第四章 BRBB 02 デジャヴ×キャンプ
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なんかデジャヴ……。
バイトから帰ってきたおれは、なんとなくまた、自分の家の表札を確認するのだった。
「おかえりなさ~いっ♪ ませ♪」
この冬はやりの、プラチナアッシュ×ふんわりウェーブ。
帰宅すると玄関に、髪の毛だけ鬼ギャルってる、ちびっこい女子が出て来た。
……誰?
「ただい……あっ、カグラザちゃんか」
「えっちがうよ? リザだよ?」
リザ……?
今日のというか今のかにんちゃんはガチカニンヘンじゃなくて、ガチカニンヘンダックス、つまり犬のフォルム(ミニ)で、駈け寄ってきたけどおれはちゃんとしっかり叱る。
「おすわり! おすわり!」
わかるか? この、めっちゃ笑顔で頑張って止まってる犬のかわゆさよ。
「よ~ししよしよし! がおがおがお~、あが~、あぁ~!?」
はあ、疲れた。義務終わり。
視界の端をふっさりのススキが泳いで、床で爪がカチャカチャ回る。
「で、リザは今日、なにしてんの?」
「ヒロシキャンプ! あっ今、おもち焼いたらあるからたべる!?」
「えっ、ちょっと待って、おれ、身体冷えたから先に風呂に――」
「あ、だめだめ! いま清掃中だからー!」
清掃中?
脱衣所から覗くと、細流姉妹が、マスクに手袋にエプロンに、頭巾まで装着して、風呂場周りをお掃除してくれていた。
適当に手を洗ってうがい。
ガン見してもお掃除が大好きなタイプの光る汗。
(まあ、だらだらゴロゴロしてる姿を、お母さんに見せたくはならないよな)
にへらっと見上げてくるリザの、おめめがめっちゃくりくりしてる。
「ほかのみんなは?」
おれン家だけど、手を引いて案内される。
キッチンにはオリザと、さっき見た細流ママと、もうひとり、眼鏡の似合う、更に小さい女の子がいて、一生懸命黙々と、ふたりのお手伝いをしていた。
(細流らいあの妹か?)
(実は後部座席で眠ってたとか……?)
あの子は誰と訊ねると、リザは逃げるように駆け出して、くつくつと笑いを噛み殺した。
「?」
ヒントは『ぐりとぐら』だったらしいのだが、『カグリザ』という偽名のフルネーム? も、たった今はじめて聞いたし、最初に『違うよ』って答えた時点で、嘘ついてたことになるからルール違反も甚だしいのだけれど、
後ろから頭を鷲掴みにしてみて、
「はへゃあは!? はへへ……!」
そういえば、とメガロサネキをデジャヴする。
客間ではうちの三幹部が、思い々々に雑魚寝していた。
埋火カルカはお下品に、下乳とパンツを丸出しにして。
好乃はちらみをめっちゃこう、後ろから抱き枕にしながら。
キープされるヘヴン状態と、眉間に皺が寄せたり引いたり。
授乳中に寝落ちした新妻か、お前ら。
散らばっているスマホだの、綿? だのを整頓して、下乳等に毛布をかける。
中央の丸型ストーブの上で、あと五分したらお餅が焼きあがります。
(微妙に長い……)
段ボールで作ったテント? へ、招待されて入って遊ぶ。案外広い。
カンカンカンと、足場を組むか外す音? ダカダカと鉄のクマゲラ。真下にもなんか存在感。おそらく万能杉のやつが、大浴場の実現に向けて、天然温泉の試掘か配管工事を行っているのだろう。




