第三章 鬼謀 B‐22 6種類の人間
トークテーマ:美女。
「この世には6種類の人間が居る!」
『6種類ぃ?』
おれは線を引いて6つに区切ったメモ用紙を横にした。
「いや話はむっちゃ飛ぶんだけど、要するにおれは、顔面は実質二軍なのに攻略難度は何故かトップクラスな、自己肯定力が無闇に高い“負けず嫌い”の、いかにももっともらしい“確かに美女”ごときに対して憤る、自称フツメンが赦せないんだよ」
「なんか妙に饒舌ね」と細流。
おう、美に関する話題はまかしとけ。
「“確かに美女”ごときに対して憤る、自称フツメン……? ってそれ、俺じゃ~ん!」とジュラ樹。
身長16×cm? 四捨五入したら0cmだね♪
長所――優しい!?!? www 一生深夜アニメ観とけよ、童貞www
男は顔。筋肉。コミュ力。面白い人がいい。悪そうな人が好き。御曹司だったらね?
メークに三時間もかけただけの元ヤンに、こんな風に貶されただけで。客観的に見て間違いなく80点台な彼女に、自分よりもガタイのいい彼氏を作られた程度で。どうして彼らは無駄にクソ真面目に打ちひしがれてしまうのか。
それでいてどうして、その日を境に、99点以下はブスだなどと、ことあるごとにこきおろす方向へ暴走してしまうのか。
いつだって60点以上は追試なしだが、80点周辺は天地が逆さになっても1位じゃない。
どうしてこんなにもシンプルな真理を、男の癖に感情なんぞを優先して拒絶し続けるのか。
男は馬鹿だと自虐するから留飲を下げろとは、ちょっと横暴すぎないか?
「縦の列は客観的に分類した外見のランクだ。左から下、中、上。で、更にこいつらがそれぞれ、『A:自分は美顔だとしか思えないタイプ』と、『B:自分は醜面だとしか思えないタイプ』のふたつに分けられるわけだ。思い切って大別するとな」
まあ、これを見せたかっただけで、特にオチとかはないんだけど……。
「なんというのかなあ。惚れられるよりは惚れたい男子が、二軍ちゃんに玉砕するのは構わないんだけれど、その結果、全ての美女を叩くようになるというのはどうもね。ブサメンである方が好みであったりする『上のB』的な変わり者も、この世には一定数居るんだからさ」
あるいは、『オレにとっては彼女が一軍』だったのか。
自分がかまってちゃんだから、周りがどれだけ一番だと騒ごうとも、オレにとっては二軍なかまってちゃんとはお付き合いしたくならないのか。
外見は少々妥協してでも、気の強い元気な女の子に、ぐいぐい引っ張ってもらいたいのか。
「よ、要はそういうことだよね? オギャりたい。今の男子はオギャりたい……。与謝蕪村!」
「それじゃまったく、両想いになられる道がねえなあ……」
おれならせめて、筋トレは開始するがなあ。
(いや、あの娘じゃなきゃやだっ――だから、フラれてから始めても意味ないのか)
全ての責任を背負ってくれる姉御肌でありながら、尻で敷いてくることはなく、負けじ魂が激烈なバリバリの体育会系でありながら、ATM扱いされずに済むには……。
死んで息子に転生するしかガチでない。