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第三章 鬼謀 B‐23 異世界の次のブーム

 トークテーマ:異世界。


「次のブームとか、来ると思うか?」


「いきなりそれかよ!」


 ぼんやりと予想していた順序とは、正反対の結果になった。

 おれとしては肉食獣女子らしく、ロサ姉にもその厳めしい戦闘機然としたシャークティースで、おれが自己投影した唐揚げを食みに食んでほしかったのだが。


(普通に考えたら、今の時代、懐に余裕のある順に、食欲がないものだったな)


 一応文字通りに何食わぬ顔を装ってみているらしいけれどバレバレ。つまり庶民を軽んずる流し目と、湯上りみたく幸せそうすぎているチークの組み合わせがギャップ萌え。普通は落ちる地点からむしろペースアップ。脂の唇。蛇の喉。

 千見錦ツァールピュイアの向こうに、ただでさえ顔がでかい又内岡またないおか熱造ねつぞうの生霊が見えた。

 まあ、イメージとか世間体とか恥とか外聞とか、女の子らしくしなきゃとかシュークリームの山じゃないんだからとか、言っていられないのさ。

 ガチで食料が不足してんだからな、うちの地球は。


 目が合っておれの中で細流せせらきらいあを追い抜いた。かわヨ。おれも食う。そしてまた、味噌顔みそかおティシューペが不可解にお上品。あん? いいだろ別に手で食ったって。洗わなきゃいけなくなるお箸を汚す方が、大切な水資源を無駄にするMottainaiになるんだぜ?


「オイもうマジか最悪ッ!? どこで拭いてんだよ、マジやめろよぁあ……! もぁああ」


 お前は今宵社交界へデビューする箱入りの侯爵令嬢16歳か。


「功夫! 痛風! ボク馬耳東風!」


 ジュラフキンさんが改めて、キャベツの山に涙する。


「ヒュウ~、唐突にこれ全部頭にかぶって、血祭りにあげてやりたくなった衝動を、どうにかおさえたぜぇ~……っ! フュージョン失敗前からピザデブ! ども、ハクァキンですっ!」


 そんなん予想できるか。

 ジュラフキンの方がいいだろ。

 でもちょっと面白かった。

 完全にパクリだけど。


「まあでも『なろう』という『異世界』の中では永久に来ないよ。次のブームなんて。もう『異世界』という単語が、暗黙のレーベルカラーになってっかんね。友情、努力、勝利みたいなもんさ。妹、妹、妹だ! じゃなくて、異世界チーレムモノダラケ、異世界チーレムモノダラケ、異世界チーレムモノダラケ! だ! みたいな――壮大なボケというか」


 いや現実世界で……なんかないのか。作家って大体、自称想像力神なんだろ? なんか未来のブームがよめたら大儲けできそうじゃん。教えろや。


「んっふっふ~♪ 俺はちょっと知ってるけどね? 俺だけは」


「え、なに?」


「いや俺友達に未来人がいてさあ~。フゴッ」


 ああそう。

『どらのたま』でもらったらしい未開封のアニメポスターで、千見錦せんみにしきをつついて遊ぶ。

 いや、四文字の動物なんて無限に居んだろ。

 なんのヒントにもならんよ。


「もう行き着いちまったんさ。要するに全ての物語は『異世界』という大きな定義に含まれるんだよ。『どんなノンフィクションでも嘘だからな』ってアレ。うまく言えないけどニャ。如何様な物語も、現実と引き比べると、異世界のお話ってことになるんだ。昔は義理と人情と、常識と遠慮と謙遜と礼儀と、作家への道を断念した程度で食っていけなくなりはしない好景気(おんしつ)があった。しかしどんどんヒット作が出てくる。そうすると必然的に、『前代未聞のお話』も少なくなってゆく。こうなると自然、『想像力』の需要もなくなってくるわけだ。何も参考にしなかったところで、『実はもう誰かが昔ひねり出してた』にばかり辿り着くんだからな。そうして、『盗作NGの規制を緩和する風潮』が台頭する運びとなった。『記憶力主体の勢力』と『盗作NGの規制を緩和する風潮』のシナジーが、猛威を振るうこととなったんだ。ニャ?」


 両想いになりたい気持ちが微塵もないのなら、存分にオギャりたがっても構わないわけだ。

 真面目に働く細流せせらきらいあのお尻をまじまじ盗み見る。好きだ。


「今大人気なお料理漫画が連載終了してからでなければ、自分の担当する新人にお料理漫画は薦めない。心臓マッサージで蘇生するネタは、オレの漫画ではもう少し後で使おう。錬金術で『更に価値のある物』のために生贄にされた貧民街の、たったひとりの生き残りが復讐を企てるプロットも、時間を置いて引用しているだけなんだから、オレも時間を空けてから堂々と、七つの大罪を軸にした話を世間へ送ろうっと♪ 異世界モノがヒットしてる最中に、異世界モノでヒットを狙っても、お互い責め合いっこなしにしようぜっ♪ なっ♪ なっ♪ オレのをパクっていいから、オレのをパクリ呼ばわりするのもよしてくれよな約束だぜっ♪」


 しかしそこはエロ遺伝なのか、メガロサ様も露出はもう、ほんとにもうアレだった。

 お尻周辺の素肌もこう、無防備に晒してしまうブームが到来すればいいのに。


「何もかもを『疑似体験するための装置』という視点から見てみよう。VRゲームでは誰でも、体感するリアリティに圧倒されてしまって、その満足感に不満が包まれて、『主人公だけが幸運にも異世界転生しちゃった』というありきたりな世界観設定を叩く気力が殺がれてしまう。プレイヤー全員が、『幸運にも異世界転生しちゃった主人公』と全く同じ体験をできるわけだから、不公平だと不平を述べようもないしな。当たり前だけど。しかしながら全く同じ物語であるその『原作小説』! こいつで『体感』するとなると、やはりどうしても、誰であっても、得られる臨場感が少なくなる。いろんなとらえ方ができるという『自由』が広がった反面、『プレイヤー全員が幸運にも異世界転生しちゃった主人公と全く同じ体験ができる装置』――という『束縛』力を失って、苦情を叩き込める素肌をこう、無防備に晒してしまうわけだ」


 完全に手下になった、氷麻ひょうまちゃんの困り顔が聞こえる。

 流石に攻めすぎて気がつくと没収されてた。


「友達に『ジノグラヴュア』という小説をってる奴がいてな? 彼奴(きゃつ)はもうぜんぜん、小説という媒体を、『幸運にも異世界転生しちゃった主人公と全く同じ体験ができる装置』だなどとは微塵も考えちゃおらんのだ。まあ作家というものは大体、自称想像力神なんだから、目を瞑る必要すらなく、どんな異世界へだって好きな時に好きなだけ飛べるものであるから? 純粋な読書好きと全く同じ温度で『小説』を認識できようもないんだがな。だからこそ送り手になったのであるし――」


 字のグラビア。

 文字ひとつひとつが個性的な萌えキャラに見えるため、内容なぞまったく頭に入ってこない変態、時鳥ときどりアーティス先生の話を聞く。

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