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まじない探偵ヒミコの裏帳簿  作者: 七海チェルシー
4/8

事件

一体、どうしてこんなことになってしまったのか。

俺は疲れ切った顔で正面を向いた。


俺は何か悪いことをしたか。

いや、していないはずだ。


こんな、

大勢の刑事に囲まれるいわれはない。

一切ない。


しかもよりによって、何でこいつがここに来るんだ。


「私が警視庁捜査一課の警部だからだ」


俺の心の声が聞こえたかのように、その男、高梨警部が言った。

どこか高圧的な物言いに、俺はまた不快さを感じる。

「何だその顔は。なにか言いたいことでもあるのか」

あからさまに表情を歪めた俺に、高梨が不満そうに尋ねる。


「別に」

俺はそう言って顔をそむける。


俺は「明善ひかりの会」本部の宿舎の一室で、つい今しがた到着した刑事達に、机を中心にして囲まれていた。

警部は、もはや睨むといった形容の方が当てはまるような顔をこちらに向けて、ぶっきらぼうに尋ねた。


「一部始終を話せ」


俺は不満を顔中で表して返す。


「何度言わせれば気が済むんだ。三回も四回も聞かなければ解らないほど無能なんですか、あなたがたは」


俺の発言に回りを囲む数人の刑事が僅かに気色ばんだようだったが、高梨警部は顔色を変えずに言う。


「聞かれたことに答えていればいいのだ」


いい加減頭にきた俺が、何か言い返そうと言葉を探し始めた瞬間、ドアの方から不気味な猫撫で声がした。

「高梨さん、すみません。うちのバカ助手がまたまたお手数かけまして」


ヒミコだった。


木製のドアに片手をかけたまま、もう片方の手を頬にあてて、気色の悪いしなを作っている。


「ひ…ヒミコさん!」


高梨は突然背筋をしゃんと伸ばすと、若干強張った笑顔をヒミコに向けた。


「ヒミコさんが謝られることはありませんよ。貴女は何もしておられないのですからね」


俺は間抜け面になった高梨警部の顔をまじまじと見た。


一体、ヒミコのどこがいいんだろう。

そんな風に思った。


警部は、あのインチキまじない師に"メロメロ"なのだそうだ。


ヒミコは部屋の中に進み出ると、やや呆気にとられている刑事たちに目もくれず、俺の隣までやってきた。

「アホ助手の代わりに私がお答えします、高梨さん」

俺の肩に手を置きながらヒミコが言う。

「そんな、ヒミコさんの手を、いや口を煩わせるようなことは」

高梨警部が両手を前に伸ばした格好で首を振った。しかしヒミコは聞かずに、勝手に話し出す。


「私は、一介の見学者として、こちらの会を訪問させて頂いていました」


そこでヒミコはちらっと俺を見る。


「この助手は、どーーしても一緒にきたいと言うものですから、しかたなくつれてきたのです」


よく言うよ。

お前が無理矢理連れて来たんだろうが。

もっともそんな扱いはいつものことだから、俺は別に何も言わなかった。


「それで、来たそうそうに彼が一人で迷子になりまして」


高梨警部はただ頷いて聞いている。いや、もしかしたらヒミコに見とれているだけで何も聞いていないかもしれないが。


「ふらふら宿舎の階段を昇って廊下を歩いていたところに、悲鳴が聞こえた、と」


ヒミコがそう言うと、警部は鋭い目で俺の方を見た。


俺は億劫ながら頷いた。


「そのあとは」


高梨警部は俺に聞いた。


「正確に言えば、まず才和恵が廊下の奥から歩いてきた。彼女が例の部屋に入ってから一分くらい後に、悲鳴が聞こえた」


俺は結局丁寧に話した。


「悲鳴が聞こえてすぐに、俺はそのドアに呼びかけた。少ししてドアが開いて、恵が倒れかかってきた」


思い出しながら話す。

高梨は真剣な顔で聞いていた。


「部屋の中を見たら、ベッドの上が血まみれで、明らかに人が死んでいた」


俺は一息ついた。


「それからすぐ、誰も来る気配がなかったから、受付に行って人を呼んだ」


同時に110番もしたところ、ほどなくしてこいつらがやってきた。


「才和恵とはち合うまで、お前はどれくらいの時間あの廊下にいたんだ」

警部が尋ねた。

「3分くらいじゃないか。正確には覚えていない」

俺が素直に返すと、警部は疑わしげにこちらを見た。


「なんであんな場所にいたんだ」


聞かれて一瞬言葉に詰まった。

思わず隣のヒミコを見ると「余計な事言うんじゃねえ」という顔で俺を見ていた。


「だから、迷ったんだよ」


不本意ながらそう答えた。


「あの部屋には、確かに鍵がかかっていたんだな」


高梨警部がまた俺に聞いた。

抵抗するのも馬鹿らしくなったので、俺は答える。


「最初、恵が扉を開けたときは、かかっていなかったと思う。すぐ開けて中に入ったからな。でも悲鳴を聞いて俺がドアを開けようとした時には、しっかり鍵が閉められていた」


それを聞いた警部は、何か思索的に俯いて言った。


「それならやはり、才和恵が中から鍵をかけたということになるな」

彼の顔には、思惑通りだといったような嫌みな笑みが浮かんでいた。

この表情さえしなければ、なかなか男前であるはずなのに、そのせいで全て台なしになっていると俺はいつも思う。


「才和恵はまだ目覚めないのか」


出し抜けに高梨警部が周りの刑事に尋ねた。

一番ドアに近いところにいた若い刑事が一言だけ答えた。


「まだのようです」

そうか、と返した警部はどこか満足げだった。


「高梨さんは、才和のお嬢様が犯人だとお考えなのですか」


ヒミコが聞いた。

高梨警部は自信ありげに頷く。

「犯人だと決めてかかっているわけではありませんが、有力な容疑者であることは間違いないでしょう」


そうだろうか。


あのときの恵の表情は、本物の恐怖に混乱しているさまを映し出していただけだった気がする。

俺は何か首肯しがたいものを感じて、口を開いた。


「なぜそう考えて…」

「お前に教えることなど無い」


高梨は最後まで聞かずに遮った。

本当に嫌な奴だ。


しかし、間髪入れずにヒミコが同じ質問をした。

「どうしてそのようにお考えなのですか」

「それはですね、才和恵の行動に不自然さというか、おかしな点があるからです」


あっさり答えやがった。


高梨は詳しく続けた。


「もしも才和恵が犯人でないのなら、被害者は彼女が部屋に入る前から殺されていたということになる」


まあ確かに、恵のあとに部屋に入った者はいないわけだから、恐らくそういうことだろう。


「しかしそう考えると、ある一点、おかしなところがあります」

高梨がヒミコを見て言った。


「おかしなところ、ですか」

ヒミコは口に出して聞き返す。


「はい。今、この小僧……この助手の青年が供述したなかに、非常に不自然なくだりがありました」


俺の話しの中に?

一体どういうことだ。


俺が回顧していると、高梨警部が俺に言った。


「青年。才和恵が部屋に入ってから貴様はどうしたんだった」

嫌な物言いに、俺は不機嫌に返す。


「だから、しばらくそのドアの前にいたんだ。それから悲鳴が聞こえた」


「そこだ」

高梨が、被せるように言った。


何が不自然だっていうんだ?


高梨警部は俺を見たままで言った。


「悲鳴を上げるまでの時間が、おかしいとは思わないか」


時間?


俺はとっさにわからなかった。

警部が解説する。


「お前は見たんだろう。被害者を」


言われた俺は、あの真っ赤に染まったベッドを思い出した。


「ああ」


少し気分の悪さを感じながら、俺は答えた。


「被害者の姿は、部屋の中に入らずとも確認できたのだな」

「できた。ベッドが入口のすぐ右手にあったから」

「目を懲らさなければ死体だと気付かないような物だったか」

俺は首を横に振った。

「一目でわかる」

現に俺は見た瞬間に気付いた。

あれはもう生きていないと。


「なるほど」

ヒミコが突然つぶやいた。


「もし犯人が恵でないのなら、被害者は恵が部屋に入ったときには、すでに殺されていたはず」

ヒミコは上目づかいに警部を見る。


「でも由良くんが彼女の悲鳴を聞いたのは、部屋に入ってしばらくたってからだった…と」


言われてやっと、俺も理解した。


部屋を開けた段階であの惨状を目にしたのであれば、普通はその時点で悲鳴を上げるだろう。

しかし、彼女が叫んだのは、部屋に入って少したってからだったのだ。


しかし、それでもなお俺は釈然としないものを感じていた。


どうしても恵が犯人だと思えない。


「単に、声も出せないほどに驚いただけかもしれない」


俺が言ってみたが、高梨警部はあっさりと返した。


「声を失うほどに驚いているのに、ドアを閉めてご丁寧に鍵までかけたというのか」


確かにそう言われれば不自然である。


しかし…


俺が俯いた瞬間、廊下に声が響いた。


「警部、警部」


声の主は一人の刑事だった。


「才和恵が目を覚ましました」








『黄桜』


それが才和恵の部屋だった。


「………。あの、ヒミコさん」

「何か?」


恐る恐るヒミコに声をかけた高梨は、笑顔で返されやや当惑していた。


「いや、一応、事情聴取は公開していないのですが」

当然とばかりに後ろにくっついてくるヒミコに、かなり困った顔を見せた。

しかしヒミコは笑顔を崩さない。

「あら高梨さん。いまさらそんなことをおっしゃるの」

ヒミコはいわくありげに高梨に近寄り、また上目づかいに彼を見上げる。


「また何かが見えるかもしれませんでしょう。お邪魔はしませんから」


ヒミコは過去にも、高梨警部の手掛けた事件に首を突っ込み、幸運にも解決に導いたことがあった。

高梨はそれをヒミコの霊視能力のしわざだと信じて疑わない。

結局、なんだかうやむやのまま、高梨はヒミコ(と俺)の同席を許可した。


部屋の造りはどこも一緒のようだ。


扉を開けると左手に小さなクローゼットがあり、その奥にミニサイズの冷蔵庫が見えた。

正面奥には恐らくバスとトイレ。


…………。


ここはホテルか。


宗教団体の宿舎が全室バストイレ完備なんて聞いたことがない。


そして、右手にベッドがあった。

その上には、小動物のような姿の才和恵がいた。

ベッドに座った状態で、放心しているようにじっと俯いている。


まあ、あんな凄惨な殺人現場を目の当たりにしたのだから、無理もない。


一応気を使ってか、高梨警部はできるだけ穏やかな声で話しかけた。

「才和恵さんですね」

しかし恵は反応せずに、白い掛け布団を眺めているだけだった。


警部は続けて声をかける。


「私は警視庁捜査一課の高梨。少しだけお話を伺いたいのですが」


恵は言われて、ようやく顔を上げた。


そしてなぜか、


驚いたような大きな瞳で、ヒミコを凝視した。


ほんの数秒、室内の空気が止まった。


そして突然、恵は掛け布団を勢いよく引きはがすとベッドから飛び降りた。


何だ?


一体。


そして裸足のまま、早足で高梨警部をすり抜け、ヒミコの前までやってくる。


いきなり、何があったんだ。

ヒミコがどうかしたのか。


さすがのヒミコも、あまりに唐突な出来事に珍しく驚いた顔をしている。


「……これは、運命」


ぽつりと恵がつぶやいた。


そして次の瞬間。


なぜか、




ヒミコの隣にいた、


俺にがばっと抱きついてきた。




「っな!?」


俺は慌てた声を出したが、どう対処していいのかわからなかった。


恵は何だか満足そうに、俺の胸にしがみつく。


「恵の王子様。見つけました」




何か言った。


何か言ったよこいつ。


俺の頭もまともに働かなくなってきた。


助けを求めるように隣を見ると、ヒミコは何だか邪悪なものが混じった笑顔を俺に向けていた。


「…ふーん。由良くんが王子様ね」


言いながらヒミコは俺の肩に右手を置き、左手を恵の肩に当てて彼女をひきはがそうとした。

しかし恵は頑として俺を離そうとしなかった。

それどころか、はがそうとすればするほど、さらに強く俺を抱きしめてきた。


「強情だなあ、キミ」


ヒミコが仕事モードの話し方を忘れたままつぶやく。


俺はその状態のまま、先程から遠巻きにこの惨事を見つめている高梨警部に視線を送った。

しかし彼は首を傾げただけで、特に何もしようとはしない。


なんだこれ。


「王子様は、由良さんっていうんですね」

恵が抱きついたままで言った。

「素敵。キレイな響き。ねえ、下のお名前を教えて下さい」


ふわり、と恵の栗色の髪が揺れ、リスのようなあどけない瞳が俺を見上げた。


…………。


なんかいい匂い。




いや、まて、俺。

なに考えた今。




バンっ!!


突然、後頭部に痛みが走る。


「……ヒミコ。何で俺を殴る」


クローゼットの上に置かれていた、プラスチックの靴べらをひるがえしているヒミコに尋ねる。

「なんとなく」


殴られ損だ。


しかたないので、俺は抱きつかれたまま恵に話しかけた。


「あの、才和さん」

「恵。恵って呼んで下さい。それから、敬語なんか使ったら駄目。恵の王子様は、どちらかというと上から目線で恵にいろいろ命令するの。でも恵は王子様が大好きだから、どんなわがままでも聞いちゃいます」


…………………。


助けろ。


誰か。


「高梨さん。もう犯人こいつでいいよ」

ヒミコが言った。

ものすごい投げやりだ。


高梨警部は、少しだけこちらに近づき、恵に向かって言った。


「君があの部屋で見たことを、少し教えてもらえないか」


恵は俺の胸に顔をうずめたまま、目だけで警部の方を見た。

しかしそちらには答えずに、彼女はなぜか俺に尋ねた。


「由良さんも、教えて欲しいですか」

俺はとっさに答えた。

「いや…、ああ、知りたい」


その返事に恵は目を輝かせた。


何だその目は。


「じゃあ由良さん、恵に命令して下さい」




は?




あの、


あんた変態ですか?


「『恵、全てを話すんだ』って言って、由良さんは恵をじっと見つめるんです。恵は少しだけ恥ずかしいながら、由良さんを見つめ返して話し始めます」


……………………。




変態だ。


完全な変態だ。


俺は体を締め上げられたまま、今までに感じたこともない脱力感に襲われた。


そんな俺の横で、ヒミコがじっとこちらを見ていた。

何か、怖かった。







恵は部屋の中の小さな椅子に座り、高梨警部がその正面に座った。

テーブルの回りには数人の刑事。

俺とヒミコは、白いベッドに腰掛けた。


……………。


いや、何も聞くな。


とにかく、恵は自分の身に起こった出来事を話す気になってくれたらしい。


「あの、どこから話せばいいのか」

恵はためらうように切り出した。


「どこからでも構いません」


高梨警部は静かに返す。

言われた恵は、少し逡巡してからゆっくり話し始めた。


「恵は、電話で明日香さんに呼ばれたんです。相談したいことがあるから、ちょっと部屋まで来てくれないかって」

そう言って彼女は、テーブルの上に置かれた白い電話の子機を見つめた。


驚くべきことに、電話まで全室についていた。しかも、内線で全ての部屋に繋がるらしい。


さっき高梨がヒミコに教えていた。


「すみません。明日香さんというのは被害者の方ですか」


ヒミコが口を挟んだ。

高梨警部がすぐ答える。


「そうです。加藤明日香。もちろん、ここの信者の一人です」


少しの沈黙の後、恵が再び話し始めた。


「明日香さんからの電話を受けて、すぐに明日香さんの部屋に行きました」

「…ちょっと待て。…すぐに?」

高梨がさえぎる。


「はい。すぐにです」


なぜそんなことを聞くのか、と言いたげな表情で答えた。


「…すまない。続けてくれ」

警部は咳ばらいしてから、恵に先をうながした。


「恵は暇だったので、呼ばれてすぐに明日香さんの部屋に行きました。廊下を歩いていたとき、前から人がきました」

恵はそう言って、俺を見た。

「……そのときは、まさか王子様だとは思わなかったですけど」


誰だ。


王子様って誰だ。


「恵は気にせず明日香さんの部屋に入りました。そして、」

恵は無表情で続ける。

「明日香さんに、鍵を閉めてと言われたので、ちゃんと鍵を閉めました」


それを聞いた高梨警部が、慌てたような表情で恵の独白に割って入った。


「ちょ…ちょっと待て。君が加藤明日香の部屋に入ったとき、彼女はまだ生きていたのか!?」


恵は憮然と答えた。

「もちろん生きてました。恵が部屋に入ったとき、明日香さんはベッドの上でお化粧してました」


……どういうことだ?

とでも言いたそうな顔で、高梨は恵を見つめた。


「その後のことを教えてくれ」


言われた恵は話を続けた。

「えーと、とりあえず外から部屋の中に入ったので、明日香さんの部屋の洗面所を借りて手を洗いました」


外って…廊下からじゃないか。


こいつ、潔癖症か?


「一分くらいだったと思います。部屋に戻ってみたら、明日香さんがベッドの上で血まみれになっていて、仰向けの状態で事切れていました」


俺達はみんな言葉を失った。


今の恵の話を信用するのなら、犯人は恵が洗面所にいたほんの一分間で殺人を犯したことになる。

そんなことが可能だろうか。


高梨は俺と同じことを考えているのだろうか、やたらと疑わしげな目で恵を見つめている。

恵はそんな視線に動じることなく、俺の方を向いてきた。

「そして、混乱しながらも必死で鍵を開けて、恵は王子様に運命の再開です」


そこから離れろ。


「洗面所にいる間に、何か物音を聞いたりしませんでしたか」


高梨警部が尋ねた。

しかし、恵は首を振った。

「水の音がすごかったし、恵は手洗いに集中していたから、何も聞いていません」


どんだけ水出してんだ。


どんだけ手洗いに神経傾けてんだ。


「でも由良くんも、何も聞かなかったんだよね」

ヒミコが俺に聞いた。

「あ…ああ、そう言えば」

確かに、俺は部屋の前で聞き耳を立てていたが、何も聞こえなかった。


つまり犯人は、恵が洗面所に行ったほんの短い時間の間に、音を立てることもなく被害者をあんな派手に殺害したということか。


解せない。


「死因は、頸動脈を切断されたことによる失血死ですよね」

ヒミコが尋ねると、高梨は頷いた。

「そうです。凶器は鋭利で刃渡りの長い刃物と思われますが、今のところまだ発見されていません」

それを聞いたヒミコは更に質問した。

「現場に凶器は無かったんですね」

「ありませんでした。くまなく探したのですが、少なくともあの部屋に無かったのは確かです」

「犯人が持ち去った…と考えるのが普通ですよね。…でも」


ヒミコがめずらしく深く考え込んだ表情で言った。


「犯人はいつ部屋に入って、いつ部屋からでたんだろう」


そう。


それが1番の問題だ。


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