第四章 ぷにぷに 第五節 補習魔法
五
《魔法学:人間学・錬金学・会話学》。
化学物質の添加なしに、化学反応を現実世界で引き起こすもの。
これが、現実に実在する《魔術》の基軸だ。
非物質のエネルギーを呼び水にして、物質を移動させるエネルギーを製造すること。
等価交換の法則を超越して、1のエネルギーを数十・数百・数千倍に増幅すること。
すなわち、痛覚と情愛と魂を有し、言語を解する知的生命体を動力の源とすること。
こいつが、現実に実存する“魔法”の基礎である。
自称ではない本物の魔法。
幻覚を普通に見せられる、何の変哲もないただの話術。
幼稚園児にも放てる、『梅干魔法』……。
ダウンロード版が主流になったからといっても、ハードとソフトの関係性は変わらない。
すなわち『人間の脳』が『ゲームハード』で、『なろう小説』が『ゲームソフト』だ。
目から入った文字なのに、鼓膜で声が聞こえて、目を閉じてこそ映像が鮮明になるだろう?
共通の独眼竜が嫌でも目に付く海外のPV戦士を、今いちど思い返してみたまえ!
土台というのは白紙のことさ。
初めに骨組があって、そこへ壁紙だの音楽家だの、耳を妊娠させる機械だのを、厚着させて個室にする。
そうすれば人間は、善意に満ちた文言であろうが、特によく考えもせず、たとえば握美を、喜んで脳味噌へ刻み込んで、焼き付けて、好き好きに溺愛するようになるだろう。
特によく考えもせず、
好きなように生きているつもりで!!
量より質なのは、いちいち文字に起こすまでもないことだ。
一体どこの節穴になら、『義務教育を抜きにした高等教育』こそが一等大事だと、死ぬまで信じていられるよ?
コールドリーディングでもなんでもいい。
ペリー女子とデシャネル女子を、先程検索したばかりの君には、穴が開くほど見つめてくる、握刀川刃楼の純真な白緑が、ひだまりの双眸が、鮮明に浮かんでいるはずだ。
ただしそいつは正確な『ツインショートポニテ』ではなくて、ポニテ好きな君好みの『おてんばガールボブ』だが。
――まさかと思った?
君だけはちょっと、人並み外れて頭が良すぎるな。
大切なのは易々と、赤の他人の術中にハメられないことだ。
簡単に口車に乗せられないことだ。
絶対に騙されないためには、喧嘩を買わされないためには、他人の思う所へ誘導されないためには、全ての文章に気を許さないこと、全ての言論を疑ってかかる習慣が必要になってくる。
無条件で反射的に、思い描けてしまってはいけない。
そんなものは憧れの想像力なんかじゃないし、共感覚なんて所詮自称で、大袈裟な誇張なんだから、羨ましがるような代物じゃない。
『おっぱい』という四文字がある。
凡庸から抜け出す努力は、いつだって誰にだって必要だ。
色のついた乳房の映像だけにしか、理系の大好きな『=』で結ばないから、血管が破裂する結果に繋がるんだ。
君は今すぐに大好きな漫画を読み返して、台詞から背景の無機物に至るまで全ての事象が、1文字1文字の『言語』によって構築されていることを、視認できなければならない。
また騙された!
絶対にお前たちが理科系の男であるはずがないという確信は、もしかしたら我々が意図して、抱くように画策してきたのかもしれない……。
連想しない力。あるいは、連想だけで終わらせない強欲と猜疑心。木を見て森を見ない力。あるいは、森を見て木を見ない天邪鬼。手を洗って蛇口を洗ってもう一度手を洗う周到さ。
こいつを鍛え上げれば、『氏ね』とレスされて腸が煮えくり返る地獄もなくなる。
《魔》を迎え撃てる《術》を体得すれば、物事の多様な面を真摯に受け止める強みを掌握できれば、ほんの僅かかもしれないが――生存できる確率を上げられる。
忌まわしい下層階から抜け出せる。
ピラミッドの上層へ一歩近づける。
そいつは楽しい刺激だったはずだ。
柳の下で、切り株で、不老の幼女へ転生できないと、舌を打ち鳴らし続けることよりも。
本作に限った話ではないが――、プロローグの1文字目から、今この瞬間に至るまでの全ての日本語を、1文字残らず、『目で読む文字』ではなく、『耳に聞こえる音』だと認識できていた君には、
おめでとう。
ぼくと全く同じように、詐欺師の才能がある。
利口でないなら仮想現実を考えなしに飛び出して、TPOをわきまえずに好き放題に、暴れまわってみてくれたまえ。
答えじゃないけど言ってしまえば、それでもまだまだ現代人は、表面にとらわれすぎている。
更に、細分化しなければならないものを細分化せず、細分化してはいけないものを細分化していて、ワンフォアオールとは口ばかりで、確実だが無味無臭なゴールよりも、ドキワクの刺激に満ちた『自作の努力方法』の方を、未だに愛し続けている。
たとえになっていないかもしれないが、『ぼくのかんがえたさいきょうの囲碁・将棋』欲。というものがある。
ぼくのかんがえたぼくのさいきょうの異能力の話さ。
『面白さ』は絶対に、細分化しなければならない。
娯楽の中でも骨子だけは、相対的に揺らがないからな。
異能力!
魔法でも超能力でも、自称魔力でも母性本能力でもなんでもいいが、こんなものは、演劇の見ごたえを底上げするための“背景”に過ぎない。
ヒトが求めているのは、未来のオレが金貨を得るための、過去のテメエが金貨を得たメソッドであって、自称マジョリティな刹那主義のギャンブラーだけが渇望する、学生のまま今すぐに大金持ちの気分を味わえるとかいった、アホみたいにどうでもいい『脳内麻薬』なんかでは決してないからだ。
現実世界での『エリートVS下級戦士』――(α)と、異能力で世界ごと劇化した『エリートVS下級戦士』――(β)。
この(α)(β)ふたつをこそ、きみは比較しなければならなかったのだ!!
そして大概、現実世界での自称下級戦士は、研究に研究を重ねて忠実に再現された生々しい(α)よりも、こどものファンタジーがふりかけられた(β)の方を好んで貪る。
例の『たい焼き君』の売り上げ枚数は、現在でも一体何位なんだっけ?
それなのに、またしても表面へただいま!
殴る・蹴る単体に目を、閃光する火花に心を奪われちゃって!
『エリートVS下級戦士』という骨子を!
『信念だの思想だの、主義主張だのといった、抽象的な概念同士の闘い』を!
また今日も玉雪な肌肉の中へ、どういうわけか意味不明に入れ忘れて倒潰。
君はちゃんと創作をする際に、実際には誰も死亡しないが、確かに手に汗を握る“舞台上の殺陣”と、個別に分配されていてかつ、ひとところへぎゅうぎゅうに詰め込まれている“幕の内弁当”を、今まさに君が、とりま軽~く1,000,000文字ほど喋り倒そうとしている“娯楽小説”と、まったく同じものであると認識できているか?
梅干と沢庵の配置を間違えても、激怒されて廃棄になる。
攪拌機へ全部ぶち込んだって、質量に変わりはないのに。
最低限の、そして同時にありったけの――機材と食材を、死に物狂いでかき集めて、準備して、しかし、それらを全て使用してはいけないという、当たり前の規定にぶつかる。
こいつはちょっぴりもどかしい。
実際こう、語り始めると。
大好きなアニメで考えてはいけない。
あそこは1人称を3人称へ解凍しなければならない厨房だ。
ここが3人称を1人称へ圧縮しなければならない独房であるように。
『空のいけにえ』を一度読めば、清々しい敗北感を味わうことが出来るだろう。
当たり前に小説が執筆できる上に、漫画まで描けて更に、自作のアニメーション映画を大ヒットさせられる超人に。
大好きなアニメで考えてはいけない。
誰でも簡単にVtuverと遊べる昨今は特に、トーク力と画力の価値には雲泥の差があるのだから。
それなら『全てができるエリート』ではない君は、いま何力を鍛えるか?
嗚呼、憧れのトーク力!!
過酷なロケとは疎遠になった、MC業がそんなにも妬ましいのなら、過去も含めた全ての有名人と現在のスタッフの、顔と名前と特技と横の繋がりをインプットして、先輩へ後輩へ『コミュ力』を、暇潰し感覚で労働時間外に寝る間も惜しんで発揮すればいいのに!
トーク力なんか磨いていないで。
妹との会話がぱたりと途絶えて、1週間強が経過した。




