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第零章 上京 018 大宝


        18



 1ミリもエロ漫画みたいじゃない『家庭』というものこそ、絶対に実在しないのではないだろうか?


『なにを!? 俺にはお姉ちゃんも妹もいない! あああ!』という憤り。

 お兄ちゃんが欲しかった女子も、WEB上にはキモオタの妄想の『兄と妹』しか見つからなくて、うんざりしているはずだ。


 いや、その、なんだろう。

『その視点じゃない』――というか。

 たとえば君が嫁を、あるいは婿をもらって誕生した『家庭』は、ひるがえって100%、『エロ』なわけだろう?

 そうでなくとも全てのご先祖様が、精力的に励んでくれたからこそ、今この自分の肉体が、現世に存在しているわけで――


 朝の会話文も集めてはみたのだが、「あー」とか「おー」を超えてくるものは得られなかったので、ここで、地の文で、ぱっぱっと説明して切り上げることにする。


 さすがに始祖こそ親父ではないものの、立山家を大家族へ膨らませた張本人は奴だった。

 大家族……。

 まあだからここは、ちょっとした別邸だ。

 実子ガチャを精魂尽きるまで回せば、自分みたいな『引き籠り(ハズレ)』を引き当てることもある。そして『多動』と『自閉』は別々に育むに越したことはない――。立山たてやまは先に『ワタ』を取り出すようになっていた。当たり前だが、卵巣のあるものとないものがあった。



 情熱の違い。

 バイタルの違い。

 立山家(うち)はどういう風に『それなんてエロゲ?』だったのかというと、『親父がハーレム王だった』――に、端を発するものとなる。


『学校一モテる男女』と、『自称クラスの人気者』とは、天と地ほどの差異がある。

 親父がスポーツ万能で、そこそこ文武両道で、愛想も思い切りも面倒見も良く、発想力も集中力も決断力も行動力も人並外れていて、男女を問わず多大な支持者に囲まれており、信念は圧倒的に80年代なままなのに、むしろ倒れた他人に駆け寄らないだの産んでくれた母親とその辺の石ころとの見分けがつかないだのと抜かす『悟り世代』とは徹底的に違うからこそ、『ゆとりな息子』と『ゆとりな後輩』と『ゆとりな他人』を、平等には愛さない。


 全員同じ『ゆとり』なのになあ。

 悪なる偏愛の蜜をすすって、食べこぼしにも血眼を光らせる生活。

 プライドなんか守ってる余裕があったら、今頃表で駆け回ってる。


 並の阿房あほうは、彼女や奥さんにこそこそと隠れて浮気をする。

 それで結局見つかっちゃって、W不倫だの、離婚だの、違約金の発生だので地獄を見る。

 ところがうちの親父は並大抵のそれではないので、外でモテたら普通に家に連れて帰ってきてた。

 ――それから何をどうするのかというと、とにかくうちの女連中と遊ばせるわけだ。

 いちゃつかせる。

 女同士が密着する方向へカメラを向けて喜びまくる。

 そうでなくとも仲良くさせる。


 それから会議なんかを情熱的に開いちゃって、女性陣のパワーを軸に、女性向けの衣類販売店みたいなやつを、とりまネット上に立ち上げては、ガールフレンド同士の団結力を高めることを第一目的とした、労働環境を作っちゃう。

 それでやはり『感情』は、男性よりも女性のものであるから、売り上げが伸びたりしたら、彼女たちは抱き合って喜んでしまうわけだ。


 ちなみに今一番盛り上がっているのは、『168cm以下の男女』をメインターゲットにした、スタイリッシュさと実用性を兼ね備える、はばかることなく最初から短足仕様な、自宅で普段着にも使える『スポーツウェア』の事業である。

 あとは鉄板の、ギャル向けの衣料品のブランドと、『女の子同士を喧嘩させない術』という著作に関する、取材や講演の依頼など……。


 シンプルなパン――『クッペ』っていうの? ――も、彼女連中(上は78から下は21まで!)に作らせてるな。なんでも、おかずやお菓子を挟まない方が、コストもかからない上に日持ちもして、結果、通信販売がスムーズに行えるようになり、廃棄をまさかのゼロにできるのだとか。

 でも「パクリだけどな!」とか言ってた。


 まあ『食べられる粘土細工』で、女子が楽しく遊べるのならそれでいい――みたいなスタンスで、労働をナメてるというか、真剣勝負を全力でふざける奴に限って、きっちり利益を上げられちゃって……、

 なんだかなあ。


 この間は名古屋のペットショップで、アルビノスッポンの赤ちゃんを大量に買ってきて、どうするのかと思ったら、育てて種親にするとか言い出した。

 翌日には、もう手に入れていた『天然温泉の宿』を『大宝(おおたから)の湯』と改名し、養鼈場の増築に着手。

 メインのターゲット層は『中国』だと。

 国!!


 養殖場で育てた個体は価値が下がってしまうというものの……、その他の亀も普通に食らう文化圏へ、頭部さえ黄色であれば高価で取引される市場へ、全身金色な『アルビノの(亀)肉』を大量生産して出荷する――。

 この世は普通に錬金術が実在する異世界すぎて頭が痛い。


 ちなみに、『金色』と『通常色』をかけあわせて生まれた『F1個体』は通常色ですが、この『F1』同士をかけ戻すことで(きょうだい同士を避けたいのなら、親で2ペア以上作って『F1‐α』と『F1‐β』をかけ合わせればよい)、『2000分の1』の金色が、たった『4分の1』の確率で入手できるようになります。


 ――しかし、よりにもよって、金のスッポンで、大繁栄ついでに大儲け……。

 徳川家斉(いえなり)か何かかな?



 えー、そんなわけで、立山家の家斉殿は、おそらくお母ちゃんと奥様で、天丼だか牛丼だかを作りに、無感動なゆとりには全部一緒に見えるクルマでどこかへ出かけました。


「…………」


「…………」


「ああそうだ、ほゎちゃん、」


「えっ? はいっ!」


「あのサラダって、勝手に食べちゃいけないやつだった?」


「え? え?」

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