表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
242/401

第三章 Q愛 第一節 テララブてんし


        一



 これはぼくがポミトキ対策活動に心血を注いでいた、母月の終わりごろに起こったお話。

 舞台は地元。明治も残る、自称都会派基本は寝床。飲食店のやたらと多い、人気の郊外、友通ゆうづう町。

 それは、現代人がそっと目を逸らし続けてきた闇そのものとも言える少女だった。





 握刀川あくとがわ刃楼はろうの顔には今日もまた、拇指対向性なんて獲得してもいないのに、木の実を上手に掴めるシマリスが、ついうっかり手を滑らせてしまった際によく見られるあの、渋面に自嘲の左頬をくれる、唖然の表情が羽を休めていた。


 おへそでハートを作ってから、思い思いにかわいく万歳。

 全体の掛け声は、『テララブテラス・リキューパレイト』。


「いっぱい吸ってね寵愛してる♪」


 瞳孔までピンクになった、中2ユリノが元気にジャンプ。


「陥落させます優雅の芳香! ドラグーン・ジ・オキシジェン!」


「ほとばしる愛情のほとばしり!」


 ポニーテールの赤味が増して、火七ほななさんの背も縮む。


「安らぎの思い出のカーチャンの愛! ドラグーン・ヴォルケイノ!」


「日本もふざけてデザインしちゃった♪」


 指先に触れられた眼鏡が、回転する『☆』を飛ばして黄緑へ。

 髪の毛がイエローへ変色。


「そこここで生い茂る遊び心! ドラグーン・コンティネント!」


「永遠に夏が続けばいいのに……」


 ぼくの握美あくみが世界で初めて、いちごチャイ色からスミレコンゴウインコ色へ、モテカワロングから愛されショートへ、前髪とウェーブをゆったり残して儚く憂う。


「いつでも待ってる母なる大海♪ ドラグーン・ジ・オーシャン!」


『4人そろって――、《母星愛天使テララブてんし プラックドラグーン》!!』


 通い慣れた月歳つきとしの自室は、改めて見なくとも天井が高かった。


「パトラ風メイクは暗黙の了解!? 海外のPV戦士! レディー・プトレマイオス!」


 しかしポーズはディスコボロスで、出で立ちは普遍的なピュリティブレイドであった。


「やっ、闇夜は私が――じゃなくて……! くちっ、駆逐、ちがう、ええと……!」


 わかってるのに、いつでも決まって、ろくはしちじゅうにで百点を取り損ねちゃう小学2年生のようにあたふたと、夜々(やあよ)ちゃんが八面相。

 記憶を探る上目がかわいい。


「ふっ、不幸は私が燃やしてやるよっ、炎天下、融解する、闇夜の太陽っ、パフィンブラッドオレンジ、ソードスミスっ! ……あれ?」


 ギピュパフィ専用にアップデートされたへんしんコンパクトが、一応照らしはしたけれど、ニューカレドニアンブルーの瞳が再び姿を現すことはなかった。

 もう一度試みてできなくて、更に失敗が重なって、インフラに初恋を奪われた、17年ゼミの終齢幼虫みたいに青ざめる。


「いや小3にそこまで母性本能力なんかないって! それで普通!」


 ジ・オキシジェンが誰よりも早くフォローに入った。


「それにここには母性本能力がたっぷり充満してるじゃない? 『自分が守る役にまわらなくてもいいんだ』ーっとしか思えない状況じゃあ、余計ね?」


「うん……」


「どの道刃楼はろうにひとりで特訓させるわけじゃあなかったんだからさ?」


「そっ、そうか……!」


「そうそう」


 そしてここで刃楼はろうちゃんがようやっと、詳しすぎる説明口調で、更に皿にしながら驚駭。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ