特訓した結果のお話
遅れてすいません!今日の分です。
ーー特訓開始から一週間後ーー
「いくぞっ。[雷装][雷の牙]!」
「ちょっと!?それはひどいんじゃないかな!?ちょっ、やめ」
「ふんっ!」
なんもかわってねー。
とはなっていない。
「ちっ、[要素の衣]!夜属性、[夜の帳]!!」
技巧を発動させた瞬間、二カ所に漆黒の立方体が発生し、1つが自分を覆う。周りから見ると黒色の箱のようになっているだろう。
そして、立方体がなくなったときには、俺はフェンリルから20メートルほど離れたもう一つの箱の場所にいた。
「ちっ、よけおったか。」
「当たったら一撃でダウンだから。」
結構強くなってる俺であった。
しかも。
「今度はこっちだ![夜の帳]!」
もう一度立方体に俺が包まれると、今度は俺がいつの間にかフェンリルの懐に。
「くっ、しかし遅い![瞬爪]!」
フェンリルの爪が俺に突き刺さる。
「だから、甘いのだ。カズト。」
甘いのは。
「甘いのはそっちじゃないの?フェンリル。[忍術]、[身代わりの術]。」
フェンリルの突き刺した俺が木の板になる。本物の俺は、いつの間にかフェンリルの背中の上に。
そして、俺は短剣を抜き、慣れ親しんだ技巧、[暗殺]を発動。
「ぬっ。[疾風迅雷]!」
フェンリルが、その場から消えた。俺は地面に転げ落ちる。
でも。
「ちっ、当たったか。」
フェンリルの背中には何かで切れたような傷が。
つまり、
ついに俺は。
「しょうがない、合格だ。」
特訓という名の暴力に合格した。
「よっしゃぁぁぁ!」
今回の作戦の要は、[要素の衣]の夜属性バージョンである、[夜の帳]である。
この技の効果は
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[夜の帳]
対象との直線距離を変更する。
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だけである。まあ、つまり瞬間移動だ。
しかし、この技、制限が結構きつかった。
まず、対象は視界に入れていなければならない。
次に、自分と対象を結ぶ直線上でしか効果は発揮しない。
最後に、一度使うだけでかなりの体力が持って行かれるので、休みなしの戦闘だと、最大でも4回ほどしか使えない。
戦闘中に少しでも間があればまだ大丈夫なんだけど、フェンリルはなぁ。獣だし、元のスペックが高すぎて、途中様子を見るとかないんだよな。
で、今回。俺は、フェンリルの攻撃の中でなにもしてないと絶対によけられない、しかし、隙も生まれやすい[雷の牙]を待った。
そして、その攻撃を一回目の[夜の帳]でよける。
その後、もう二回目の[夜の帳]を発動してフェンリルに近づく、が、どうせフェンリルのチートな攻撃速度にに対し、俺の攻撃は間に合わない。
ということでこれを使った。
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身代わりの術
[忍術]の技。
敵に対して、自分以外の物体一つを、自分のように見せかけることができる。
技を使うときは何か物を所持している必要があり、自分と同じくらいの大きさであればあるほど効果は高くなる。
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これ、「所持している。」が条件なんだが、なんと魂の扉に入っている物でも発動できてしまった。ありがとうじじい。役に立ってる。
というわけで、[夜の帳]の中で俺は、あらかじめ用意していた木の板でこれを発動。
そして、[夜の帳]が切れる前にもうひと仕事。
三回目の[夜の帳]を、地面に対して発動。
すると俺は地面から離れて、上空。つまりフェンリルの上にいるわけだ。
[夜の帳]の中で発動した[夜の帳]は見えないようになっている。
フェンリルの目の前には俺に見えている木の板。
で、後は上から[暗殺]と。
しかしあそこで俺に気付くとは思わなかった。お陰で当たるか当たらないか、結構ギリギリだった。
が、勝った。
大体この作戦自体成功させるまでが長かった。一見すると、三つ位しか技巧は使ってないように見えるが、結構いろいろ使っているんだよ、これ。
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[上位級]
並列起動
いくつかの技巧を同時に発動できる。
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[上位級]
忍者
忍術を使い続けた証。敵から気配が感知しにくくなる。
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[上位級]
戦士の心得
戦闘中は、痛み、動揺、スタミナ不足による行動力低下が少なくなる。
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[上位級]
地形把握
自分が一度見た光景を記憶し、地形を把握することができる。
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[王級]
暗殺の達人
暗殺を使い続けた証。暗殺攻撃時に攻撃速度が上がる。
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こんな感じ。
[並列起動]は、[黒の帳]と[身代わりの術]を短時間で同時に使うため。
[忍者]はフェンリルの攻撃速度が速すぎたから、だったら気付かせなければいいじゃない、という対策。
[暗殺の達人]もフェンリルの攻撃速度対策。
[戦士の心得]は連続で[黒の帳]を使うため。これがなかったら、[黒の帳]を使う度にへばってしまう。
[地形把握]は、[黒の帳]によって岩や木に体がめり込むのを防ぐため。(体験済み)
他にもパッシブ系の技巧も役立っている。
魂の位階も二つ上げた。
それで、ここまでくるのに1週間もかかったのだ。
で、今の能力の全貌がこちら。
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個体名 クロバネ カズト
経過年数 20年
種族 ヒューマン
職業 黒の勇者
魂の位階 第7位階(up!!)
次段回に魂の位をあげるのに必要な魂 5028
魂の技巧
[基本級]
言語理解
世界基礎知識
諦めの悪さ
要素感知
[低位級]
隠密
索敵
短剣術
棒術
疾走
罠制作
衝撃耐性
雷撃耐性
斬撃耐性
刺突耐性
要素攻撃耐性
毒耐性
筋力上昇(new!!)
速力上昇(new!!)
跳躍力上昇(new!!)
[中位級]
技術力超上昇(new!!)
体力超上昇
工作師
軽業師
忍術
闇属性魔法
夜属性魔法
[上位級]
暗殺者
逃走者
要素の衣
地形把握(new!!)
戦士の心得(new!!)
忍者(new!!)
並列起動(new!!)
[王級]
技巧習得必要経験値低下
暗殺の達人(new!!)
[神級]
魂の回廊
魂の扉
魂の技巧
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長くなったなー。
じゃ、恒例の文句タイムいくか。
なんで、初めて、自力で、手に入れた、王級技巧が、
暗殺の達人なんだよ!
おかしいだろ?なあ?だってさ。俺勇者だよ?あれ、違ったんだっけ。あってるよな。
暗殺者の技能をどんどん習得していっちゃうんだけど?
もっと、こうさ、「ブレイブ~」とか、「シャイン~」とかさ、もっと勇者っぽいあるだろ?
なんだよ、もう職業忍者か暗殺者だよ?これ。そのうち人殺しに行くよ?勇者が。
よし、愚痴りタイム終わり。
じゃ、今日の所は・・・
「では、もう一戦やるとするか、まだ日は高いのでな。」
・・・あれぇ、もう合格したのでは?
・・・・・・・・・・・・。
ーーその日の夜ーー
俺とフェンリルは、焚き火の前で今日の特訓の疲れをとっていた。
「鬼畜野郎。」
「なんだ?というか呼び方なんかちがくなかったか?」
「さらわれたツクヨミの友達ってどんな奴だったんだ?」
断じて変な呼び方はしてないよ、加虐趣味狼
「そうだなぁ。我と同じで白が好きだったな。」
「なるほどなぁ、って別に趣味は聞いてない。」
というか、お前は白が好きというか毛皮が白いんだろう?
「ん?ではなにを聞きたいのだ?」
「んー。簡単に聞くとするなら、「強かったのか」?」
この森に住んで、神の友達言い張れる人なんだ。強いんだろう。
「そうだな。認めたくはないが、私と同じくらい。これでわかるか?」
え、フェンリルと同じくらい強い女性なの?もしかしてゴリマッチョみたいな女性なんだろうか。というかそんな人いたんだ。
単体ならフェンリル最強だと思ってた。
「そんなに強かったのか。」
「ああ、奴は半神であったからな。」
よし!まだゴリマッチョ女とは決まっていない!幼女の次は筋肉とかいやだからな!
「私は身体能力で奴に勝っていたが、奴は魔法も要素も使えたからな。日々力比べをしていたよ。」
なるほどなぁ。俺と同じ感じの能力構成なのか。流石に隠密とか暗殺とかはしないと思うけど。
「なんで、そんな強い人が捕らわれたんだ?」
気になるところだ。そんなに強かったら撃退できそうだが。
すると、フェンリルが怒ったような顔を浮かべながら語り始めた。
「それはだな、奴はこの森に迷いこんできた人族を助けようとしたのだ。
魔王軍だけなら一人でどうにかできただろう。奴は私と違って広範囲の攻撃ももっているからな。
だが、それはできなかった。奴がそれだけの力を使えば人族が巻き込まれるからな。」
なるほどね。優しい人だったんだな。
「その結果、ボロボロにされ魔王軍につれさらわれた、というわけだ。」
ちょっと気になる点が、
「なるほどな。しかしなんで魔王軍はその人をさらったんだ?殺してしまえばいいのを。」
「ああ、おぬしは魔王軍の正体を知らないのか。いや、違うな。今回の魔王軍、だな。」
魔王軍の正体?
「魔王の力によって生み出された化け物じゃないのか?」
「そうだ。確かにその通り、魔王の力によって生み出されている。」
フェンリルの顔が苦々しい。
「しかし、その中身。魔王の力をかけられているのは、人や獣なのだ。」
「なんだって!?」
そんな、じゃあ俺がこの世界で殺さなきゃいけないのはフェンリルと同じような獣やさらわれた人間ってことか!?
「そんな顔をするな。安心しろ、神の加護を持つ者、つまりほとんどの者には作用しない。人間でいえば盗賊など罪を犯した者の死体。獣は加護を失うほど己の欲望に身を委ねた者だ。」
そ、そうか。なるほど少し安心した。でもこの命が軽い世界にいる以上覚悟はしておいた方がいいな。
「しかし、何事にも例外はある。
例外の1つが、長時間魔王によって、直接術をかけられ続けられた場合だ。これだと魔王の手に落ちてしまう。
その間、魔王軍が増えることはないが、その分奴は強いからな。その手間をかける価値があるのだろう。」
つまり、フェンリルと同じくらい強いやつが敵に?それはいやだな。
「といっても、まだ牢屋にいるということは、術がかけ切れていない、ということだ。」
早く助けないとな。ツクヨミのためにも。
「名前はなんていうんだ?流石にお前と違ってあるだろ。」
「ルミナスだ。」
ルミナスね。よし心に刻んだ、待ってろよルミナス。
絶対に、助けてやる。
次回、魔王城突入・・・かも。




