第四章 ぷにぷに 第七節 プリンセスの魔法
「ってきた……」
願いはたとえ届いたとしても、そう都合よくは叶わない。
「オレ達の青春がッ! 戻ってきたァッシッ――! あはは♪ アハハ♪ ラはははは♪ う、う~~~ん、この自然とカラダが動くRhythm! エネルギー漲る街のIlluminationッ! コレだ! コレだよ、この活気! ドンドン、ペリペリ、ドン、ペリ、ペリドン♪ ほらソコのオタッキーもキープ君も、オジャマムシもカウチポテト族もぉ♪ キャモン! レッツ、呑みニケーション!」
自分勝手な祈りは大概、熱心に聞き入れられてそこで終わる。
「このヤングなボデーが、ネオンが、ナオンがあれば! ぶぷっ、不景気なんか簡単に吹き飛ばせるし、いずれは世界を、いや宇宙ウォ! オレたちは救うことができるんだ! やった、やった、YATTAぁ♪ ほんっとーに、諦めなくてヨカッタぁっ……♪ ピピッピ、ピーカン♪ パパッパ、パンピー♪ アバンチュ~ルでラプソディ~の、オ・ム・ニ・バ・ス! パビリオン! カモオォン! も~と!」
引き寄せの法則はインチキだというよりも、想いの力に、質量保存の法則を無視したチートパワーを求めてはならないというよりも、我儘で当然な大衆の願望こそが、たったひとりに微笑む女神を産み出す母体であるからだ。
椅子取りゲームに負けたところで、テストの点で、脚の速さで、経済力で勝ればいいとは言うものの、椅子取りゲームで負けたその事実は変わらない。その試合に限った話に置いては、確かに人は負けたんだ。
「踊れ踊れ踊れッ――――! 騒げ歌え呑め遊べッ――――! レッツラゴッ~~~~~~♪」
ぼくたちはトんだ。
9割9分9厘、白目を剥いて。
汗も涎も鼻水も拭わずに。
筋肉が悲鳴を上げても終始ガニ股で。
意外でもなんでもない。これは、だからこそ避けていた最高の快楽だったのだから。
滑って転んで頭を打っても、痣ができても、爪が剥がれても、ぼくたちはむしろ更に熱い抱擁を泥まみれで交わした。
無限に回る、満月の太陽に魅せられて。
5、6時間、乱舞してやっと、興味人身の遺物、左右対称の白胸毛へ戻らなかった1羽の刺青を、自称『本物の人間』、スクューアイ・ディヴァインビューティは見つけた。彼は心の底から楽しそうにはしゃいで、天高く嘶く戎馬へ飛び乗った。出発進行と笑う声が聞こえる。そして人馬はいきなりスピードを上げ、笑いながら泣いていた生身の妹を、ぼくの目の前で撥ね飛ばした。
ぽーん……




