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第二章 女性の楽園 第六節 新時代の波


「それでは一体どうしろというんだ!?」


 ミーティングテーブルが渾身の力で殴りつけられた。


「……、スパッツでもいやらしいとPTAからクレーム。アンスコでは純粋に淫猥だと苦情。ホットパンツは女性陣からスカートに合わなさすぎると酷評。ショートパンツでは時折隙間からショーツが覗くことがあるために、はしたないとまたNG。単なるパンツなら独創性が皆無、置きに行ってる感満載ですねと無関心。ご想像にお任せしますと発言しようものなら、そういうのって一番嫌い。考えてないだけだろwww ……万事、休すですね?」


「ぴっちりとしても見えるからだめ! ダボダボにしても見えるからだめ! うおーっ!?」


「いっそのこと褌か、袴にしますか? いえ、袴でも見えるときは見えますが……」


「そういう問題ではないのだよきみ! 『女性が脚を広げる』という行為! これがもうこのご時世、表社会では絶対に寛恕され得ないのだ!」


「しかし、魔法少女は空を飛びます! 足技を繰りださなくとも、跳躍する際には……!」


「そんなことはわかっている! 脚は魅せねばならんのだ! 脚は……ッ! ちくしょう!」


 12時間にも及ぶ大激論の末に導き出された解答は、万人が最も不幸にならないで済む、世界最強の次善策だった。


 よりプラモデルのパーツその1らしく見える、野太い縁取り。案外と目を奪われるロゴマーク。物好き以外の食指が動きにくい食欲減退色――これは彼女、『ピュリティブレイド』の、パーソナルカラーであるだけだとも言えるが――ともかく、


 女子ビーチバレー選手が服を着たのだと主張すれば、文句のつけようがないだろう。

 あそこから更に露出が減っているのだから!


「《熱暴走パイレティック・パンチ》!」


 膨れあがった右腕を、右のブーツが迎え撃って衝撃波。

 ツインショートポニテがそよいで、刃楼はろうがぼくから片手を離す。後ろからぎゅってされたまま、


険撃けんげき系魔法が使える《小煩悩変化リトルディモンステラ》!?」


「いや違う……、《一煩悩リトルディ》などではない……!」


 言ったのは月歳つきとしだった。今にも吐血しそうな顔色だった。勇ましく肩を貸すことが出来ないためか、心配そうというよりは、不甲斐なさそうに見上げてくる先の男子を優しく撫で、


「おそらく、やつは……、《百八煩悩ラージディ》……!」


「《百八煩悩ラージディ》!? 歴史上たった三度しか出現したことがないと言われるあの、最悪最恐の!? そんな、まさか……! いえそれでも百を超える欲の生霊が意志を統一し得るなんてことが、伝説ではなく現実に、」


「しかし現にやつは――!」


 ドッと着地した2.0秒後、右膝が偽歳にせとしの左頬へ沈んだ。それからボウリングでよくあるように、惰性でのろのろ連鎖して――ピュリティブレイドが体育館から押し出すことに成功する。他にニューロンが残ってないかと振り向いて――突撃。


 敵しかいないグラウンドでなら、思う存分、実力を開放できるはずだ。ぼくはそう思った。

 しかしまあ、それはそれで、それだけで。彼女はこのあと無慈悲に愛刀を叩き折られた上で、無残にも敗北を喫してしまう。





 今まさに、新しい魔法少女が覚醒しようとしていた。

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