第三章 Q愛 第六節 医世界チーレム機会均等法
六
お願いされて繋いだ手が、さっと握りしめてきて笑う。この痺れは必要とされる喜びだ。自分によって安らぐ相手でぼく自身もまた癒されて、奪った愛で満足できる他人なんかいなかった。何よりもまず始めに、奪わずにはいられなかっただけなのだ。
売られた喧嘩は買う主義の、短絡的な莫迦男を非難しようとしたらぼくがいた。いや、あれだけを例にとるのは極端か。切除するべきプライドと、融け合いたい女は違う。
女。
デート。
切なげに訪れを待つ不安そうな喉元。緊張気味に横たわって表情を変える唇。それはまるで水に落ちた女の波紋を生きたまま捕らえた詩歌のようで、そう思わなくとも時が止まった。
掴んだ瞳が瞼の裏に秘匿する。
少数派ではないのかもしれなかった。
大丈夫痛くないよと言われて嬉しい女なのだろう、ぼくの妹、握刀川刃楼は。しかしぼくは大袈裟に、超痛いぞと脅しておく方が好きだった、痛い痛い。
鼻からふーっと目を閉じて、いや口は閉じるな。
ついにそのときが来た。
「うっ、産まれるぅ~っ!」
「面白い妹さんですねー?」
「あ、ありがとうございます……!」
あがあがと検査される。
でも虫歯はありませんでした。
はれえ? なんて驚く刃楼。
まあ、なかったんだからよかったじゃないか。
クリーニングしておきますねと言って、帝王がおばあちゃんのもとへ。
目で笑っても怖くないタイプのピンクだった。
逆に問おう、どうすれば歯科衛生士さんと歯科助手さんから色気がなくなる? 無理だ、そうしたら歯医者が潰れるもの。
薄手の、いや、あくまで通気性のいい衣裳、否、制服で、お上品に素肌を隠した女性に、大衆の面前で触ってもらうカフェ――が、なるほどここなのか。
利点だけ抽出するのは難しそうだな。誰を働かせるのかも問題になってくるし。泡立つ唾液もL字のアレでズゴズゴ吸われるので、歯磨きプレイも何もなかった。それともこれ全体が歯医者プレイなのだろうか。
広告みたいな手作りの歯科通信に書いてあった。最近はできるだけ銀歯をすすめないらしい。削っても極力、セメントで済ませるらしい。
(実は人体に有害でしたって、今更言われてもな……)
恋人繋ぎをするにはサイズが違いすぎて笑った。




