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第二章 女性の楽園 第十節 そんな馬鹿なときみは言う


「ええーっ!? なにが!? ぜんぜんきにしてないのにー♪」


 場所はまたリビングダイニング。のりこはスマホを持っていないので、キャシーにかけて、代わってもらった。どの道事情を説明しなければならなかったために、ぼくのやつから。


「なんで!? またそんなこと言ってー。あれはもしもの話。もし一緒のチームに入れたらーって話だったでしょ? だから謝んないで。うん。


 いやそりゃ私もおんなじ方がよかったけどー、ほら、昨日みたいに別の魔法少女同士が咄嗟にけったくして共闘することもあるじゃない? あれかっこよかったなー♪


 だからああいう感じでさ、いやあるよー。あるある。ありえる。だって私とやぁちゃんクラスまで一緒だし。パフィンヴァイオレットタイドも『遠いわ!』とかゆってたし。うん。いやまだ私は覚醒してないんだけどね? んふw おお、ありがとー。がんばる。


 は!? 何言ってんの!? 気持ち悪いわけないじゃん! それに中学にはほとんどのみんなと一緒に行くでしょ!? もー。


 いや『ずっと親友だよねっ♪』って発言はさー。そのー、なんていうの? 絶交フラグじゃん? あはは。だから言わなかったのー。うん。しょうらい男関係で喧嘩ー、みたいな? ベタな、え? そう? でもわかんな、んん、それならいいけど……うん。


 え、私? 今カニ食べてた。そしたらお父さんがー、やぁちゃんがひとりで怖いせんぱいのいる自衛隊に入れられて、おちこんでるかもしれないから電話してみなさいって。うん。うそーっ!? ほんとに泣いてたのぉ? へんなやぁちゃん。ぷぷー、おかしー♪」


 電話料金を気にしたわけではないけれど、ぼくは加奈子の視界に入ってから、


「今日お泊りしに行ったら? 宿題持って。どうせ寝れんのだし」


「おっ? おおっ! うん? ああ今、しんちゃんがね?」


 日守ひもりさんの私服選びに少々手間取ったあと、刃楼はろうは大人びたトートバッグに必要最低限のものだけ詰めて、走ればいいや的な思考で選択された無改造な車へ乗り込んだ。

 窓が開く。


「服はね? 私の方がびみょうにちっこいからやぁちゃんのを余裕で着れるの。借りるの」


「じゃああのぱつぱつな食い込み気味の水着は、やはり計算されたものだったのか……」


「んふふー♪ じゃあねー、ばいばーい、おんすく!」


「おんすく!」


 ふたりが出たあとでぼくはまた妙案を閃いた。

 ラップして歯を磨いて自室へ向かう。要件を提案すると快諾してくれた。よし。これで綺麗すぎて怖いほどに完璧だ。


 続いたふきだしにおやすみではなく疑問文。ありゃ、お前も解ってなかったのか。ぼくは直接電話をかけた。





 白面朗はくめんろうユプノがソレイアイト・アリスタートルに恋をしてはならなかった理由。


 これに関しては、ぼくがわざわざドヤ顔で解説しなくとももう既に、これこそ消去法で解がふたつ、あるいはひとつに絞られていることだろうと思う。


 しかしそうなるといくつかの不都合な点というか疑問点が、必然的に浮上してくるはずだ。

 幸いにもそれらは丁度、キャシー火菜ふぁいな氏との話題にのぼった。その全文はこれからすぐに載せるので安心してほしい。


 えー、つまりだ。またぼくがこの何もない空間できみを引きとめたのも。えー、この答えが。この真理が真実が。いわゆる――その、旧時代の科学者。世界の全てを自然科学という学問だけで解読しようと画策していた者たち、そしてもう瀕死になっていた旧時代の科学そのものから、九割九分九厘渇していた威信を、更に奪うものであったからなので――あります。


 要するに“易学”、つまり“占星術”の実在が、これ以上ないというほど皮肉に、自然科学的に証明されてしまったんだ。

 人はついに《心》を《魂》を、自然科学で観測することに成功してしまった。しかもとある女性たちが、白百合十字団が、自由と平等を求めたことのついでに。


 そんな馬鹿なときみは言う。そんなことがありえるはずがない――と。だからぼくはここにひとつの問題を提示する。証明することは基本的には不可能な、世界一意地悪な問題だ。


 いやしかし、副次的にであれ、それを証明終了してしまったのが、ハワイ、グアム、フィジー三点のぴったり中央にあるあの、人工でかつ天然の人体実験場、女性の楽園、セルマルイーズ島で――


 そう。白状してしまえば、この星には、22年前まで世を総べていた倫理は、まるで残っていない。


 まあそれは、女子小学生まで超自然科学の力で改造し、強制的に徴兵して、人類を襲う外敵、《小煩悩変化》へと特攻させている事実からも、十二分に感じられていたとは思うけれども。


 それに易学。これもまた定義の話からしなければならなくなるので実にややこしいのだが、簡単に説明すると、『リンゴの種の育て方』は運命付けられていなくとも、『リンゴの種の育ち方』は運命付けられている。ということだ。


 誰でもスイカの苗からはスイカが実ると明言できるし、その赤ちゃんが子犬だと判れば、子牛の育て方を助言しはしない。


 育て親が違ったからだと言ってしまえばそこまでだが、しかしそれも、DNAには肉体に関する遺伝情報しか入っていないという、空恐ろしい結論をより強固にする結果にしかならない。


 通常、天然の双生児は、当然同じ日に産まれる。非常によく似た個性・性格・嗜好を持った、円盤外げんじつ世界在住の彼ら彼女らは、ひと組残らず同じ生年月日を背負っている。

 それでは――?

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