第四章 ぷにぷに 第四節 石ころ以下の不老不死
四
たまには単刀直入に言おう。
科学だか化学だかで再現した魔法を『本物の魔法』だと言い張っても、お兄様のパクリ呼ばわりされないのであれば、我々だって君たちの大好きな『魔法』を、なかったことにはしなかった。
未来の科学で再現した魔法を、魔法だもんと言い張れば、『独創性に欠ける』『後出しの癖にクソ生意気』『先輩への敬意が足りない』。
魔法を再現できるようになった未来の科学は、魔法ではなくて科学だろう、と言い放てば、『自己主張が強すぎる』『新顔の分際でクソ生意気』『先輩を侮辱している』。
未来の科学で再現した魔法を、『自称魔法です』と発言しようものなら、『はぁ~あ(クソでかため息)』『神秘性に対する冒涜だ』『オレたちの夢を返せ!』『既存の魔法物語の、何もかも全てを馬鹿にしている!』。
……。
今は蕾な志望者全員に、『永遠に咲くな』と言いたいのかね?
こんな理詰めは後輩に、『死ね』と言っているのと違いがない!
そして我々は、死ぬわけにはいかなかったというよりは、『不幸』などというものと、『挫折』などというものと、『枉死』などというものと――、最早そんなに縁が深くなかった。
日の当たる表社会から、飽食のビニールハウスから、ぴったり人肌の温泉卵から、情け容赦なく蹴り出された時点で、本来は死亡していなければならなかったのに、そこで発起の必要に迫られて、あるいは偶然、運よく耐性がついて、生き延びられてしまったモノが、我々の鼻祖なのだから。
科学の世界の物質に着火できた時点で、その炎は科学属性だったことが証明されてしまうし、その炎が魔法属性であることに徹底してこだわるのなら、科学の世界の住人の全員を平等に、『魔法が使えない代わりに、魔法でダメージを受けることもない、選ばれし弱者』として描く必要に迫られてしまう。
理想の魔法を求めた結果、ここはゲームの中です等と自白してしまえば、当然、その魔法世界自体が、科学世界の内側に含まれていることを証明してしまうし、科学の世界の住人が一切登場しない、理想の魔法の世界を創れば、現実世界在住の読者から、共感の代わりに多大な嫉妬を寄越される。
辛い現実を忘れられる、楽しい楽しいファンタジー世界に、感動と感情移入を欲張って、人の死や悲しい現実を挿入しようものなら、『あれれ~?』『矛盾だろこれww』『みんなの夢と理想を形にしたんじゃなかったんですかあ?』。
自己投影をしてもらうには、現実味の度合いを高めなければならないが、リアリティを高めれば、理想の魔法の世界からは遠のいてゆく――、しかしながら、もっとたくさん遊びに来てもらうためには、ファンタジーの度合いを高めなければならない……。
独創性がなさすぎたら、『手に塗りすぎ、絶版』。独創性がありすぎたら、『腐った尻を退けろ、老害』。子ども嫌いを白状すれば、人でなしの烙印を押され、子ども大好きとツイートすれば、ロリコン氏ねよと炎上する!
でもそんなことは本当に当たり前のことなんだ。
初めからここは、臨場感と夢の時間を、同時に求められる戦場だった。
仮想現実の内側でゲームをクリアできなければリアルの肉体も死亡する?
実にいいアイディアかもしれないね。
既存でなければ。
今更、科学だか化学だかで再現した魔法を、『魔法』だと主張すれば『旧態依然』。
今更、科学だか化学だかで再現した魔法を、『自称魔法』だと自称すれば『2匹目の泥鰌』。
理想の魔法が実在する異世界へ、主人公だけを飛ばせば『偏愛野郎』。
理想の魔法が実在する異世界へ、地球人全員を飛ばせば、それだけで即ハッピーエンド。
逆に、理想の魔法が実在する異世界始まりにして、科学の世界からやってきた異世界人から、不思議な科学を教わるプロットに独自性を見出せば、そんな話はまさしく秒で、理系の有名国立大学を卒業できた超絶知識人様にしか手に負えなくなる。
こんな理詰めは後輩に、『死ね』と言っているのと違いがない!!




