第二章 USBジャントー 02 犬オチ
「うわ! なにこのエロ個室! 魔が差しても連れ込まないでよね~?」
「だ、だ、誰が。おほん、お、お前こそひとりで行けないとか言うなよ、お子ちゃま」
「よりにもよって、どうしてこれを復元したのよ! 恥ずかしいじゃない、もぉ~……っ!」
「そ、そう言われましても、この人数ですから、万一のことがあってはいけないと思いまして……!」
「私はいいと思うけど」細流が眼鏡に手を添える。「でもちょっと家から遠くない?」
「心配要りません。これは男性専用です!」
『はぁ!?』
「絶対だめぇ~っ!」
「まあまあ、今日のところは一旦保留ということで」オリザ姉が仲裁に入る。「それに、自宅なんですから、そこまで気にしなくても、」
「いいえ! お手洗いはたとえ自宅でも、男女別々にしなければなりません!」
「あらぁ、そうですかぁ?」
水道代はどうするのと考えているのか。見られても平気だと考えているのか。両方か。鍵をかければたとえ全裸で入っても問題ないし。こいつがカメラを仕込んでなければ。
「本来なら今日中に浴室まで完成させるつもりだったのですが……」
「まあ、浴室♪ 大浴場とか、いいですねえ~♪」
「お……、お任せください! とびきりの大浴場を――いえ、それはそうとして、ですから」
「両方女子トイレってことでいいじゃん」
そう言ったのは白亜木だった。
「多数決で男子の負け。男はどっかその辺でする。はい、解決」
「わ……わかりました!」
小だけな。
「それでは何も解決しとらんぞ、貴様!」
貴様て。
超近いし。
うう、マジで無理。この髭感。
と、目の前の万能杉が、いきなり顔から雪の中へぶっ倒れた。
「きゃ~っ! ですからあれほど寝て下さいって言ったのにぃ~っ!」
寝てないのか。アホだろお前。ナスDでもない癖に。最悪このまま死んじゃうぞ。あと『目病み女に風邪引き男』。熱が出たときに看病してもらう方が、寂しいときに添い寝してもらうより断然エロスだからな。
「親父とおふくろってこんな感じ?」
『全然違う!』
「すぐに戻って参りますから~っ!」
「いや、死んだら後味悪いから、つきっきりで看病してて~っ!」
さて。
雪を踏みしめ、もう一度屋根へ上る。まったく、なんなんだこれは。わけわからんにもほどがある。神ってそんなに暇なのか。雪下ろしの作業の前にちょっとだけ、光るかにんちゃんをハグしてちゅー。うひひ、超気持ちいい。
「やっぱりあたしも手伝、ぅおうっ!?」
「?」
「……お、お姉さんもいないことだし。ひとりで作業してたら危ないでしょ?」
「ああ、うん。じゃあよろしく。がおーっ! ふがふが。んふふ……♪」
「ちょ、遊んでないで! さっさと終わらせよう?」
「うん……。んー、ちゅちゅちゅ♪ 超可愛いよ、大好き、愛してる、はぁ、はぁ!」
「こぉらぁっ!」
「ほら! あいつは男で狼なんだか……! あ」
「見なさい。言った通りでしょ。それでもベタに犬オチだって」
「お前ら……。休んでていいのに?」
『だってこいつとふたりっきりとか!』
『いや、屋根が抜けるから』




