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精霊のシジル  作者: 染料
六章
99/135

第九十八話 待望


 毎朝現れるパルマがアルクゥの目の前に叩き付けていく新聞には、毎日のように血生臭い事件が載る。ある地域では奇怪な疫病が流行り、ある地域では魔物の大発生によって小さな村がいくつも血の海に消えた。農村がなくなれば国は餓える。しかし守るための派兵もただではない。

 着実に国力を削る黒蛇の無差別攻撃は、一方で自刃すら伴う狂乱でもある。

 疫病を流行らせた魔術師は自らも病に侵されて黒く干乾びて死に、魔物を使役していた集団も最終的には魔物に食い散らかされ骨しか残らなかったという。彼らは本当に自分の意志で破滅を選んだのだろうか。

 魔術が利かない魔物が王都付近に度々現れるようになり、ガルドの研究成果は非常に重宝された様子だった。国は密かに廃域の核を回収しては使いのパルマを経由し、メイの家から少し離れた小屋に陣取るガルドまで送ってきている。しかし元々数が少ない上にウリディスの時のようにしばし奪われることもあり、黒蛇との間で争奪戦が繰り広げられ、更に血の臭いは広がっていくようだった。

 ティアマトは戦時のような薄暗い雲に覆われている。

 外界と隔絶された山深いメイの家に居を移したアルクゥたちの空にも、その怪物のような暗雲はもうもうと浮かんでいた。


「雨が降るぞ」

「そのようですね」


 軒下で膝を抱えたアルクゥは斜め後ろのヤクシに気のない声を返す。

 暗に中に入れと要求する言葉には耳を貸さず、鳥小屋の前で呆けた顔をするマニをじいと見詰めた。

 魔獣襲撃から四日が過ぎた。あの夜以来マニの明るい表情を見た覚えがない。ヴァルフにそれとなく相談してみたところお前もだと指摘された。実際酷い気分が続いていた。

 メイの家に移った翌日に一旦見に戻った拠点は、再び結界が破られ内部が荒らされていた。

 ヴァルフの仕掛けた容赦のない罠による損害は考慮の上なので構わない。だが師の研究室が土足で踏み荒らされていたのには殺意が湧いた。

 首飾りを力一杯握り締める。

 ただの硬いだけの無機物は冷たい温度を手の平に返すだけだが、頭に昇った血は緩やかに下がっていく。強烈な護りは身代わりとして厄に喰われてしまった。宝石の表面には細かな傷が目立ち、装飾品としての命も尽きた外見ではあるが、愛着が湧いてしまって着けていないと落ち着かない。


「壊したのか」


 チラと視線を遣ると、ヤクシは魔眼発動の残光を目端に滲ませながら余所を向く。いかにもアルクゥが悪いような言い方に少しむっとして返した。


「壊されたのです」

「どちらでも同じことだろう。直したいのであれば、心当たりはあるが」

「心当たり? ヤクシさんはこれを私に贈ってくださった方をご存じなのでしょうか」

「知るか」


 どことなく矛盾を感じる。ヤクシは親切を悔やむかのごとく眉間に深い皺を刻んでいた。


「雨が降るかもしれない」

「降るでしょうねえ」


 しばらくしてから振り出しに戻る。

 何も生まれない不毛な会話は、ひたすら動きのない時間を埋めるだけの惰性に満ちてる。護衛と言っても四六時中張り付かなくてもいいだろうに、生真面目なヤクシはトゥーテに交代するまで常にアルクゥの近くに控えている。

 水気の強い空気を吸い込む。暗雲の中では竜の唸りに似た雷が籠った音を立てている。強い一雨を予感させる。

 マニは何をしているだろう。

 何分か振りに目を遣ると先程見た位置と同じ場所で空を眺めていた。その唇が微かに「あめ」と動く。その瞬間、空が破裂したような雷鳴が景色を震わせた。

 地面を叩く雨粒は大きい。

 ばたばたと重くぶつかっては弾け、瞬く間に全てが驟雨に白く煙る。

 マニの強い色彩すらもアルクゥは一瞬だけ見失った。


「ネロ」


 雨を喜ぶ使い魔を呼ぶ。ケルピーは主人の意を察し、佇んで動く気配すらないマニの背中を押して軒下にまで運んだ。マニはそこで初めてアルクゥとヤクシを見つけたかのような顔で「よお」と小首をかしげる。


「何してんだ」

「特には、何も」


 だろうな、とすっかり濡れた髪を掻き上げて軒の柱に背を預けた。頬を滑り落ちていく透徹した水滴が本当に冷たそうだ。


「寒い?」

「いや」


 短い否定に少しだけ眉を寄せ、だらりと何の力もなく垂れた腕に触れた。マニは火に触れたかのようにビクリと肩を跳ねさせ困った視線を向けてくる。実際、熱かったのかもしれない。雪のように冷えた肌だった。

 右手を軒の外に差し出す。小さな雨受け皿にたちまち水が溜まって溢れる。じんと冷たく痺れた指先に、鮮やかな火を一つ灯せば、冷気は慌てて退いた。


「お前はどうだった」


 濡れた橙色の目にゆらゆらと炎が揺れている。

 何が、とは言わない。自信のない問いだ。きっと自分に返されたときに答えられないから、誤解を良しとする消極的な質問になってしまっているのだろう。

 アルクゥは自身の炎から雨に陰った森の小路に視点を遠ざける。


「私の身近に起こった異変と言えば、ベルティオとの接触でしょうか」

「またそいつか」

「私にとっては始まりですけどね」


 興味津々で続きを促す瞳に苦笑を混じりに続ける。暗い記憶をなぞることに意外にも何の感慨も湧かない。


「私もあれに攫われたのです」

「あァ? お前も? そのカマ野郎人攫いじゃねぇか。なんで攫われたんだ」

「母と間違えられてしまって」

「そりゃあ……気の毒にな」


 言葉選びに難儀するマニが何を考えているのか分かり、アルクゥは軽く噴き出した。


「私が老けていたわけでも、お母様が若作りだったわけでもないですよ。母も魔力保持者で長命種ですから」

「ああ、魔女婆と同じなんだな。魔力持ちは貴重だから狙われた、と」

「違います。母は聖人なのです」


 マニはぎょっとする。


「母娘揃ってか」

「はい。その上、母は有名でしたから」

「有名ってどんな風に?」

「グリトニルに限ってのことかもしれません。光の話って知っていますか? 読む方が恥ずかしくなる恋物語です」


 腕を組んで理解に時間をかけているマニを待っていると、ず、と後ずさるような音がして振り返る。ヤクシが狼狽していた。


「名前は似ていると思っていたが……一時期流行った響きだ。まさかアルクゥリーネ様が、お前の? それでベルティオが誘拐だと?」

「ああ司祭から聞いていませんでしたか。ベルティオは実行犯で、背後には教会がいたようです。けれど今となっては本当にそうなのかすらわかりません」

「よく戦争に」


 ならなかったな、と言いかけてからヤクシは何かに気付いたように口を噤み、ガシガシと頭を掻いて黙ってしまった。アルクゥがここにいる意味を察したのだろう。


「いや待てよ。じゃあお前ってお姫様じゃねぇか!」

「もう公爵家の人間ではないので」

「なんでだ?」

「下手をすればグリトニルとティアマトの戦争になっていましたから」

「……よくわかんねぇな?」

「それでいいのです」

「はっきり言えよ」


 普通は察せという方が無理な話だ。言った後の反応が予想できてしまい申し訳なく思いながら、眉をひそめるマニに教える。


「私は魔物の襲撃で死んだことになっているのです」


 マニは目を大きく見開いてから、鼻に皺を寄せて痛そうに「お前は」と唸る。


「じゃあ、なんだ。カマ野郎のせいでお前は人生全部ダメにされたって、そういうことかよ」

「ああ、そういう見方もできますね」

「なッ……んで、んな冷静でいられんだ」

「誘拐前と後を比べると、後の方が幸せだからでしょうか」


 マニは理解できないという顔で絶句する。


「悲しいことも嫌なことも沢山ありました。今も命を狙われていて危険だし不安が付き纏っている。けれど、前に戻してやると言われたとしても私は頷かない。地位も財も家族よりも、師匠とヴァルフに救ってもらえたことの方が私には大事だからです」

「家が嫌いだったのか」

「いいえ。好きです。攫われてから自分の死を知るまではずっと帰りたいと願っていました。今でも懐かしく思います。もし必要とされることがあれば力は貸すでしょう。けれどもう望みはしない」


 とうの昔に故郷は失した。アルクゥの帰る場所はもはや別にある。

 アルクゥは一息に言い切って首を振り、本筋から外れた話題を元の軌道に戻した。


「ガルドさんの仮説に当て嵌めれば、私が正すべき歪みはベルティオだと思う。となれば討ちに行くべきなのかもしれませんね」

「行ってやる必要はないって口振りだな」

「そう思っています」

「お前は……強いな。俺には、そうは思えねェ」

「――マニは?」


 何があったのか、と。強くなった雨音と聞き分けが難しい声の大きさで訊く。マニは示した逃げ道を使って聞こえない振りをしていた。言いたくないのならそれでいい。


「本当にそうすべき定めなら、事態は勝手に動くはずです。構えていて何とかなる類のものではないのだから気にして心を削る必要などないでしょう」

「悟ってんのなお前は」

「度々災難に会えば自ずとそうなります」


 少しだけ笑ったマニを見てほっとするのも束の間、雷鳴につられて空を見上げた次の瞬間には陰っていた。


「この分だとしばらくは雨続きか」


 天の蓋は一度決壊したが最後、全てが地に落ち切るまで雨が止むことはない。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 夏の終わりを告げる雨は長々とティアマトに降り注ぐ。


 鉄臭さが充満した紙面とは違い、清涼な森の中でアルクゥたちの生活は何事もなく続いていた。

 師匠の研究室に黴が生えてはいないか、墓が苔むしてはいないか。師が過ごし、そして眠りについた場所を再び荒らされるのは耐え難い。それに泥棒や魔物が住み着かないかも心配だ。ネリウスの私物は持って来れるだけ持ち込んでいたが大半は拠点の中に残っている。定期的な帰還をすると敵に思われてはいつまで経っても戻れない為、二度目の破壊以降は結界を張り直してはいない。

 何度かヴァルフに一時帰宅を提案してみたが素気無く却下されている。アルクゥも頭ではその危険性を理解しているが、感傷は理性を圧迫するので厄介なのだ。泥のように粘性のある緩やかな時間を物憂げに見詰める日々だった。

 魔獣襲撃の夜から六日を数えた昼過ぎに事態は奇妙な動きを見せる。

 リリと一緒になって薬学講義に耳を傾けていたアルクゥはヴァルフに呼ばれて廊下に出た。ここに来てからは一人で過ごすことが多いマニもいて悪い知らせかと身構える。


「何かあった?」

「何ってわけでもねぇが、石の聖女が月陽樹に来る」

「バルトロメア大司教が? どうしてまたこんな危ない時勢に……」

「聖樹巡りだとさ。国の騒乱を憂いて祈りを捧げて回るらしい。信徒共に復調を示す狙いもあるって話だがどうだろうな」


 アルクゥは目を眇める。

 怪我が癒えたことは知っている。だが階層を消し去り大聖堂の高さを変えるほどの攻撃を受けて五体満足でいられるものなのか甚だ疑問だ。

 ――あの女は恐らく狂っている。

 ふと、湖底から泡が浮かぶように誰ぞから言われた言葉を思い出す。アルクゥは記憶を探り視線を左右させ、ああそうだったかと符合する人物を見付けた。クーデターの折にベルティオに殺されたアレイスター魔導師長の忠告だった。

 石の聖女を怪物と呼びその退治は英雄の嗜みと笑っていた。しかしながらアルクゥは関わるべきでないとも。

 狂気の怪物。どこからか冷たい隙間風が吹いた気がして腕を擦る。


「拠点の月陽樹にも?」


 僅かな願いを込めての確認は無情にも是と答えがあった。


「精霊鳥が鳴いた順番だ」

「最初か……いつ来る?」

「すでに王都を発っているそうだ」

「ずいぶんと急だね。それとも情報が遅かっただけかな」


 影に徹するトゥーテを振り返る。困惑げな表情だ。アルクゥと同じでたった今知った情報なのだろう。


「急なんだろうよ。出発してから布告したとしか思えねぇ遅さだ。デネブの議会が泡を食って迎え入れる準備をしてるらしいが、相手が急げば明後日にでも到着だ。聖堂ものおきの補修は間に合わねえだろうなあ」


 「へええ」とマニは心ここにあらずの状態で相槌を打つ。寝不足なのかくまが濃い。眠たげな梟のような目をとろとろと瞬かせている。アルクゥが顔の前に手を翳して振っても反応は鈍い。

 

「この急ぎ方は妙だ。ベルティオが教会と繋がってるんなら、お前やマニがデネブ近辺にいると漏らしたのかもしれねえ。あいつらは聖人を見ると涎垂らして寄ってくるからな。巡礼と銘打っている以上、長くは滞在はしないだろうが立ち去るまで気を抜くなよ」


 ヴァルフはそう言ってから腕を組み、灰色の目でじっとアルクゥを凝視して、


「……その後になら拠点の状態を見に行ってもいい」


 日頃の行いだとは分かっているが、この状態でそんな餌をぶら提げなくとも勝手に出て行きはしない。が、餌を引っ込められては困るので抗議の言葉は口内に留めておいた。


 報せから翌々日、石の聖女は三十ほどの護衛を連れてデネブに訪れた。

 人に紛れて様子を見てきたヤクシによると、三大権力の一にあり獅子霊を主神に置く宗教の頂点に座す者の訪れにしては酷く地味な雰囲気だったという。

 アルクゥはヴァルフの忠告に従い慎重にその動静を窺って過ごすも、聖女は三日の滞在を経て何事もなく次の月陽樹へと移動していった。

 拍子抜けの行動に疑念を覚えた護衛二人の強い要望により待機すること二日。聖女が次の月陽樹に到着したと報じられ、ようやく一同は胸を撫で下ろした。

 ともあれ、アルクゥはようやく餌にありつける。仕方ねぇなと怠そうに言うヴァルフも足取りは軽い。内心ではヴァルフも拠点を気にしていたのは明らかだった。


 正午丁度にメイの転移目印を使い拠点の前に跳ぶ。

 ヤクシが魔物や魔術の気配を探り、アルクゥとマニはその眼に映らないものを注意深く探した。何もいない。風のない草原に微かな耳鳴りだけが聞こえている。

 帰りの術式を書き始めたメイと護衛にトゥーテを残して屋内に入る。拠点の中は以前とさして変わらない様子だった。再度荒らされた形跡も教会の人間が聖樹の下にある建物に怒って火をかけた様子もない。ヴァルフを先頭に物が置いてある部屋を確認して回りながらアルクゥはほっと息を吐いた。


「何個か持っていってもいいかな」


 研究室ですでにいくつか物を抱えながらアルクゥは訊く。必要分の薬や武器の類を回収しながらヴァルフは苦笑した。


「メイのおっさんが泣いてもいいならな」

「泣く?」

「転移は魔力を喰うからな。あのおっさんの魔力量は俺より控え目だ。あまり厳しくしてやるなよ」


 アルクゥは手元に目を落として苦い顔をし戸棚の奥に直す。善意と好奇心で手を貸してくれる師の知己に負担をかけるわけにはいかない。

 研究室、書庫、談話室、私室と見て回り、前回と異なる箇所がないことを確認して戻る流れとなる。ぞろぞろと連なり出口に向かっているとマニが足を止めた。アルクゥはその背中に鼻をぶつける。


「あ、すまん。何かさっきから音しねぇか? 耳鳴りっつーか……」


 皆で一斉に息をひそめて耳を澄ませる。

 確かに耳鳴りが聞こえるが、それが静寂によるものなのか別に何かあるのか区別が付かない。ゆえに沈黙を終えられないでいると、ヴァルフが思い付いた風情でベルトの皮のホルダーから硝子色の亀裂が入った石ころを取り出した。亀裂が脈打つように黄金に微光している。音の発生源はこの石らしい。

 ヴァルフは石を手の中で転がしながら片眉を上げる。


「ガルドの婆から貰った“お守り”だ。聖人を見分ける宝具を割って作ったあちら側を感知する魔具だとよ。お前も持ってんだろ」


 ヤクシも似たような石を取り出し顔をしかめる。こちらも光っており微かに鳴っていた。マニがおっかなびっくりに指先で突くと黄金が青に変化して耳鳴りが強くなる。


「うわっうるさい。誤作動?」

「聖人にも反応するんだから正常だろ。お前ら二人がいるしな」

「でも」


 アルクゥはマニと顔を見合わせてどちらからともなく前に出た。互いに先んじようとする歩みを制する踏み締めるような足取りで廊下を進み階段を降りていく。

 一階に到着する。左の開け放ったままの玄関扉の先には歓談するメイとトゥーテの姿が見える。素早く右に視線を転じたとき、奥の扉が猿の鳴き声に似た音を立てギイイと開く。

 誰も出てはこない。ただ圧力だけが重い冷気のように床を這って染み出してくる。

 何かいる。

 剣を抜いて確認しに行こうとするヴァルフとヤクシの服を爪を立てて掴む。肩越しに向けられた鋭い二対の目を臆さず睨み返す。ベルティオの手のものだったらどうするのだ。見えないだろう、と。

 アルクゥは短剣を構え一歩一歩扉に近づく。あれは客間か。誰かは知らないが客人気取りとは笑わせてくれる。

 ぎりぎりまで近付き、素早く室内を覗き込んだ。

 ――灰色。

 空気に砕いた石材を塗り込めたような色褪せた風景が目に覆い被さる。吐いた息ですら罅割れ、渇き、崩れていく。薄く開いた口に灰が侵食し喉が固まっていく。

 首根を強く引かれる。臨戦態勢に入ったヴァルフとヤクシの背中を見て幻視から我に返った。

 客間の中央、向かい合う皮張りのソファに初老の女が座っている。

 異様な女だった。左右で反発し合うオッドアイが女を人外のものに見せている。

 右は血のような虹彩、真ん中には嘘のように白い瞳孔がぽつりと穿たれている。そしてもう一方は、かつてアルクゥを慈しむように見ていた友人の目と酷似していた。

 否――そのものだ。アルクゥは吐き気を堪える。


「お待ちしておりました」


 成熟した深みのある女の声が歓迎の意を示した。

 金糸の刺繍が美しい黒衣を着た初老の女は、この場所に何年も座っていたかのような石の佇まいで穏やかな笑みを浮かべている。


 

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