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精霊のシジル  作者: 染料
二章
17/135

第十六話 肆の因縁


「ほら、早く行こうよ英雄サマ!」


 耳元で小さく叫んだリリは、アルクゥアトルの驚いた顔を見てクスクスと楽しそうに笑いながら軽やかに先を行く。ガルドから頼まれたと言って病室に迎えに来たときはぎこちない様子だったが、今は大蛇を倒す以前のように垣根なく接してくれている。アルクゥはフードを深く被り直し何度目か分からない安堵を胸の中で噛み締めながら、友人の背中を緩やかに追った。

 擦れ違う人の流れが途切れることがない。人の海を泳ぐように二人は進む。大勢の会話が混ぜ合わされて巻き起こる騒音は大したもので、声を張り上げなければ互いの声が聞こえない。


「今日の目的は必要な生活品を買うこと! 臨時に借りてる家は何もなくってさ。アルも何か足りないものあるだろ? 討伐隊は夕方には帰ってくるって言ってたから急がないと!」

「人がとても多いようですが、中央区はいつもこうなのですか!」

「北区の人が避難しているんだと思うー!」


 障壁が壊れたから!とリリは叫んでアルクゥを引いた。手近にあった日用雑貨を売る店に入り普通の会話が可能になりアルクゥは聞き返す。


「壊れた?」

「門が溶けちゃったんだ。だから今現在北区を囲む障壁はない。クエレブレのせいで他の魔物はいないし、そいつ自体も手負いだから下りてくる可能性は低いんだけど、今日は念のためね。あ、勿論アルが気にする必要なんてないよ」


 手早く買い込むリリを後目に北の方角を仰ぐ。今この瞬間にも王都の騎士とデネブの騎士の混成討伐隊が残り一体の住処へ向かっている。デネブ側は魔術を扱える騎士を十人出しており、合計四十名の騎士が竜に挑むことになっていた。


 その中にアルクゥは知り合いが二人いた。

 サリュとギルだ。後者は一度会話した限りだが。


 結局ガルドに毒殺されなかったギルは、あれから今日までの四日間何回も病室を訪れた。しかし奮起したサリュに初回以外は阻まれ、あれから言葉を交わしていない。

 他の面会希望者も門前払いだ。中にはギルが一度会っていることを例に挙げて自分も会わせろなどと言う者もいたが「異性の寝間に入りたいなど破廉恥だ!」と騎士の矜持とやらを上手に煽って立ち去らせていた。


「――ああ、始まっているんだね」


 次の店に行く最中、遠くから何重にも響き渡ってくる咆哮が聞こえてきた。

 往来の人々は不安そうに顔を見合わせて一様に北の方角を見る。クエレブレの怒号だった。討伐隊が住処から燻り出したのだろうか。


「アル。きっとサリュさんは大丈夫だよ。何ならお土産も買って行こう」

「……そうですね。きっと大丈夫でしょう」


 それから幾度と聞こえた咆哮は通りにいた人々をすっかり散らしてしまった。買い物を終えた二人が一息吐こうと食事する店を覗くとどこもかしこも満席で、数軒回ってようやく空席を見つけた。

 普段はそう流行らない店なのか、店主は目を白黒させながらテーブルの間を飛び回って注文を受けている。リリがそれを捕まえて果実ジュースを二つ頼んだ。運ばれてきたジュースは甘酸っぱく舌を潤して喉越しが良い。


「っぷは……鳴き声止んだみたいだ。聞こえないね」


 腰に手を当てて一気飲みしたリリは首を傾げる。答えたのは相席する少年と娘の二人組だ。


「もう終わっちまったのかもな。王都の奴ら、やられてたりして!」

「こら、討伐隊にはデネブの騎士もいるんだよ! 滅多なことは言わないの!」


 娘に窘められて少年は口を尖らせる。


「だってよ、王都の奴らに手柄取られたくねぇじゃんか」

「アンタの手柄じゃないでしょ。恩人の手柄だってば」

「知ってるっての! 病院にいるってことは怪我してんのかな。もったいねぇなー。……お前フードとらねぇの?」


 アルクゥは首を振ってフードの縁を更に引き下げる。話題に上ったことで心臓が変な跳ね方をしていた。


「変な奴ぅ。なあ、店主のおっさんもそう思わない? 王都の騎士はさぁ、おいしいとこだけ出張って手柄横取りって」

「はい、パンケーキおまちどうさま。そうだねえ。確かに王都の騎士はいけ好かない感じだよ」

「だろう? 他の皆もぜってーそうだって!」


 耳を澄ませば悪罵が緩やかに店内に広がっていくのが分かった。顔を顰める。気分が良いものではなかった。顔を硬くしたアルクゥに気付いたのか、リリは二人分の代金を店主に押し付けて店を出る。咆哮が止んだことで道には人が戻り始めている。

 リリは先程の少年のように口を尖らせて、しかし大人びた口調で言った。


「私も王都は嫌いだ。けど派遣されてきた騎士は救援要請に応えてくれたんだ。感謝してこそ、罵倒するのはありえない。……デネブの人間は偏屈なのかもしれない」

「私はよく分かりませんが、少なくともリリさんは違います」

「うん。……さ、帰ろう。フードに気を付けて」


 病院の方角に進むにつれて人が多くなる。リリは人ごみの中、アルクゥを引率しながらすいすいと進んだ。人にぶつかることはなかったが、万が一フードが外れないようにアルクゥも注意しながら拓けた場所にまで来た。

 ここは中央大広間と言い、その名が示す通りデネブの中心に当たる。

 円形の広場からは放射状に三本大通りが伸びており、それぞれ議会が開かれる中央塔、騎士団本部、病院へと繋がっている。主要機関へ繋がる広場だった。

 中央区の人間すべてを集めても余裕がありそうな広場は、人を押しやらないと進めない程に混み合っている。行くときには閑散としていたのにこの変わり様はなんだろうか。


 二人のいる側は丁度病院に続く通りの真向かいだ。外周を回って行こうとしたが留まっているように見えて人の流れは回転していた。その非常に遅い流れに巻き込まれ、アルクゥとリリは真ん中に向かっていく。

 不思議なことに中央に行くにつれて人の間隔に余剰が出るようになった。流れが止まったところで背伸びをして中心を見る。


 そこには騎士団に混じって黒い集団がいた。

 王都の騎士だ。デネブの騎士もいる。一様に血に染まっているが怪我ではなさそうだ。予定時間よりずっと早い帰還だった。住民たちは遠巻きに彼らを見に来ていたのだろう。


「ガルドは絶対夕方すぎるって言ってたのに……アル、さっさと帰ろう。止まっちゃ駄目だ」


 勧誘の事情を知っているリリは声を少し硬くする。アルクゥは頷いて通れる隙間を見つけて大回りに病院を目指した。

 病院に繋がる大通り付近は流石に人が少ない。個々の姿が判別できるようになるが、ここまで来れば気付かれることはないだろう。そう高を括ったアルクゥは少しだけ騎士の方を振り返った。サリュの無事を確認したかったのだ。


「やあ、これは英雄殿ではないか!」


 前方・・から聞き覚えのある声がした。

 ギクリとして正面を向く。騎士服に大々的な血痕をつけたギルが騎士然とした表情をして堂々と立っていた。前方不注意だ。


「なぜここにいらっしゃるのですか。騎士の方々は中央にお集まりですよ」

「何となく、勘だ。貴公がいるような気がしてな。中々のものだろう?」


 不可解な登場を深く考える間はない。声の届く範囲の野次馬がこちらを注目している。中には興奮した顔でどこかに走り去っていく者もいた。ギルのたった一言が致命傷になりそうだ。危うくなり始める立場に冷や汗を浮かべながら、外面は毅然として足を進めようとした。


「つれない英雄殿だな。貴公の祝福を想いながらこうして竜種を打ち破って参ったのに、まだ足りないと仰られるのか。いやはや罪なお方だ」


 立ち塞がって芝居を始めるギルに心をこめず祝辞を述べる。


「無事のご帰還心よりお喜び申し上げます」

「ああ、苦難が報われた心地だ。もう一つ願いがあるのだが、良いだろうか?」

「いえ良くありません」

「深窓の花を拝見する権利を賜りたいのだ」


 フードを外そうと伸びてきた手を大きく避ける。リリが後ろで「わあ」と照れたような声を上げた。


「寒気がする茶番はお止めください。私を待っていたならば、何のご用ですか」


 目一杯嫌悪の情を示すとギルは否定せず口の端で笑った。悪戯がばれた子供のような表情だ。


「出歩ける程に快復されたのだな。目出度いことだ。今晩、領主殿が討伐の祝宴を催してくれるそうだが貴公も出席するだろう?」


 蒼い目は反応を楽しむかのように弧を描いている。


「庶民の私が同席するには畏れ多い場所です。貴方は存分に楽しんできてください」

「おや、おかしな冗談だ。英雄を拒む者などいるわけがない。その謙虚な心は非常に好ましいが、卑屈と捉えて侮る輩もいるかもしれんぞ」

「謙虚でも卑屈でもなく事実です。私はこれで失礼いたします」


 「そうか」とギルは半身をずらして後ろを見る。

 何時の間に移動したのか先程は無かった人垣が大通りを妨げており、皆一様にアルクゥとギルに視線を注いでいた。

 

「ほら英雄殿。早く行かねば他の騎士が来てしまうぞ」

「はあ……貴方は一体何がしたかったのですか」

「そうだ。本題を忘れてた。からかうついでに忠告を一つな。数日中に俺たちは王都へ帰投する。焦った馬鹿が強引に貴公に会おうとするかもしれん。気をつけろ。――ああ、本当に早く行った方がいい。監督官殿がこっちに」

「副隊長殿。民衆が騒いでいますが、そちらの方が竜殺しですか?」


 覚えのある声に体が硬直する。

 振り返らず進めばその後の騒乱は避けられたのだろう。しかし止めろと叫ぶ理性より確認したいという衝動が競り勝った。振り返る。ガルドとはまた違った風味の黒尽くめ。聖職者のまとう衣服。

 視線が合う。


「おや、貴女は」


 なぜ聖職者が剣を佩いて討伐隊の監督官などするのか。祈りだけ上げていればいいものの、と心の中で悪態を吐く。

 あちらは気付くか。気付かないか。握った拳にじわりと汗が浮かぶ。

 サタナは朗らかに、胡散臭い笑みを作った。


「――お久しぶりですご令嬢」


 サタナがアルクゥを認識したと確信させる言葉を紡ぐ。

 アルクゥは刹那、恐怖と敵意の間で苦悩する。すなわち背を向けての逃走か、刃を向けての闘争かの二択だ。退いた体はこの場から逃げ出したいのだと震える頭に訴える。


「アル、アル! 大丈夫?」


 もう一歩下がればアルクゥの姿は誰の視界からも消え失せていた筈だった。リリの声が呼び止める。不安に揺れるリリの目を見返して羞恥に塗れた。当然のように置き去りにしようとした己が許せず、しかしながら相手が何かしてこない以上攻撃すれば悪人はこちらだと思考が惑い――。


 それがどんな愚行かも知らず、敵意と困惑に満ちた魔力をただ・・垂れ流すに留める。

 その行動でギルが後ろに飛び退き、サタナが剣を鞘ごと引き抜いたまで見えた。それ以降は痛みと共に訪れた衝撃に何も見えなくなった。


 リリの悲鳴が聞こえる。

 地面に擦りつけられた額が熱い。唇と鼻も熱い。口内に血の味が広がる。鼻から逆流した血が喉に気持ち悪い感触を残す。身動ぎすると後ろに捻りあげられた腕に更に力が込められた。激痛に低く喘ぐ。


 解放を懇願したくなるような痛みは不意に遠のく。頭上でギルが留めてくれたようだった。


「女性だぞ。どんな因縁があるか知らないがやり過ぎだ」

「貴方には関係ないだろう。敵に肩入れするつもりですか」

「離してやれ」

「口を出すな」


 ギルとアルクゥを押さえ付ける男の会話は平行線を辿ったが、磨り潰さんばかりだった力は弱まっている。そっと顔を上げて状況を把握しようとすると、後頭部を押さえ付けられる。


「余程怨みがあると見えるが、それ以上は止めろ。命令だ」

これ・・とは初対面です。怨みも何もない。だが、殺意があった。討伐隊である今は貴方の部下ですが、私の本分は司祭様の護衛。ならば当然の対応だろう」

「英雄殿の敵意は相応の理由があってのことかもしれん。貴公ら、何かしたな? 無理やり面会謝絶を潜り抜けた口か?」


 ギルの言葉に鼻で笑う音がした。


「そんなことはしない。これが英雄だと? こんな武術の心得もない小娘が? なぜ目の色を変えて誘致したいのか理解できない」

「見る目がないぞ貴公」

「貴方には言われたくないな」

「その子をどうするつもりだ」

「借り受けている一室に拘束する。司祭様を害そうとした意図を問わねばならない」


 白い石畳に爪を立てる。悔しいのか怖ろしいのか、涙が滲んだ。抵抗しようと魔力を出すと押さえつける力が強くなる。


「何か言いたいことでもあるのか英雄殿? 大層な称号を頂いている割に、実に弱いな。何を思ってか知らないが、ただ魔力を垂れ流すだけで隠しもしない。力がなければ技術もない。本当に魔術師かも怪しいな。もしや、デネブの議会共が捏造したんじゃないか? 娘が竜を倒したことにして、象徴にする。民意を引き付ける為にいかにもありそうな話だ」

「りゅ……竜を殺してデネブを救ったのはアルだ! わ、私たちの恩人に、それ以上乱暴するなら……!」

「……キミはこの娘の仲間か?」


 男の注意がリリに向けられた。

 ――巻き込むわけには。

 アルクゥは歯を食いしばって自由な方の手を背後に伸ばす。捻られた方の腕が軋む。首を力いっぱい動かして背後の男を視界に入れる。凍り付くような冷たい目がアルクゥを見下していた。身が竦むが、その氷の眼差しはアルクゥを虫の如くにしか思っていない。油断がある。


「まだ抵抗するか」

「貴方のっ……は……」

「何?」


 男の胸元に指先を伸ばした。怪訝な顔をしていた男は視線が合うと硬直する。理由は分からないがその大きな隙がアルクゥに勝利をもたらした。


「貴方の、心臓は、ここだ。貰います」


 無為に垂れ流すと感知される。だから最小限に抑えた。アルクゥの手の平から作り出された刃は零距離で男の左胸を穿って突き抜ける。崩れ落ちる男の下から這い出して顔面を拭った。


「げほッ……がっ……あ……?」


 狙いはずれていたらしい。肺でも掠ったのか男は体を丸めて異音まじりの呼吸をしている。とどめを刺そうかと迷ったが、その様子からもう敵ではないと判断して捨て置く。側に寄り添ってきたリリを背に庇いサタナとギルを見据えると、石ころが一つ頭の横を横切って倒れた男の近くに転がった。


「王都の人間がデネブの恩人に何してんだよ! お前らなんか出ていけ!」


 少年の声が高く響き渡る。それを皮切りにして、面倒事を眺めるだけだった野次馬に変化が訪れた。波紋が広がるように速やかに、アルクゥが英雄その人なのだと伝言されていく度に好奇心に満ちていた表情が気色ばむ。そしてまた一つ、石が投げ込まれる。

 サタナはそれを払い落して大袈裟に肩を落とした。


「面倒なことになったものだね。さて、副隊長殿」

「俺は敵ではないぞ英雄殿」

「おや、寝返りましたか。斬り捨てても良いですか?」

「いやいや誤解があるようなので言い直そう。俺はこの場の誰の敵でもない」

「日和りますねぇ」


 アルクゥとサタナに予防線を張ったギルは倒れた男の傍に膝をつき魔術での治療を始める。そこにも物が飛んでくる。今度は小枝だ。呪詛のような悪罵が広場を包み込み始めていた。中央にある噴水付近で様子を窺っていた王都の騎士たちにも、住人たちは物を投げつけている。


 アルクゥは棒立ちで決して自分には飛んでこない敵意たちを見回した。


 庇われているのは確かだ。なのに異様な空気に寒気がする。

 彼らが罵倒する王都の騎士は今日デネブの脅威を討伐してきた。王都の騎士もまたデネブの恩人であり英雄に他ならない。


「アル!」


 引き絞るような声で呼ばれ焦点を戻すと、薄い琥珀色が目の前にあった。少し寝てください、という囁き声が間近で聞こえた。目を閉じるより、隙を見せた後悔をするよりも早く、一瞬の金属音と共に脅威は視界から退く。割り込んだ広い背中がアルクゥを守ったようだった。


 ――助かった。


「薬種屋の嬢ちゃん。後ろからパシーが来てる。アイツについて行ってほとぼりが冷めるまで詰所にいろ。アルクゥ。今から俺の師匠のところに行くぞ」


 崩れ落ちそうになる膝をどうにか支えてヴァルフの斜め後ろに控える。援護しようと思ってのことだったが、そもそもサタナは剣を抜いていない。鞘に収めたまま、それも構えることなく持っているだけだ。


「三度も取り逃がすとは、あまり経験のない失態です」


 アルクゥを真っ直ぐ見ての敗北宣言に言い返す。


「四度目ですよ聖職者」


 矜持に傷の一つでも付けてやりたかったのだが、サタナは機嫌が良さそうだ。


「そうでしたか。私が捕まえるか、五度目があるのか、それとも次はないのか。……できることなら再びお会いしたいものだ」

「アルクゥ。無視しろ。行くぞ。丁度騎士団長も来た。野次馬共を抑えてくれるだろ」

「ちょっと待った!」


 ギルが声を上げて何の警戒も見せずに近寄ってくる。アルクゥは剣に手を添えたヴァルフを制して出迎えた。


「庇ってくださってありがとうございました」

「まあ、何と言うか、俺が貴公を引き留めなければこんな騒ぎにならなかったしな。すまん。広場にいるかもしれないと聞いて、つい探してしまった。これは詫びだ」


 武人らしい手がフードを外して怪我をした部分に触れる。抵抗感はあったが意図を察して大人しくすること数秒の後、どこもかしこも痛かった顔面はすっかり治っていた。魔術とは便利なものだ。


「別嬪だな英雄殿。さあ、行ってくれ。貴公がいると我々は悪者だ」

「……ありがとうございます」


 「何をしている!」と朗々とした声が響き渡る。騎士団長が到着したのだ。剣呑な雰囲気と血の臭いが漂う場に躊躇いもせず踏み込み、デネブの騎士たちに指示を出して場の鎮静化を開始する。


「おい。ぼうっと歩くな。あんまり遅いと荷物みてぇに担ぐぞ」

「それは御免被ります。あの、ヴァルフさんも、ありがとうございました」


 返事はなく頭を乱暴に撫でられる。

 ヴァルフが先に立ったことで人の壁は勝手に崩壊した。その間を足早に通り抜け、二人はネリウスの住居へ向かう。その間、ギルが別れ際に冗談交じりに言った言葉がアルクゥの頭の端に妙に引っ掛かっていた。



  

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