第三章 鬼謀 B‐19 竹林X
何なみ母さんがここ、白亜木ジュラ樹の自室を出て行ったあと。おれたち男子5名を集めて、揚げたてのフライドポテトをお箸で頬張りながら、白亜木てぃら美様が言った。
「脱ぎなさい」
ううむ実に癪だ。
味噌顔ティシューペだけに激しく共鳴している自分が。
「ジェンダーレスよ、ジェンダーレス! 今の男子高校生はねぇ、普通に男子同士でキスして遊んだりするんだから、女の半裸ばっかり映したって、視聴率はとれないの!」
今の女子高生なお前よりは、今の男子高校生をわかっているつもりだったんだが。
「それに私たちはこないだ脱いだじゃん。一応。ワンパターンはだめよ? 飽きられるから」
「なんだそれオレ行ってねぇーぞ!?」
「そうだこないだは全部脱いだんだから今日は絶対脱がないぞぉ! ぜったいにぃ!」
「全部ってなに!? おい狼坂ぁ!」
全部ってなんだっけ?
ああ、風呂場で、か。
「埋火の毛は何色だあぁぁ~~~……っ!?」
「は? 毛ぇ?」
はっ、
ここだ……ごくり。
この次の瞬間こそが、例のあの単語を、最も輝かせられる究極のチャンス!
「しゃ、シャシャ、シャークグ、」
「いや生えてないから!」
「ぶペェペ!? ぶペェペェ~~~ッ!?」
味噌顔ティシューぺが白亜木てぃら美に殴り飛ばされたのだということは後からわかった。
両目が追ってしまったことすら感覚的には二日前。
ジュラ樹×ティシューペが正しくないのならば、ティシューペ×ジュラ樹と言い直そう。
(おれも別に遠慮なくぶん殴ってくれてよかったのに……)
ぴょんぴょんする美の向こうに見えてしまった、杣山テテロティケ露剣郎の乳房には?
「すべてのエロ同人作家に告ぐ! あたしのⅩ染色体は、文字通りXingu tribes! もし1本でも描きやがったら秒で殴り込みに――って、ええぇぇええっ!? 杣山ててろテキ露天郎っ、……て、いたぁ~い。また舌噛んら……。血ぃれてない?」
「ちょっと出てるかも!? でも大丈夫よ!? 唾液をつけておけば。よければ私の――?」
反対に男子なのに女性用のスポブラを着用していた串真美子夢芽留はそれこそ秒で、
「わかったわ! チクニーのしすぎで乳輪デカくなってるから恥ずかしいんでしょ、うふっw」
と、白亜木妹に真正面から茶化されて真っ赤になって、しどろもどろたどたどしく上ずった抑揚で反論を試みて、しかしながら当然油を注ぐ結果にしかならず、全力で哄笑されてしまい、
いや、チクニーとかマジで言うなよ。
乳輪という単語がまだ上品に聞こえるよ。
というかそれ、半分以上墓穴掘ってないか?
いや、股間探偵とかもう、黒歴史だからガチで!
そして。
遅きに失して打つ手がなくなった、残念なてぃら美ブラ樹の眼鏡が、独り寂しく真っ白に、自分の部屋なのに隅っこで、膝を抱えて虚しく凍えた。