第二章 女性の楽園 第四節 セルマ&ルイーズ
四
少し情報が出たと思ったら秒で解決した。
いや恋の悩みが、ではなく、なぜ叶わないのかという謎が。
この場合、解はひとつしかない。
この島のことだし、おそらくと及び腰になる必要もない。
「えぇ~っ! なんで!? 女の子同士の愛を認めないとか、いまどき頭が古すぎるわ、あなたのご両親!」
「は、刃楼ちゃん、話が飛びすぎだよ……! 片想いかもしれないんだから……!」
「あっ、そ、そうか。最近結婚式続きだったから、つい……ごめんね?」
具体的な子孫繁栄の方法については、永遠に授業で習うことがない、いまどきの小学3年生を残して。
ユプノが伏し目がちに申し訳なさそうに、
「いえ、その、どちらでもあるといいますか」
片想いなのに、両親に反対されてもいる――ということらしい。
「じゃあいとこ同士なの?」
「えっ、いとこ同士なら大丈夫なんじゃ……?」
「ふふん、やぁちゃん、ほうりつ上は問題なくても、じょうしき的にはよくないのよ?」
「そ、そうなんだ、しらなかった……! 刃楼ちゃんはやっぱりすごい、」
「あれ? でも、ユリノさんとこもいとこ同士だよね?」
見上げられた弟は、まさかここで性教育を開始するわけにもゆかず、ただ曖昧に微笑した。
「んー、女同士だとよくなるとか? 特例?」
「あー……」
つまりはそれが答えなんだが。
「いえ、いとこ同士でもないです。それに、きょうだいでもありません」
『ええ~……?』
あらかじめ塾で、ある意味カンニングした、クラス一の優等生だけが解ける最終問題でも見るような顔。
だからわからないんです、と、白面朗ユプノは項垂れた。でも、
「あんまり会わないようにしなきゃいけないって、どう考えてもおかしいと思いませんか!?」
「思う思う! それはおかしい!」
「じゃあ明日会いに行こう! そして好きだと言うのだ!」
「好き!」
「おお、言えるじゃん」
少しだけ上から驚く刃楼。
「そしたら、親とか関係ないふたりの問題だし」
「でもこわくない? たとえ両想いになっても親に反対されるなんて……」
「うーん。でもひとりだと、いつ睡魔に襲われるかわかりませんし、昼間は特に苦手ですし、辿りつけたとしても勇気が出ない可能性がありますから……。私、人付き合い、得意じゃなくて」
夜々がユプノの手を握って、わかるわかると瞳で語る。
「やぁちゃんも勇気がほしいときはじゃんじゃん私を使ってね? ずんずんついていくから」
「あ、ありがとう……!」
元気な刃楼に告白されると勘違いして喜んだ男子が、なんだこっちの方かよと落胆する映像でも見えたのだろうか。夜々ちゃんは味のついていないおからでも食べてしまったかのような声で諂笑した。
ユプノがまたとろとろと舟を漕ぎはじめて、かくん。夢の中へ。
「で、刃楼ちゃんの好きな人って誰なの?」
訊ねたのはファイナル王子。
「お父さん! 私はほんとうに本気でー、世界で初めてほんとうにお父さんと結婚する」
「あー、私も若いころはそう思ってたなー」
「じゃあ今は誰が好きなの? 心ちゃん? 月歳ちゃん?」
「んん~? ひみつ~♪」
座っていられても動かせないし、待機させるのも酷なので、片付けはみんなで行った。
ホテルのバイキングでは、ケーキ・スイーツ祭りを開催して遊んだ。




