常的に見られるものになっただろう?

 そもそも、先人が非業の、無念の死を遂げた場所へ、肉体のある若者が面白半分に立ち入る行為が、善行であるはずがなかったじゃないか。


 俺なら平気。誰でも思う。千分の一の確率なんか当たる方が難しい。しかし視聴者の数が問題だ。一万分の一でも一億人に見せれば一万人が実害を被る。そうなればパーセンテージは意味を失い、単なる物理現象へと昇格する。ここで一が全となる。


 ということは逆算できる。すると沼から抜け出せなくなる。少しでも多く儲かるのなら、風水だって利用しよう。突き詰めれば自分さえよければいいのが人間なのだから、信じないでい続けることに疲れたらやめるだろう。それは即ち信じているということだ。


「こ、これで完璧に見えるようになったのかな?」


「さあ? 荒らせば撮るなって写るわよ」


「こわい!」


 霊感の有無なんか関係がなかった。


「ねーなにたのんだのー?」


「あん? ジンジャーエールとポテトさ!」


「うまそう」と膝の上に乗ってくる。


「ゾナは何を食べたんだ?」


「んー。てばさき、じゃないほう」


「へー。あっ、バニラアイス! ジンジャーエールに乗せたらうまいかな」


「あんたそんなに食べれんの。おなか壊さないでよ」


 チャレンジメニューである、ジャンボつけ麺から先に来た。

 何故だ。

 いや、分娩台要素が入ってても困るけど。

 いや、三キロって。


 ストップウォッチを持った店員さんが、にこにこ笑顔で監視を開始。

 団欒をぶち壊す緊迫感……。

 ガッとつゆの入ったボウルを掴んで、


「んっ、んっ、んっ、ぷはーっ、おいしい♪」


『いやいやいやいや!!』


「ん? なに? 半分残してるわよ?」


つゆ(それ)は別に全部残してもいいんじゃねえ!?」


「最悪五キロ超えるわよ!」


「ぅふふ!」


「?」


 胃袋がふたつあることを黙っていなければならない二十分間は、ことのほか辛かった。

 二百(ゾル)もゲット。

 うるりんタイプの店員さんで助かった。


 これは自分が懐かれたんじゃなくて、この子が人懐っこいんだ。

 ああ、そうだな。いや、したことないけど。ああ、子どもさ。

 白衣の男がやってきた。ゾナが飛びつく。成程彼が本来の……、


「ガ、ガリガリガイコツ先生!?」

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