第三章 鬼謀 B‐21 Kiss
「まさか! うちの女優はみんな、男子だけどれっきとした女子なのよ!?」
それから白亜木てぃら美は、数字の取れる記号が大体組み込まれてるのに、超絶モブゴリメンに人気の面で競り負ける、ほらあのなんて言ったっけな、あの深夜アニメの――、フルネームが永遠に出てこない超絶非喪女ちゃんのように、夾雑物味のない腕組みを偉そうにして、
「キスシーンなんだから、上半身だけ裸でも、全裸に見えるじゃないの!」
そういやキスがどうとか言ってたな。
「しかも片方だけがまるで全裸とか、意味がわかんない。そんな『シュールスベリ』映像、脳が『とりあえず下品』って識別するでしょう。それじゃ駄目なのよ」
言ってることは完璧に理解できたけど、結論を魂が受け入れられない。
逆転……。
ママあれなあに? を連呼するのは、非合理的だから卒業しよう。
器用なカルカは両刀だが、本質は受け。誘い上手な誘い受け。不器用なてぃら美は誰がどう見ても総受け。従ってカル×てぃらは実現したところで、想像していたほどは気持ちが昂りそうにないというか。やっぱりこいつらは横に並んでる方が様になる。
男子が一番見たいのは、らいあ×てぃらだろう。ふた回りぐらい上のおじさんは、らいあ×氷麻もしくは、カルカ×メガロサ的なカプに目がなさそうですね?
らいあ×ツァール。
らいあ×モモぺ。
らいあ×メガロサ。
らいあ×カルカ。
カル×ピュイア、てぃら×ピュイアでは、心底適当に遊び感覚なカルてぃらと、真剣に思い悩んで心拍数が百面相するツァールピュイアとの人生経験差が、最大の萌えポイントだ。
五砂とてぃら美の関係は、攻めも受けもない感じ。その日の気分でだらだら交代。
氷麻×てぃら美……は、おれ好みではないかなあ……。無駄に暗いだけというかね。
まあこの『デス♀バード』以上に無駄に暗いだけな話も、そうそう無いんだけれども。
カルカ×氷麻は味しない。
「それでは狼坂有限ちゃんと、Kissする男子を発表します!」
「まっ、ま、待ってくれ! 口は閉じてていいよな!? アフターケアは万全だよなっ!?」
「なによアフターケアって。お口直しがしたかったら、帰宅してから同棲してるカルちゃんと好きなだけ、べろべろちゅーちゅーしたらいいんじゃないですかあ??」
ううん……。それもそうだなと思えないのは、あいつの首から上がほぼほぼ、ちょっと髪を伸ばしただけの、超絶非百合豚だからだろうな。
例のごとく、おい狼坂ぁと因縁をつけられる。
人が嫌がることをするのが大好きな、キモメン☆ラブ美による、ドラムロールを聞きながら。
杣山まで完全に諦めたおれは、せめて串真美子であってくれと、瞼の裏でくり返していた。