第三章 鬼謀 B‐10 味噌顔ティシューペ
弱ったなあ、これは非常に困った。
「ヰィ~~~リリリ……??」
ありのままをリアリティたっぷりに語れば必ず、『せっかくの夢見心地が台無し』『からかいの種にされるのは現実だけで沢山だ』『こんなネットの端の端でも、味噌顔ティシューペの、笑ってあげなきゃいけない下ネタを聞かされなきゃならないのかよ!?』。
かといってオールカットしたり、自称ではない本物の陽キャとして描いてみようものなら、『味噌顔ティシューペがいない世界で、色とりどりの美少女にかこまれて楽しく暮らすお前が気に入らない』。『俺たちは現実世界で毎日々々味噌顔ティシューペに茶化されて、こんなにも苦しい思いをしているというのに!』。
まあ……、今回のメタトークは、このくらいにしておいて。
実際みんな、普段の味噌顔ティシューペ対策、どうしてる?
登壇させられた途端、赤面して小声になるのに陽キャとか、なんか片腹痛くない?
あとから入ってきた癖に、気遣いも遠慮もなくリーダー気取りで仕切りはじめ、あれこれ指図して注文をつけて、女の子を舐めまわすように盗み見るだけでなく、下品な単語をふりかけては、反応を愉しみながら、もっとよこせとふんぞり返るヰェイ系……。
我が物顔でひっかきまわされたら、たまったものじゃない。ということで、真正面から、『ウザみが邪魔み』と言い放ってみたとする。するとすかさず良心及び正義のヒーローから、『あれれ~? こいつ結局排他主義者じゃね?』『はい嘘吐き~w』『この、悪人がっ!』。
(どう見ても優れた男ではないだろうがと、強引に我を通すべき局面なのだろうが……)
負い目を感じないってところが最大の難関だ。攻略のし様がない。最早致命的なバグである。文語的適当に躾けられていれば、優しくされればされるほど、つけあがっていったりはしない。ありのままのオレに魅力があったからオレが人気者になったんだ――とは、死ぬほどかわいいにゃんこ様しか、絶対に思ってはならないからだ。
それじゃあなにか? お前はお返しを強要させるために、うまい飯を食わせてくれやがったってわけか? そういうのはな、『詐欺』って言うんだぜ? ん? 正直を信条として生きるオレは、損得勘定で人と付き合うゴマスリ野郎が大嫌いなんだよね? はぁ~あ、お前クズ。
――こういう顔を寄越されるわけだ。
関わり合って最初に奉仕した側が勝者という、処世バトルゲームのルールに疎いから。
集まる場所や日時を偽ったら?
竹を割ったような性格とは正反対に、ヌタウナギを手掴みしたような性格の、味噌顔ティシューペのことである。どうにかこうにか情報を集めて、証拠を入手し、『ほらな、オレだけ撥無だよ』と、永遠に告げ口してまわらないわけがない。
「コッペ~パン~♪ コッペッパッン~♪ コッペ~パン~♪ コッペッパッンンーッ!?」
……ガチでどう切り抜ける?