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二人の勇者のお話

シリアスはいりまーす。

 魔王城から帰還してから無事1週間がたった。そろそろこの世界に来てから一ヶ月がたとうとしている。

 そんな俺は今、でっかい蛇と戦っている。


_______________________

 バジリスク

 巨大な体を持つ蛇型の獣。目を合わせると相手を石化させる魔眼を持っており、牙には猛毒を持つ。

_______________________

 

「キシャァァ!」


「うおっと!危ねぇ。」


 いきなり牙をむき出しにして飛びかかってきたのでとっさに上に飛んで避ける。

 すると、蛇がこちらに向かって尻尾を使い跳躍してきた。


「それは反則だろ!」


 勇者の剣を二本抜き、十字に重ね敵の突進を受ける。


 ガァンッという音を立てながらバジリスクの牙を弾くと、今度は蛇が魔眼を使ってきた。目を合わせないために目を閉じる。


 しかし、見えている。[空間把握]は目を閉じていても使える。そのため敵の位置も姿も丸わかりだ。魔眼を使い硬直しているので、今のうちに拘束する。


[拷問者(トーチャー)]![罪の鎖]!」


と言いながら[紫色(バイオレット)拷問者(トーチャー)]を地面に突き刺す。

 すると、刺した場所から紫色の鎖が何本も飛び出してきた。鎖はそのまま蛇の体に巻き付き地面に固定してしまう。動けなくなったバジリスクはジタバタとしているが、ここまで来てしまえばどうしようも無い。

 やがて諦めたらしく大人しくなった。


「ふうっ、今日の仕事おーわりっと。」

 俺は現在ツクヨミやフェンリルから依頼を受ける形で仕事をしている。主に来るのは[夜の加護]を持っており知能が高い獣の中で、殺しに快楽を覚えたことにより[夜の加護]を失ったものを倒すという仕事だ。仕事的には[森の守護者]と一緒。

 給料は衣食住の提供。まあ妥当なところだろう。

 この仕事をする理由は二つ。

 住む場所を提供してくれている女神様への感謝、これが一つ目。

そしてもう一つは今から行うことだ。


「バジリスク、死ぬか、俺の配下につくかどちらがいい。」


「キシャア。」

と言いながら尻尾を俺の手に当てる。配下がいいのかな。


「[暗黒の勇者]が命じる、バジリスクを配下に。」


 バジリスクが黒色の瘴気に覆われ出てきたときには、漆黒の鱗を持った蛇になっていた。

 これが俺のもう一つの理由。「配下を増やすこと」だ。既にゴブリンやボアなどの配下がいる。この「配下」システムだが、一度配下になってしまえば絶対服従になる、そして魔王の眷属と同じように俺の強さ分だけ能力が底上げされるという効果がある。

 条件として、配下にできるのは[神の加護]を持たないもののみというものがあるので、この仕事はうってつけというわけだ。

 バジリスクを解放すると、闇の中に紛れて消えていった。隠密を使えるようになってるようだ。


「帰るか、[夜空の帳]。」

 自分を黒色の球が覆い、消えたときには神殿の目の前にいた。

 

 [夜空の帳]は[黒の帳]の上位互換で、黒の帳の発動条件を全て取っ払ったものだ。まさにテレポートである。もちろんそれ相応の体力は使うので流石に連続使用はできないし、戦闘中には使えない。ある意味それが条件かな。


「ただいまー、」


「おかえりなさーい」と返してくるのはツクヨミである。


「フェンリルとルミナスは?」


「まだ仕事中みたいです。」


まあ、基本的に俺より仕事多いからな、あいつら。


「ルミナスはなんの仕事なの?」


「人間の国の偵察です。」


「偵察か。なるほどね・・・」


懐かしいなぁ、一番最初は国を探してんだっけ、結局見つからなくてフェンリルに・・・あれ?


「女神様?今人間の国って言った?」


「言いましたが?」


「どこにあるんですか?」


「魔王城とは反対側に森を抜けるとありますよ?」


近くにあったのかよぉぉぉぉぉぉ!?


俺の・・・俺の最初の努力は・・・なんだったんだ・・・。


あ、だから[諦めの悪さ]なんていらない技巧が出てきたのか。反対側にずっと歩いてたんだね。はぁ。とことん理不尽だなぁ。この世界。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


「随分深いため息ですね。」


「昔の俺を嘆いてたんだよ・・・。」


するとフェンリルが帰ってきた。


「ただいま帰りました。我が神」

「おい、牙から血が滴ってるぞ。」


「お疲れ様です。」

「ノーコメントなの?神様。」


どうやらこれがデフォルトらしい

すると巨大な羽ばたきの音が、ルミナスも帰ってきたみたいだ。


「帰ってきたわよー!」

「おい、お前も牙から血が滴ってる・・・え!?お前偵察だったんじゃないの!?」


「おかえり、ルミナス。」

「いや!こっちはスルーしちゃだめだよ、神様!?」



どうやら帰りに一匹獣を狩ってきたらしい。怖すぎる。




_______________________



「ルミナス、どうでしたか?人間の国は。」


「かなり危ない状況みたいなのよ。」


え、それだけで皆なんか察してるんだが。俺わかんないよ?


「危ないって?」


「戦争が起きそうってことよ。カズトちゃん。」


竜の顔でちゃん付けやめろ。美女状態ならゆるす。


「戦争ね、この魔王がいる状況で何を考えているのかしら・・・。」

と、ツクヨミがつぶやく。確かにその通りだな。


「ルミナス、どことどこの国が戦争するの?」


「クロームウェル王国と神聖教正教国みたいよ?」


どこそれ?なにそれ?


するとフェンリルが驚いた顔で


「王国と正教国だと!?」 


といった。何が問題なんだろう?戦争なんだからどこの国でも大差な・・・


「どちらも勇者がいる国じゃないか!!」


問題大ありだった。


「ええ、王国には[白銀の勇者]が。正教国には[黄金の勇者]がいるわ。」


「ルミナス。戦争の発端はなんなんだ?」

と、フェンリルが質問する。確かに気になるところだな。


「正教国側は国境で巡回部隊が全滅したこと、王国は姫の暗殺容疑ってことらしいわよ。」


おう、かなりややこしいことになってる。


「で、問題はこれだけじゃないのよ。」


「まだ何かあるの?」


ツクヨミが聞くとルミナスが深刻そうに話し始めた。



「通常、勇者というのは、勇者自身がしようと思わない限り戦争には参加する義務はないということになってる。それは知ってるわよね?」


すいません知らなかったです。


「でも、今回正教国側で殺された巡回部隊は、勇者の直属の部下らしいのよ。しかも、かなり勇者と仲がよかったみたい。」


「つまり、正教国側は勇者が戦争にでるということですか?」


「それだけじゃないわ。王国の姫は勇者と婚約していたそうよ。」


え、


「まさか、そういうことですか・・・」


それは問題すぎる


「ええ、今回の戦争には勇者が二人(・・)参加するわ。しかも敵同士としてね。」









_______________________


ーー王国軍・会議室ーー


「正教国の軍に動きは?」


「今の所ないようです。長官。」


「そうか。そのまま監視を続けろ。グリーン公爵家がなにかと煩い。戦争などするな、とな。全く、聖職者の腰抜けどもしかいないあの国のどこに怖じ気づいたのか。」


「全くその通りです。」


「動きが少しでもあったら貴族会議で報告する。即座に伝えろ。」


「はっ!」


「失礼します!長官!例の方がいらっしゃいました!」


「ほぅ、来たか。ご案内しろ。」


「はっ!」


暗い会議室に、白く鋭い光が入る。


「よくいらっしゃいました。勇者様。本当に戦争にご参加になるので?」


「ああ、私の最愛の人を奪った国は、許さない。絶対に潰してみせる。[白銀の勇者]の名に誓って!」



_______________________

ーー正教国・教皇の部屋ーー


「本当に参加されるのですか。この聖戦に。」


「はい、私の友にあの様な仕打ちをしたのです。神の使徒として裁きが必要でしょう。」


「分かりました、参加を認めましょう、あなたに神の加護があらんことを。」


白い部屋を金の光が染め上げる。


「神敵に報いを。[黄金の勇者]の名に誓って。」





どんなにシリアスでも、シリアスにならない主人公ってどうなんだろう・・・?

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