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第三章 鬼謀 B‐15 悲喜籠々

 ここか。

 白亜木はくあきてぃらよ、お前はここに住んでいたのか。

 しかも更にその場所に!


「おれ、すっげえ入ってみたかったんだよなあ、ここ」


「あ? なんで?」


 なんかひみつきちみあるから。


 トラクターのシートには微かに埃が積もっていた。“あれ”以来、使われていないようだ。ふと疑問が頭をもたげる。まあ、うちの収入源だって、おれにも不明瞭なのだけれど。子狐こぎつね糸目スマイルが怪しみを倍加させる、いやに明るいツアーガイドのセリフに導かれるまま、ぞろぞろと十人もの大人数で二階部分へ上がって――鉄筋だから大丈夫なのか?


 部屋というか壁を、隙間なく埋め尽くしていたのは――、アニメとアイドルのポスターと、フィギュアとプラモと漫画とゲームハードとPC……。

 なんだろう、南国なる世界観の中であったなら、洗濯した運動靴の一足でも、乾かしてあったのかもしれないが……、


「いや、あんたが驚くのはおかしいでしょ」


「え」


 ということはつまり、この部屋は……!


「おーい、ズラズー!」


「はわっ! えっ!? んなんだ、ちらみか……」


 炬燵の向こうから、くぐもった甲高い声だけが跳ね起きた。

 億劫そうに生えてきて俊敏に、机上の眼鏡を手探り当てる。

 しかし、あだ名としてのちらみ……さいかわかもしれない。


「いや、ズラズて!」


 鬼カワなゴマフビロードウミウシの“ダメ着”からのぞくのは、人好きのする、トゲのない目鼻立ち。

 男にBuxom体質が発現したら、どの様に仕上がるかは自明だろう。


「ズラみたいじゃんか! 俺は1本もハゲていないぜ!?」


 しかし内側へ渦を巻く天然パーマは――必然的に地肌が黒光りしていないためだろうか――、不潔に見えなくもないが、どうしてか癖になるお笑い芸人のように、不快とは真逆のアンダードッグみに溢れていた。


「ズラズじゃねえ、俺はジュラジュだ! 俺の名前は白亜木はくあきジュラジュだ!」


「あぁら、ごめんあそばせ、ジュラお兄様? いぃえ、《悲喜籠々ジキルハイドラ》先生?」


「うむっ!? わかればよいのだ。血を分けし我が阿妹あまい、《閃紅竜帝エリュトゥレックス》よ!」


「いやぁん♪ 《緋暴竜傷スカーレックス》じゃないところがハイセンスだわ、死海が航海で塩湖だわ♪」


「天空の鏡、ウユニ塩湖!」


「石化魔法だナトロン湖!」


 おれは魂を分かち合いし一応男子連中に、おれの瞳というカメラを向けた。

 杣山そまやま夢芽留むめるん、氷麻ひょうまちゃん――、


 いや、白亜木はくあきジュラって。

 本名めっちゃかっこいいな。


「何がはじまるのかはわからんけど、」


「あんたのお友だちを連れてきてあげたのよ」


「そいつはThanks a lot☆ ――この中ではお前が一番キャラ立ってんな? 敢えて燃え」


「えっ、そうでしょ!? ♪♪♪」


「特にそのギザギザばさみ、リボンヘアゴムの代わりにするの、激☆大変だったんじゃね?」


「う~ん、そのまま装着したら刃先がこう、頭の上で向かい合ったまま固定されちゃうから? 支点を傷つけないように外側へ向けてぐいんて曲げるのがむずかった。んふ♪」


「ふ~ん。って、それやったの俺ぇ!」


 唐突に立ち上がって真剣な顔になった白亜木はくあきジュラによる、情熱のデブあるあるソングに、その妹、白亜木はくあきてぃらが、まさかのテトロドトキシン持ちなアカハライモリのお腹みたいな、まさかの夜光オレンジをベースとしたショーツを丸出しにして笑い転げる。


 自分で来たいって言ったくせして、初めての他人の家にキョトキョトと目を泳がせる味噌顔みそかおティシューペ以上に鼻につく、借りてきた猫は居なかった。


「痩せる夢見て詰め込んだお野菜でお通じよくなってまた激☆腹減るゥ~♪」


「www」

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