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第四章 BRBB 07 饗礼


        7



「私たちは炭水化物系全般苦手だから」


「食事と言ったら基本的にはおかずだけ」


「私は腸内フローラが完璧だから。あとくどいけど体質ね。熱が逃げやすいみたい」


「あたしはこのお腹を大事に育ててるから。有ちゃんこの子、大好きだもんね?」


「おう。超好き。しかし下っ腹だけ太るって、お前はほんとに器用だなあ」


「くっ、くぅ……、そんな、みんな、なんで、ぐぬぬ……! どぉしよぉ~っ!」


 キャデザをする際には、クセとアクがガチで強くて全然、水に油なのに、それありきで定着した有名なキャラクターから剥ぎ取ると、個性をめちゃくちゃ薄れさせてしまうもの。

 オリキャラへ編み込むのは、なんとなく気が進まない上に難易度激高いのに、グッズ化されると、かぶりもしないのに、激烈に購買欲をかきたてられるもの。

 それが帽子だ。


 ぶち壊しの分析を、ここにもまたぶち込んでみると、帽子というものは、ド派手なキャラクターを、目立たない普通人の方向へ褪色させてしまうツールであり、同時に、とけ込めている優等生を、お手軽にお好みのファンタジーの方向へ昇華させられるアイテムでもあるからだ。

 というわけでこれから、本日の各自の帽子を描写する。


 まずは『埋火うずみびカルカの帽子』。

 綿と尻尾が線で繋がる、『こんなところにいやがった』。

 お昼のキメラバニーに使ったあまり。鮫のぬいぐるみの前半分から、下あごを引きちぎり、中身をえぐり出して無理矢理かぶってる。ヒレの部分がイヤーマフ。後頭部に背びれあり。

 自作した痕跡がありありと見てとられる雑な細部も評価へ入れると、アナーキーみが半端ないが、こういうデザインの鮫ちゃん帽子は、案外ありふれていたりする。


白亜木はくあきてぃらの帽子』。

 オレンジゴールドのニット帽。

 ツーサイドアップ用の穴は、上の方にふたつ開いているが、猫耳も耳当てもついていない。

 自前の“立ち耳”も自慢だからだ。


細流せせらきらいあの帽子』。

 そう、ここだ。

 流石にこの場面で、彼女だけフルネームで表記すると、彼女以外をないがしろにしてる感、彼女だけを贔屓してる感がリアルみを帯びるから、数行さかのぼって修正したんだ。

 それに、『てぃら美』はともかく、おれが視野狭窄で無知蒙昧で浅学菲才なだけで、『カルカ』っていう名前のヒロインは、絶対に既存だろうし。

埋火(うずみび)カルカ』はともかく。


(『カルカの帽子』って、言いたかったけど言っちゃうと、『カルカ』の三文字はおれが世界で最初に発見したんだぞ感を放出するのと同罪だったからやめた)


 ラベンダーピンクの、フェイクファーベレー帽。

 超触りたい。

 黒縁の眼鏡も似合ってる。


細流せせらき氷麻ひょうまの帽子』。

 黒光りするダークグレーのロシア帽。

 ファーがフェイクなのかどうかは謎。

 ところでおれも、綾波にも長門にも一度もときめいたことがない男だが、


(レムも浜風もショートだから……、ショートヘアは男子にしか見えない病気だからおれは)


(リーゼは一人称まで僕だったけれど、身長はお姉さん体型だったので、別カテゴリ)


 老若問わず、この世界線の男子に人気なのは、外見に限定すれば、氷麻ひょうまちゃんだろう?

 おれにはなんとなく、直感でわかってるんだ。


(まるっこいものが好きじゃなかったのか、この野郎)


 おれの推しメンは、ことごとく、ベタを回避できている――、妙に真新しい――、単に類を見ない――、ただそれだけなのであって、いつまでも永遠にマイノリティーなのだと。


(姉萌えが覇権を勝ち取る時代など、絶対に訪れないように)


(猫と比べると犬は間違いなく、仮想現実での需要が少ないように)


 現在きみが、この時点で、氷麻ひょうまちゃんが一番好き――ではなくても、


(それは満足に活躍させてもらえていないんだから当たり前だという話。だろ?)


 氷麻ひょうまちゃん回をもっと寄越せという声は、なんか今、ガンガン聞こえてる。

 はい。

 気を取り直して、


天真爛漫川てんしらまんかわ好乃いいの』の帽子。

『時はかみなり』感があるのは、さりげなくケバケバしい、ギラギラの腕時計です。

 えー。なんかのモンスターのキャラクター帽子ってあるじゃないか。ちよ父とか、さっきのカルカの鮫みたいに、顔面の下半分が、とにかくくりぬかれてるやつ。

 簡単に言えば、好乃いいのはまさかの好乃いいの本人の、着ぐるみキャップをかぶってる。


(自己主張、強いなあ……)


 お行儀がいいから脱ぐのはいいけど、盗まれないように、おれのところへポイポイ集まる。





 シチューのパイ包み焼き、ガルショーチクが三つ来た。

 氷麻ひょうま、カルカ、てぃらがそろってザク、ザク、ザクにやり。

 お前ら破壊が似合いすぎ。

 いや待て氷麻ひょうまちゃん、それはおれンだ。

 おれもザクりたかったのに!

 っていうか炭水化物めっちゃ入ってんぞ、それ。え? 食べさせてくれんの? ふぅふぅしてから? いやそんなえへ、ご迷惑をうひ、恥ずかし、あーん。


「ん~っ! うまいっ! 体の芯から温まるね!」


「おわぎゃぁ~~~っ!?」


 背が伸びにくい・骨盤が広がりにくい・胸が膨らみにくい・視力が落ちやすい・筋肉がつきやすい・全ての部位にまんべんなく脂肪がつきやすい――といった情報の集合から成る肉体を天から授かった好乃いいのが、頭をかかえて悶絶爛漫川。


「ちょっとくらい大丈夫だって。ラーメンよりは太んないって。『ダイエットは明日から♪』」


「それもそうね♪」


『切り替え早っ!』


 それはいいけどおれのを食うのか。

 笑顔が似合う世渡り上手には敵わねえな。

 双子に鉄板焼きステーキ。

 ライスがふたつおれに来た。

 ひゃっほう! ライスだ、ライス! 幻の絶品料理、白ご飯かけご飯だァーッ!

 …………。


(なんという生態系ピラミッド……)


 もすもす肉を食う双子を見て今更、ああ、氷麻ひょうまって豹とピューマか。らいあはライオンと、アムールトラ? 怖ぇーよ。なに混ぜてんだ。ストーキングの天才にもなるはずだ。

 熱烈に期待していたおこぼれ、皮のついたポテト6つが、手掴みならぬ指摘まみで柔らかい唇へ消える。


(怖ぇー。お前ら三人の組み合わせが、正直言って一番怖ぇー)


 らいあがカルカに肉を献上。てぃら氷麻ひょうまの肉を強奪。そして好乃いいのがおれからご飯を半分以上盗って食う。


 もうなんとでもしてくれ。

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