討伐の報酬
その後は簡単だった。統率兵の仇を取ろうと残りのゴブリン達は俺の方に向かってきたが、後ろから来ていた村人たちに挟まれ各個撃破されていった。結果、俺がゴブリンAと突撃兵BとCと統率兵を倒した。残りは村人達が倒した。
さて、ゴブリン達を倒したは良いがこたちらの被害は死人二人と怪我人多数となった。とても良い結果とは言えないな。そう振り返っていると、一人の歳の行った老人がこちらに向かってきた。
ガルド(人間) 男 63歳 村長Lv.2
ほう村長か。年の割に村長のレベルが低いな、なぜだろうか。
「旅の方。助太刀の程、ありがとうございました。あなた様のおかげでこの村は救われました。」
「いや、当たり前のことをしたまでだ。そこまで礼を言われる筋合いはない。」
最初は逃げようとしたからな。
「いや、それではこちらの顔が立ちませぬ。是お礼をさせてください。ひとまず私の家の方にきていただけませんか?申し遅れましたが私この村の村長をさせてもらっていますガルドと申します。」
偽名ではないようだな。偽名だからってなんら問題はないが。
「では、お言葉に甘えてお邪魔するとしよう。私はハルと申します。」
苗字は言わないでおくか。みんな名前しか言わないし。
「しかし、村長に任命されて僅か1ヶ月でゴブリン達に襲われるとはついていませんでした。」
村長になって1ヶ月か、なるほど。だからレベルが低かったのか。
「それは不運だったな。」
俺はラッキーだったけど。
「しかし、ハル様はお強いですね。さぞ、名前が通った冒険者なのでしょう。ゴブリンをお一人で倒したのですから。」
確か神様からもらった知識によるとダンジョンに潜るには冒険者にならないといけなかったな確か。だが、どうしたらなれるかまでは分からないからどう答えるべきか。田舎の出ということにしておくか。
「いや、まだ冒険者ではないな。田舎の方から最近出てきたばかりなのでこれからなろうと思っているとこだ。」
こういえばいいだろ。
「となると、ハル様はまだ冒険者ではないのですか。冒険者でもないのにゴブリンを倒せるのですから冒険者となりましたら、さぞ有名な冒険者となられるでしょう。」
よし勝手に納得してくれた。
「そうなれれば良いのだがな。しかし、すまないな。ゴブリンを倒すためとはいえこの村の商人の剣を勝手に使ってしまって。」
そして、さりげなく銅の剣のことをこのタイミングでいえば、怒られることはないだろう。
「いえいえ。銅の剣などいくらでも手に入ります。今回は、あなた様が倒しましたゴブリンから魔石が三つ出て私共が倒したゴブリンから一つ出ましたので、それを売り払えば銅の剣の分などすぐ取り戻せますからお気になさらず。後、ゴブリンの落とした装備なのですがどう致しましょうか?鉄の剣となにかの指輪はあなた様のものですが、ほかの装備はどういたしましょう。冒険者でないならばアイテムボックスはまだ使えないでしょうし、手で持っていくとなるとかさばります。こちらで不要な装備は換金しましょうか?」
一気に村長がまくしたててきたな。そして重要な情報がいくつかあった。とりあえず、魔石とはなんだろうか。魔物を倒すと落とすのは理解できるが絶対落とすわけではないのだろう。そして魔石は売れるととりあえずどのくらいの値段なのだろうか。それぐらいなら聞いても怪しまれないだろう。
「ゴブリンの魔石とはどれぐらいの値段で売れるのだ?田舎だったもので価値観がいまいちわからなくてな」
「ゴブリンの魔石ですと詳しく鑑定しないと分かりませんが、ゴブリンの階級にもよります。一般的なゴブリンや突撃兵、偵察兵など多種にわたりますので一概にはいえません。後、魔石にはまれに倒した魔物の能力がやどることがあります。一般的なゴブリンなら少し力が上がる能力になります。ですが、価格はスキル有り無しを比べた場合スキル有りの方が高く売れます。」
そうなんのか。しかしなぜ詳細が分からないんだ、鑑定を使えばいいのではないか。
「なぜ魔石の詳細が分からないのだ?」
「申し訳ありません。この村には魔石に関する職業をもつ者がおりませんので鑑定をすることが出来ません。商人はおりますが商人の鑑定ではそれが魔石であることまでしか鑑定出来ませんので、基本的に町の方で鑑定することになります。後、話は変わりますが商人の鑑定は広く浅い程度の情報しか分かりませんが、武器商人が武器に鑑定した場合と商人が武器に鑑定した場合、武器商人の方が詳しく分かります。もちろん、熟練にもよりますので一概にはいえませぬが。」
「そうなのか、色々と説明してもらいすまないな。」
「とんでもございません。この程度ならいくらでもお聞きください。他に質問が無いようなら先ほどの件はどうしましょうか?」
「そうだな。後一個ほど質問良いか?アイテムボックスとはなんなんだ。」
「アイテムボックスとは冒険者のスキルになります。今回の件で例えましたら今回のゴブリンを倒した後の戦利品は鉄の剣、指輪、こん棒が二つ、魔石数点になります。鉄の剣と指輪は装備するので除外するとして魔石も小さいのでそう邪魔にならないと思います。しかし、こん棒二つはそうはいきません。戦闘中や旅の途中、ずっと持っているわけにはいきません。しかも、ダンジョンの中なら戦利品は増える一方になります。そんな時に使うのがアイテムボックスのスキルになります。人によりアイテムボックスに収容できる容量は異なりますが、長年冒険者の職業に就いてた者の方が多く収容できる傾向があります。こんな感じでよろしいでしょうか。」
となると、冒険者の職業は必須になるのか。聞いといてよかった。
「ああ。すいまない、助かった。聞いておかなかったら冒険先で困るとこだった。で、使わない装備なのだがこん棒二つは換金してくれ。」
「分かりました。後でお金をお持ちします。そのままではあれなので袋に入れてお持ちします。それと、よければ服をそちらでお着替えください。ゴブリンの返り血がついておりますので。服のお代はもちろん無しで結構です。そして、鉄の剣と指輪もありますので一緒にお持ちください。」
「何から何まですまないな。恩にきる。」
示された部屋に入るときれいに折りたたんである服と鉄の剣、指輪そして魔石がおいてあった。後、小さなリュックみたいのがあった。そこに荷物を入れろってことかな。それじゃ、お言葉に甘えて着替えさせてもらおうかな。
よし、着替え終わった。装備も一新したことだしとりあえず自分を鑑定してみるか。
ナガト ハル(人間) 男 21歳 転生者Lv.2 救世主Lv.1
装備品 鉄の剣 旅人の服(上下) 統率の指輪
魔石…ゴブリンの魔石
ゴブリン突撃兵の魔石
ゴブリン統率兵の魔石
装備はちゃんと出来てるな。疑ってたわけじゃないが魔石も本物で大丈夫そうだ。そして、問題は何か職業が増えてることだ。救世主か、取り合えず鑑定してみるか。
救世主
能力 全ステータス中上昇
スキル 救済
救済…自分または他者が負った傷を再生する。
転生者でも出ていたが全ステータス上昇は果してどれほどの効果なのだろうか。今の段階では良く分からないな。そして、この段階で回復の手段を得たのはうれしい。これで、些細な傷程度なら自力で回復が出来る。後は、これを最初の職業に変えておくか。転生者よりは目立たないだろ。こちらの世界で入手した職業だし。だが、どうやれば変えれるのだろう。職業変化と心の中で唱えれば出来るだろうか。とりあえずやってみよう。
(職業変化)
駄目だな、反応がない。どうしてだろうか。何回唱えても出来そうにない。もしかして、対象を言わないとだめなのだろうか。自分を対象に職業変化と唱えてみる。
ナガト ハル
所有職業…転生者(Lv.2)、救世主(Lv.1)、戦士(Lv.1)
いつの間にか戦士も入手していたらしい。だが、いつ手に入れたんだろうか。剣で敵を倒した時だろうか。さっぱり検討がつかない。とにかく、職業を変えれるみたいだから救世主を一番目にしておくか。だが、良く考えたら救世主などという職業が本当に簡単に入手できるのだろうか。となれば、戦士を最初にしといた方がいいのではないだろうか。現状二つまでしか付けられず、戦士をつけれると救世主は控えに回るが仕方ないだろう。戦士を最初のジョブに設定しておこう。
戦士
能力…STR極小上昇
スキル…スラッシュ
スラッシュ…上から下に切りつける。
大分能力が落ちるな。しかしこれが一般的だと考えるとますます救世主は設定出来ないな。
ナガト ハル(人間) 男 21歳 戦士Lv.1 転生者Lv.2
とりあえず、これで良いだろう。転生者と転生者のスキルにまるまる隠ぺいを施した。これで簡単にはばれないだろう。とりあえずこれでいこう。しかし、大分時間をつかってしまった。村長に不審がられる前に戻ろう。ゴブリンの返り血が付いた服をリュックに入れ、村長のもとに戻った。すると、村長は小さな袋を手元に置き、こちらを向いて喋り掛けてきた。
「これはハル様、大変似合っています。そしてこちらがお金になります。こん棒を換金した分と多少のお礼になります。お確かめください。」
「うむ、お礼までしてもらいすまない。」
そう言い、お金を懐にしまう。
「ハル様。お確かめにならないのですか。」
確かめるも何も確かめたところで分からないからな。
「ああ、なにか不都合でも?」
「いえありません。あっ、そうだ、これもついでに差し上げます。ここから一番近い町の地図になります。どうぞお納めください」
おや、確かめなかったのが良かったのか地図がもらえた。ラッキーだな。
「すまない。では、私はそろそろお邪魔しよう。折角の町の地図をもらったとこだ。そこを目指すとしよう。いろいろ気を使わせてしまいすまなかったな。」
「いえいえ、こちらこそ街を救っていただきありがとうございました。またよろしければ、お尋ねください。精一杯、おもてなしさせていただきます。
「ああ、また寄るとしよう。では、村長村のみなによろしく頼む。」
「はい、分かりました。」
そして俺は町に向かうため村を出た。