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4 決定しました

 今年はどこの部活だろう、と壇上に視線を向ける。部員たちはここに立てる権利を得たからといって、手を抜くことはしない。むしろ、誇らしげな顔で皆が楽しめる出し物をするのだ。それが素晴らしければ、来年の部活を選ぶときに、一般生徒から推薦されることがある。それも吟味されたうえで、生徒会の決定だ。


 今年は漫画部とサッカー部のようだ。漫画部は自分達の描いた作品を演じた。それも、ただ演じるだけでなく、ダンボールや厚紙で漫画の枠や効果音、集中線などを用意し、漫画そのものを再現した。これが非常に面白く、生徒達はお腹を抱えて笑った。

 次のサッカー部は、サッカー漫画の必殺技の中で出来るものを、と元ネタの画像をスクリーンで見せた後に実際にやるというもの。「出来るもの」と言っていたが、普通の人間には絶対に無理な技を、彼らは軽々とやってのけた。歓声があがったのは、言うまでもない。


 それらが終わり、生徒会からの挨拶。高等部と中等部は関わることが、全くと言っていいほどない。だからこっちの生徒会はどういう人たちなのか知らない。壇上にあがっていく人たちを見て、そして深く溜息を吐いた。



 ――どうも、私は主人公と同じ歳らしい。

壇上に堂々と立ち、挨拶をする生徒会長を見ながら私はそう確信した。



***



 さて、ここでこの乙女ゲームについて、少し詳しく説明することにしよう。タイトルは「桔梗学園(ききょうがくえん)恋愛日誌(れんあいにっし)」で、通称「ききょれん」だ。個人的には言いにくいと思う。

 主人公は、中学校は公立で、高等部から桔梗学園に入る外部生だ。そこで出会うイケメンたちと恋に落ちる。ざっくり言えば、そういう話だ。


 相手の男の子達は生徒会会長、副会長。クラスメイトが二人に、前にも言った隠しキャラの先生の計五人。ステータスの上げ具合と、一見攻略に関係なさそうな選択肢である程度のルートが決定される。初見だと、好みのキャラを攻略出来るかはほぼ運となる。ちなみに、私が最初に攻略したのはクラスメイトの一人だった。狙っていたのはもう一人のクラスメイトのほうで、かなりおしかった。まあ、最終的には全員クリアしたが。


 乙女ゲームではよくある、キャラ全員の苗字や名前に関連性があるパターンで、皆苗字に髪の色がはいっている。赤や橙、青など。先生も、黒髪なので須「黒」となっている。まあ、ここまでなら、他のゲームと大差ないだろう。


 そして、ここからが少し違うところだ。実は、攻略キャラの数名は普通の人間ではない。吸血鬼や魔獣使いなど……の、子孫。どうもこの世界はかつて、ファンタジーな能力が存在したようで、そういう親を持つ子がいるようなのだ。

 だが、キャラ全員がそうという訳ではないし、明かされていない人もいる。明かされていても、明確に能力を使うシーンがなかったりする。この辺りの設定の作りこみは甘いだとか、想像の余地があっていいとか、賛否両論である。私は後者だった。


 さて、私が生徒会長を見て主人公と同じ歳と断定した理由だが、それはずばり年齢だ。


 会長は三年、副会長は二年、そして主人公とクラスメイトは一年。そういう風に別れている。だから、会長がゲームのキャラならば自然と主人公と同学年になるわけだ。攻略キャラを遠目で見かけることがあったから、もしかしたら主人公と歳近いのかと思っていたが、まさか同じ歳とは。

 そういえば、クラスはB組という記述があった気がする。なら、隣のクラスか。危ない、A組でよかった。関わりになりたくないし、遠くからたまに見るだけで充分。むしろ、見なくたって問題はない。私は私で、人生を謳歌するのだから。他人の恋愛に首突っ込むようなことはしませんとも。


 ……あ、でももし須黒先生ルートになったらどうしよう。放課後とかガンガン質問にいったりして勉強教えてもらおうと思っているのに。先生ルートだったら、放課後は思いっきりイベント時間にぶちあたってしまう。

 難易度高いし、ここの主人公が年上好きじゃないと、ありがたいな。ここで自分のことを優先するあたり、私はつくづく自分勝手だなと思う。ま、誰かを気遣ってばかりいるのは疲れるし、それが私だ。諦めも肝心。所詮、私はこういう人間なのだ。

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