第三章 鬼謀 A‐06 相性表
「じゃあ……オリザ姉に一番効果が少ない技は、何目の技?」
「ごはん・メカってつまり、パー・グーってことだろ? そんなジャンケンはねえよ! 反則だ! 反則! 反則負け!」
「単メカ目の技?」
「正解」
『!?』
「ちなみに何倍?」
「二分の一倍」
「正解よ」
『!? !?』
「今ので解ったと思うけど、『ごはん・メカ』ってのは、ごはんとメカの混合液みたいなものだから、いくら『単ごはん』に『単メカ』が無効でも関係ないわけよ。『ごはん・メカ』に『メカ』は、威力が半減するけど刺さるの。あとはもう全部解るわよね?」
『お……、おう!』
「好乃、交代」
「はいはーい♪」
数学寄りのお勉強となると、好乃先生の方がホッとする。自分の苦手な教科を教えるべきだ、何故ならできない子の気持ちが解るから――と先輩に言われて体育教師になった先生の話は、一体どこで聴いたんだっけ?
「これを見れば一発よ♪」
『すごく解り易い!』
横の欄が『各技』。縦の欄が『各目/技』となっている。
どうやらアイドールバトルでは、人が繰り出したアイドールが、更に繰り出した『技』と『技』同士の戦いもあるらしい。技に技をぶつける、技を技で受ける。言われてみれば当たり前――そういや今朝普通にやってたな。
全てを描写するのもくどいので、かにんちゃんとオリザ姉の技だけ。残りは白亜木先生じゃないけれど、宿題です。
猫目の技は『ごはん』に『×2』。『猫』に『×1』。『メカ』に『×0』。『ごはん・猫』に『×1・5』。『猫・メカ』に『×0・5』。『メカ・ごはん』に『×1』。『ごはん・猫・メカ』に『×1・5』。
メカ・ごはん目複合技は、『ごはん』に『×0・5』。『猫』に『×1』。『メカ』に『×1・5』。『ごはん・猫』に『×0・75』。『猫・メカ』に『×1・25』。『メカ・ごはん』に『×1』。『ごはん・猫・メカ』に『×1・5』。
流石にシェヴァルジノ堡塁。なんだよ特にごはんって。でも表で見ると簡潔で綺麗だから。時刻表萌え持ちの人とかは絶対、プチ・歓喜できると思う。ううむ、一概に複合型が強いとは言い切られない絶妙なバランス。
いや、ごはんって!
(救いようのない悪人に対する怒りで覚醒する目とかじゃないだろうな……?)
いや、目って!
アイドールという単語には、もう慣れてしまったおれだった。
「でもさー、これ見るとやっぱり、あいつも『メカ・ごはん』で合ってるっぽくない?」
「んー、ほんとにそうかもね」
「細流さんはどう思う?」
妹にも水を向けてみた。もっと乗ってきてもいいのにと思ったからだ。そう。どう考えてもこの沈黙は不自然だ。どうしてこいつは今、こんなにも静かなんだ? あいつへの想いが冷めたのか? それとも何か素晴らしい秘策をもう既に閃いたのか。
果たして細流らいあは、燃えるような眼差しを寄越すなり、
「ごはんだろうがパンだろうが、私はお供をあてになんてしないわ。複雑に考えすぎなのよ。自分で棍棒を握りしめて、殴り込めばいいじゃない? 全部ぶっ壊してやる……!」
「鬼か!」
「まあ、そういう発想も必要よね?」
「うーん、そうだな?」
「電線と水道管を断ち切れば」
「おれたちが逮捕されてお終いだ」