第三章 鬼謀 B‐40 奇妙な座談会
それは奇妙な座談会だった。
始めから仕組まれていた――と表現すると、“選ばれし主人公”へ近づいてしまう気がして、微塵も目立ちたくない本心が露骨に渋面を作るけれど、全ては偶然が重なっただけに過ぎない。と話を投げやりに結ぶと、猜疑心からの“なぜ・なに・どうして?”が耳障り。
ここからは数行、努めて淡々と、出来事を前から順に、日記調で羅列する。
まず、当たり前のことだが、警備員がバタバタと、駆けつけるというよりは駆け込んできた。まあ一瞬は、人並みに立ち止まって混乱する。避難を促す大声は、半数以下の耳にしか届かず、負傷者の搬送も介抱も、続々となだれ込む野次馬によって、思うようにはかどらない。
最大多数の最大幸福……、出入口を封鎖するために応援を要請する。警察や消防へも改めて連絡している様子。外から聞こえるプロペラは、誰のヘリかドローンか……。
どうして気取っていたのか。
一番に思い浮かんだのは、張大哥の顔だった。
(2人……?)
イメージを裏切って正反対に、私服なので、至極現実的に、千切れそうになるから両腕で胸を押さえていて、男子が萌えないポイントに限ってメルヘンチックでガサツな、埋火カルカの普通の巨乳だけが、左右に揺れに揺れていた。
(ーター)
予想するまでもなく、バランスを失って蹴躓いたので仕方なく、
「ううわっ!?」
「危ねえから逃げろっつっただろぉぉ~~~、がっ!」
念願の肩車で更に空気を妙へ混ぜてはぐらかす。
「めっちゃ高っ!」
予想通りに、かいつまむことなく関西ガールが、1から10までを十倍速で。
小野イナフを思い出し笑い、めったに使わない表情筋を酷使する。
氷麻ちゃんと夢芽留んとロサ姉が、来られなかったというよりも、
「ああーっ! 居た! えっ、双子?」
「あァ?」
誰が?
「いやあでもしかし、本当に……!」
海の家に先立たれた、白の丸テーブルが、無闇に大きな音を立ててきちんと設置し直される。防寒着をたっぷり着込んだ没個性な謎の男は、動物が巣でも作るように、テーブルを2、3卓、無理矢理繋げておれを見た。
『?』
「七、八人いるとはねえ」
『……??』
怪訝そうな眉間から、わざとらしい閃きを盛大にはぐらかした、しかしどこにもけんのない作り笑いを経て、どうしてお前はアウターの前を全開にする?
「あ、アロハシャツ……」
「いやあれ、かりゆしウェアじゃない?」
どっちだっていいだろうと、せめて暖かい自宅の中でなら、思わなかったかもしれない。




