表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/401

第四章 BRBB 17 身軽な身重

 もし下にいる人が全員無事でも、この高さから落下した、生身の氷麻ひょうまは中でどうなる!? もしかすると何もせずに放置して、連れ込まれた先で女性だと判明するのを待つ道が、一番正しかったのではないか!?


 飛び込んだ花松はなまつ音那おとなの左手に、白球を追いかけるグローブのように、いつか見たあのステージが現れた。あの大きさだと確実に掴める! しかしそのあとは? 失敗して被害が拡大する未来しか見えない!


 かにんちゃんが追いついておれは見た。

 進化したIH調理器ウイングで、全てを支えるカルカロドント・オルルーザの勇姿を。


『ぬぅぅぅおおおりゃああああああああああああああっ!』


 そうだ頑張れ、その落下のエネルギー分だけ相殺すれば、あとは静かに置くだけだ!

 溢れた香りで鼻が麻痺する。

 ステージがOKサインをまるっと作って風が止む。


「うううううおっ、るああああああっ!」


 水と緑じゃない方が、倒れるのを待たずに、剣を構えて腹部へ突撃。バギンと錠か何かが壊れる。スクリーンが真ん中から割れ、埋火うずみびママが折り畳まれる。虹色に染まった氷麻ひょうまちゃんが、ふたりの伽羅魂人間に救出される。


 ずずーん。

 人口の過半数を占める、ノリのいい日和見主義者たちによる歓声が鳴り響く中、おれたちはかにんちゃんから飛び出した。小さくなって、ぽっこりらいあ。さあ急げ!


「ちょうどよかった! ここ、お風呂あるでしょ!? ああっ! お財布! 鞄の中だ!」


「落ち着け、全部持ってきた! でもどれだ!?」


「えーと、あーと、あったこれだ! けど触れない!」


「ああもう、私が出すから!」


 有限班の紅一点が懐に手を突っ込んだその刹那、聞き覚えのあるあの声が、俺たち全員の動きを止めた。

 今なんて言った、あいつ?

 諦めないとか、なんだとか。

 いや諦めてくれよ!


 へなへながくりと意識を失う。またみんなして抱きとめる。やはり、ここまで無理矢理に底力を引っ張り出しても、生身の本体に太刀打ちできるレベルには至らなかったか……!


 壊れた顔面が内側から蹴っ飛ばされる。

 やはりどう見ても二十代前半にしか見えない。


「さあ、勝負はこれからよ♪」


(やはり、この中に、入っていたのか……!)


 コツコツと足音を立てながら、身重のリュミナが迫り来る。

 言ってしまえば先程は、絶対に倒せるはずのない反則のアイドールだったからこそ、逆に安心して、半ば気持ちよく、全力をぶつけることができたのだ。

 しかしこの場合は?


 赤ちゃんを身籠った女性。

 全人類が紳士的に護るべき存在。

 そんな生き物が略奪をしかけてきた。

 さあどうする?


「ええっ、ちょ、有限ちゃん!?」


「ゆうげんっ!」


狼坂おいさか君!」


 驚く気持ちも解らないではないが、しかしこれこそジャンケンだったのだ。女性中毒のこのおれが、映像で我慢させられていた女性を生で見ることができて、『萎え』になるはずがなかった。ただ、そんなことさえも忘却するほどに、おれの記憶力が残念だっただけである。


「いっ……!? たぁ~い!」


『ええ~~~~~~~っ!?』


「ちょ……、はひぃ! やめ、あいたぁっ!? こっ……! はん♪」


「『ごめんなさい』は、絶対言うな」


「へぇ? は……? ええ? な……ッ! ……あら、もっとぶってもよかったのに?」


「うるさい。指図すんな」


 そう言って、おれは最後にもう一度、埋火うずみびリュミナの丸いお尻を地味につねった。ぎゅう。


「はぁん♪ もっとぉ♪ 奥♪」


 勝負はついた。これで終わりだ。さあ風呂だ。フィンランド式混浴サウナだ、ひゃっほう絶対に暗記するッ! おれは心のフィンランド国旗に向かって感謝の舞を千回踊った。


「同じような考えで集まった野郎共と、むさ苦しくすし詰め状態になることも知らずに……」


「何言ってんの、一旦家に帰るのよ」とてぃら美。


「んん!? じゃあ帰ったらサウナに行くか!? お前の恥部はおれが護るッ!」


「はいはい。勝った勝った。えらいえらい」


 これもまた、ジャンケンなのです……。

 群衆の存在を今になって思い出す。やべえめっちゃ写メられてた。格好良く決めたところまで時間を巻き戻して神さま! すごい気持ちいいですもっとぉ♪


『キャーッ!』


 シャッター音が大きくなってゆく。どうやら今頃になってやっと、音那おとなちゃんの存在に気付いたらしい。これはこれで面倒なことになりそうだ。

 ん?


 好乃いいのは先のシロップで、派手な虹色に染まっていて――?

 かき氷機のあった場所に、おれたちのマオにゃんが倒れていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ