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第四章 BRBB 21 白亜木てぃら美のデシルシオン


        19



「生理じゃない? 腰いたーい……。腰の下。こつばん」


「大丈夫カルカ!? 早退する? 保健室行く? お薬飲む?」


「んー、大丈夫ー」


「親に叱られたのかなあと思ったんだけど……何か知らない? 狼坂おいさか君」


 ん? おれ?


氷麻ひょうまちゃん、その服すげー似合ってるよ。みんな戻ってきた青空に夢中でさ、変に騒がれなくてよかったなあ」


「えっ、ああ、うん……。ありがと」


 心配は杞憂に終わりそうだった。

 さて。

 寝たふりをしてスマホで動画サイトで電子ドラッグのついでに、腋の下から生腿をさかのぼる――ではなく、振り向いて堂々と顔を眺めやると、ほんとだ白亜木はくあきてぃらの目尻は、クラスの一番後ろの席で、いつも以上につり上がっていた。


 話しかけてくれるなというオーラに、解きほぐしたくなる仏頂面。

 昨日散々泣いたようにも、現在必至でなにかの痛みを堪えているようにも見える。


 一応確認。

 他のお友だちと談話中。

 いや、あいつは人間中毒故に、ありったけの人間と関わり続けないと、動きを止められたアオザメよろしく死亡するんだ。おれたちだけじゃ全然足りない。まあそれはいいとして――、


 十中八九、あのことだろう。


 おれは三組へ帰る氷麻ひょうまちゃんに、小さく手を振ってから席を立った。

 好乃いいのが出るほどの問題でもないのだから。

 腕を掴んで立ちあがらせると、一組がしんと静かになって、おれたちへ視線が集まった。


「……何」


「いいから来い」


 ショートホームルームを告げるチャイムが鳴ったけれど、構わず進む。幸い空室はいくらでもあった。後ろ手に扉を閉めておれは言う。なるべくあっさりした口調になるよう努めて、


「花松先生は、残念だったな」


「! ……!? ~~~っ、わはぁぁああん! うぅえええぇぇん! ぐおーっ! ずびっ、」


 白亜木はくあきてぃらは全力で泣いた。

 時折鼻水を両方の鼻の穴から噴き出して。

 腕を広げたおれは卑怯にも、全力で朱い矮躯を抱きしめ返した。

 今日もちゅーはしなかった。

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