第四章 BRBB 04 久々の秘結活動
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幼児退行して先生にべたべた甘えまくろうと企みながら自室へ入ると、何故かこちらへ来ていた細流らいあの下腹部が、おれ好みにぽってり膨らんでいた。
『誰の子だーっ!?』
「かっ、カルカ、の……! うっ、くっ……! いえ、違うのよ、違いますわ、全然違う……」
偽身重の細流妹は、何かむにゅむにゅ呟きながら、大好きなヘヴンへ行くのを取りやめた。
『?』
右手でお腹を、左手で額をおさえながら首を振る。貧血でも起こしたようにふらふらと、長い脚で学習机を目指し、椅子に座って何やらノートに書き殴る。
(なんだなんだ、なんかの儀式か?)
(呪いの藁人形的な)
顔には生気がまるでないのに、高速で動く手の甲には血管が浮き出ている。怖い。
というかそこは今からおれが使うんだけど。
一方元兄貴、細流氷麻は、女子生徒用のブレザーを着て、広げられた古新聞の上に正座していた。
彼女に向き合う埋火カルカの手には剃刀。
恐ろしく似合うな、お前に刃物は。
じゃなくて剃るのか?
ついにあれを剃ってしまうのか!?
キスするほどに近付いて――
真剣な顔をふうっと崩す。
鋏に持ち替え再挑戦。
伸びてる眉毛がちょきんとパラパラ。
想いの力が強すぎて、王子様が多すぎた灰髪姫は、お人形遊びにも人一倍長けていた。
でもおれ、太眉女子、好きなんだけどな……。
「だからよ」
適当な鞄へ筆記用具、ノート、電子辞書、宿題のプリント、教科書等を詰め込みながら先生が言う。
「頭を丸める行為があざとく見えるようになったように、太眉を手入れしない行為も、あざとく見えるようになったの。『チョロいぜ坊主にするだけでチャラなんてw』って本音が聞こえるようになったように、『本気出したらあんたなんかより一万倍かわいい私を今は不細工になっててやるからいじめないでね♪』って阿りが聞こえるようになったのよ。どちらも人口に膾炙したから」
「ふーん」
もとより書斎でする予定だったらしい。あそこには怖ぁいボスがいるから、実に勉強が捗りそうだ。チッ。絶対に足の指で余計なことしよう。意趣返しじゃないけど。む。隣に座るのか? そしたら偶然肘で触ろう。普通に揉んでも怒らなさそうだから逆に。
「はやく、はやく。時間ないんだから」
もしかしたら合計で優に四キロを超えているのかもしれない。
次に紆余曲折を経てマイナーじゃなくなるのは短足女子か。
だってダックスもコーギーも短足かわいいもの。