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精霊のシジル  作者: 染料
六章
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第百六話 冥府より狭間を抜けて



 どれほど見詰めていてもマニは動かない。


 ほんの微かな、衣服の揺れさえ見逃さないよう瞬きをせず息まで殺して見続けているのに、呼吸の起伏すら認められないのは一体どういうことだろうか。

 肌は蝋のように白い。生きた人間の色彩にはありえない、厳かで隔たりある黒白にマニは包まれている。

 それでも、急いで揺り起こせばまだ間に合うはずだと、惑い出ようとしていたアルクゥは襟首を掴まれて立ち止まる。「しっかりなさい」と低く諌める声に、じわりと滲んでいったマニの姿を袖で拭い喉の震えを熱い息にのせて吐き出した。

 周囲をゆっくりと見回す。

 見える限りに人はいない。薄暗い室内に浅い影を落とす肉塊が異様だ。人の心臓によく似た巨大なそれは落ち着いた脈動を繰り返している。全体に枝走る光る亀裂が一つ脈打つごとに広がっていた。

 じきに割れてしまいそうだ。

 アルクゥは思い出したように漂う悪臭に鼻を覆って正体を見極めよう目を凝らした。するとほの白い亀裂がぞろりと動く。

 ――中のものもまたアルクゥを覗いていた。

 深海魚の白く濁った瞳を想起させるどろりと絡み付く視線に怯え一歩下がったアルクゥは同時に困惑する。確かに未知の怪物ではある。しかし道理を歪めて作り出されたという点は今までのものと違いない。ならば一も二もなく排除しにかかるのがアルクゥの持つ力の性質であるというのに、この局面になって沈黙するとはどういうことか。

 肉塊の鼓動だけが響く室内にぱきり、と鋭い音が混じった。肉塊の上部から伸びたもっとも深い亀裂が一番下に到達した音だ。するとその大きな亀裂が更なる亀裂を呼び肉塊に光の筋が走る速度が上がる。まるでアルクゥと視線を交わしたことが切っ掛けのように思えてぞっとする。

 じきに割れて中身が出てくるだろう。だが決してこちら側に来させてはいけないものだ。

 そうやって肉塊を理解したアルクゥは攻撃に転じた。対象を取り囲んだ魔力の刃は矢よりも速く一点に向かい収束したが、その全てが見えない壁に遮られて砕け散る。


「魔術……」

「違う。元から置いてあった術式だ。こっち・・・もな。性格の悪い手だが定石ではある」


 ヴァルフは舌打ちしそうな勢いで言いマニの手前辺りにナイフを投げる。床に触れた瞬間に煌めく刃は黒く朽ちた。


「いるんだろうが。引き摺り出されたくねぇならさっさと出て来い」


 ヴァルフの声にすんなりと応えて肉塊の陰から姿を現す者がある。

 白衣を着た研究者然とした細身の男だった。

 それ以外には取り立てるほどのものはなく、十人並みの善良そうな顔立ちは前に出会ったことがありはしないかという既視感を抱かせる。だがこの場にいる時点で黒蛇の一員である可能性は高く容赦の必要性は皆無だ。捕らえるかここで排除するか。

 どの選択を取るにしても早々に動きを奪っておくべきだとアルクゥは狙いを定める。足を切断してしまっても治癒の得意な司祭がいるので死は引き延ばせるだろう。情報が欲しければその間に聞き出せばいい。


 男はその出鼻を挫くようにアルクゥに手の平を向けた。


「待て。久し振りなんだ。少しくらい話そうじゃないか」


 聞いたことがある声に寸の間追憶したアルクゥは、記憶と符合する人物の名を吐き捨てた。


「魔術師ベルティオ……その姿が本当ですか」


 うん、と臆すことなく答えた男はヴァルフとサタナを見遣り、しかし何の反応も見せずにアルクゥに視線を戻す。


「クーデターの時以来かな」

「直接の対面はそうでしょう。間接的な関わりは汚らわしい泥のように私に纏わりついていましたが」


 アルクゥは横目で肉塊の状態を確認する。罅がない場所を探す方が難しくなりつつあった。時間を掛けてはいられない。


「貴方と話すことなど何もありません。私は貴方を殺しに来たのですから」

「殺すって……これについて聞きたくはないのかな?」


 僅かに体を引いたベルティオだがアルクゥの警戒の先を見透かすように肉塊に触れる。事も無げな行動からベルティオにとって危険なものではないのだろう。間近に倒れたマニにとってはどうだったのだろうか。アルクゥは視線を溢すようにマニを見る。引き絞られたように熱くなる喉を上下させて無理やり目を引き剥がした。


「彼が最後の一押しを手伝ってくれたんだ。感謝しなくてはね」

「何を……させた」

「させた? してくれたんだよ。私は何の無理も強いてはいない。彼が自らの意思でそうしたんだ」


 愛玩動物を撫でる手付きで身の丈の何倍もある肉塊を愛おしみ、詳細には語らず知欲を掻き立てるのみに留める。その小出しの情報すらも厄介で、マニの現状が肉塊に手を出した結果だとも聞こえた。たとえ嘘だとしても安易に手が出せない状況に変じる。

 ベルティオ自身は厄介な者ではない。体つきは味方二人と比べてみても貧相そのもので戦闘に通じていないことは明白であり、武器らしい武器も見当たらない。単体での対面であれば間違いなく弱い部類だ。

 ベルティオの強さはそのことに対して自覚的な部分にあるのかもしれない。ゆえに他人を支配し使役するに長け、言葉を弄するに慣れ親しみ、己は安全な場所から状況を動かす。

 ならば――ここはベルティオの堅城か。

 行き着いた結論を吟味しようとした矢先に、ごぽり、と沼地のあぶくが弾けたような音が耳に届いた。突如としてマニの体が大きく痙攣し、くの字に曲がり激しく咳き込む。硬直して動けないアルクゥの前でしばらく血を吐き出し続けた後、喀血が収まってからは体全体がゆっくりと静かに波打ち始めた。

 武器を取り落したことに気づかないアルクゥの耳にベルティオの意外そうな呟きが意味もなく流れてくる。


「また蘇生したのか。中々にしぶとい」

「マニの魔力は空のようですがそちらの醜い物体が原因なのでしょうか。幽鬼を使役するのはお得意なようですしねえ。それとも貴方自身が何か?」


 言葉がないアルクゥに代わりサタナが問いを引き継いだ。サタナは表情こそ普段のままだが、声の調子には微かな起伏がある。友と部下を殺したベルティオに対する感情がその気付くことすら難しい部分に込められているように思えてならない。


「それにしても、見るほどに醜い肉の塊だな。研究者とは精神構造がよく分からない生き物ですねえ。自分の姿は美しい女性に偽るくせして、その手で生み出すのは醜怪の粋を極めた物体とは」

「本っ当に……心底、忌々しい男だ。大人しく殺されていればよかったものをなぁ」


 アルクゥには流れるように紡がれていた返事はサタナに対しては歯切れが悪い。崩れた口調の片鱗は苦手意識の発露か。思い返せば誘拐された夜に盗み聞いた会話も今のような雰囲気だった。それを知っているせいか、ベルティオの些細な素振りが苛立ちを示しているように思えた。サタナにその感情が伝わっていないはずがないのに煽るように続ける。


「ああ、そういえば貴方の見えない部下はどちらに? 聞いたところによると、貴方の偽装した姿の原型だとか。目を抉ってしまったので隻眼なのは知っていますが、それでもさぞ美しい姿なのでしょう。是非ともお会いしてみたいものだ」


 酷く粘着質な意味を含む口調だった。

 少しでも当人の本質を知らなければ味方のアルクゥでさえ顔を顰める言葉にベルティオは返事を寄越さない。心臓に悪い静寂が落ちる。アルクゥは息を詰めてベルティオの動静を窺っていたが、変化は予想外の方向から現れた。

 視界の右端に影が落ちる。

 一瞬の遅れを取りながらも視野に収めると、サタナの右横、大きく歩いて十歩先に着地したのは話題に上っている隻眼の女だ。

 手に鈍く光る刃物を認めたアルクゥは、ヴァルフとサタナが全く反応しないのを見て女の動線を阻む位置に飛び出す。手馴れてはいるが動きはそれほど速くはない。

 短剣を突き出した手首を手の平で払い、体勢を崩して見せた背中を思い切り押して床に叩き付ける。幽世の中にいるそのままの身体能力で、強化したこちらに敵うわけがない。そのまま拘束しようと更に力を込めたとき、ふとした違和感が頭を過ぎる。

 ――司祭はこの人の姿を知らない。

 見ていないのに、魔力に因る力に怪我を負わされている。疑問符を浮かべた刹那、空を切る鋭い音に反応が遅れた。深々と裂かれた腕が血を溢す。

 飛び退いたアルクゥを女は追撃しなかった。目が覚めるような碧眼と視線がかち合う。曇った硝子玉のような瞳はすぐに翻り、ベルティオの元へと戻っていった。まるで見えているかのようにヴァルフがそれを追って何かを天高く放り投げる。

 放物線を描いたそれは空中で止まる一瞬、黒い光を湛えた珠だと全員の目に存在を知らしめてから、直後に砕け散って無数の光の粒子となり結界を形成した。ヒルデガルドの研究成果が幽世と現世の距離を薄くする。


「申し訳ありません。助かりました。腕を」

「痛いっ……いきなり掴まないでください。それになぜ挑発するような真似を、司祭らしくもない」

「貴女ほどではありませんが」

「私の言葉は宣言です」


 サタナは苦笑をこぼしてアルクゥの右腕に深々と刻まれた五本の傷跡をなぞり――。


「――鱗?」


 アルクゥは熱いものに触れたように腕を引き苦い顔で正面を向く。この結界の中では誰にでも視えるのだ。ガルドの成果の偉大さが少しばかり憎たらしい。ヴァルフが敵二人から目を離さないでいてくれるのがせめてもの救いか。

 自分で治癒を開始しながらサタナで良かったと言い聞かせる。奇妙に思おうが不気味に思おうが、この司祭ならば状況に支障を来たす真似はしない。

 度重なる動揺のせいで一向に塞がらない傷に苛ついていると、横から奪い返すように腕を取られた。


「あの女性が捨て駒か否か、試す価値があると考えたのです。あわよくば炙り出せるとも……エルイトの意識が残っているか確認もしたかった。結果は後者、エルイトは既にあの体にはない。ですが貴女に傷を負わせてまで確認する事柄ではありませんでした」


 鱗について質すことも気にする素振りも見せず整然と挑発の理由を説明され、アルクゥは閉口してただ頷く。これほどに自分を意のままに操れるのかと、感情が行動と表情に出やすいアルクゥは感心すら抱くほどだ。


「まるで獣に掻かれたような傷ですね。腱を切られなかったのは幸いでした」

「今は貴方にも見えるでしょう」


 治癒の完了と共に礼を投げて腕を取り戻したアルクゥは攻撃を阻んだ右腕の竜鱗を撫でつつ、ベルティオの傍に佇む女を指さし素っ気なく続けた。


「彼女も異形だ」


 女の異質は両手に現れている。一見、整えられた美しい爪は先を見るごとに尖り、鋭利な角度で曲がって行く。人の肉を容易く裂くのに適した獣の爪だ。エルイトが意識の主導していた時には獣の片鱗すらなかったのに、たった数日でアルクゥよりも酷い有様だ。憐みに胸が痛むのは自分も辿るかもしれない道であるがゆえか。


「その女性はもうすぐ人ではなくなりますよ」

「ああ、今回は早いな。無理をさせてしまったようだ。にしても、実際には初めてこうなった姿を見るが……お前は形だけはいつでも美しいな、シリューシュ」


 サタナの挑発に苛立つ程度に大事に思っているのなら少なからず困惑するであろうと投げた言葉は見事に目論見が外れる。状態を了解している様子を訝しむアルクゥにベルティオはあっさりと種を明かした。


「当然、彼女の主として聖人の辿る道は知っている。その対策も」

「その結果がそれか? お人形にされてその女もさぞお喜びだろうよ」

「シリューシュが私の傍にいるのは彼女の意思だ」

「その手の勘違い野郎は春先によく見かけるもんだが……」


 ぱき、と二度目の大きな音が会話の間に差しこまれる。

 余裕を見せつつもその実はマニを奪還する機会を窺っているヴァルフにアルクゥは後ろから小さく耳打ちした。時間がない。


「罅が深くなっている。早くしないと」

「ひび? 何かあるのか?」


 アルクゥは眉を寄せサタナを振り返る。


「あの塊に走る線は」

「全く見えませんね」


 アルクゥは混乱する頭を抑えるように額に手を当てる。汗が手の平にべたついて気持ち悪い。

 幽世の中が結界で露わになる。腕に生えた鱗も目撃された。なのにあの白い亀裂は見えていない。

 つまり――何が何だかわからない。

 この場を、影をも掴ませなかったベルティオを討つ千載一遇のチャンスと見るか、未知の潜む魔境と判ずるかによって先の明暗は分かれるだろう。

 アルクゥは口元を手で覆い矜持と命が掛かった問答に対峙する。

 ここで因縁を絶つ決意は変わらず胸に強くあり、全てを掛けて成し遂げるべき役目だと思っている。一方でベルティオの持つ未知の物体は、ともすれば決意も覚悟もアルクゥが連れて来た命二つも、先んじたマニの命も、全て等しく飲み込んでしまう可能性を孕んでいた。天秤にかけてみずともどちらが重いかは明らかだ。

 アルクゥは当初の指針を翻す。行き場を失った怒りと恨みを発散せずに飲み込むのは至難の業だ。苛立ちで視界が滲むほどに悔しかった。


「いい加減に実りのない会話は止めましょう」


 焼き切れそうな自制心を振り絞り喉の震えを隠して切り出す。敵の腹を探ろうとしていたヴァルフとサタナは口を噤ぎ、ベルティオだけが表情に好奇を滲ませた。


「ではどうするのかな」

「マニを返してください」

「どうぞご自由に。私は邪魔なんてしていないじゃないか。キミたちが勝手にそこで立ち止まっているだけ」

「罠に、その女性まで潜ませてよく言う。……マニをこちらに戻してくださるのであれば私は退きます」


 ベルティオは器用に片眉を上げる。


「最初の勢いが嘘のようだ。世間知らずのご令嬢らしくないまともな判断で驚いているよ」

「私はここを離れて、今後一切貴方に関わらない。貴方も私に関わるのは止めてください。互いに互いを侵さないよう約束しましょう」

「口約束を信じるお人好しはいないなあ」

「私がそのお人好しであったときに始末しておくべきでしたね」

「言うね」


 さて、とベルティオは顎に手を当てて思案する様子を見せる。


「そうだな。戦闘に長けた魔術師が二人いるのでは分が悪いか。いいよ。条件によっては互いの不可侵を受け入れてあげよう」


 条件、と口の中で繰り返したとき、ヴァルフが肩に持たせ掛けていた長剣を静かに下ろした。視界の端ではサタナが早々に鞘を払っている。

 アルクゥもまた両者に倣い準備をしなければならなかった。ベルティオのニヤニヤ笑いが既に答えを明示している。


「――キミがそこで死んでみせてくれ。そうしたら他は帰してあげるよ」

「テメェが死ねよ」


 ヴァルフは剣を抜く動作の延長で鞘を投げ付ける。いつの間に術式を仕込んだのか鞘は中空で紫電を放ち、ベルティオは辛うじて避けて唾を吐く。


「くそっ、粗暴な男が。――閉じろ! シリューシュ、殺せ!」


 怒号が響き渡り背後で大扉が閉じてひしゃげる。同時にベルティオの足元に展開した召喚陣からは無数の海魔が立ち昇り、命じられた異形の女は獣のしなやかさで地を蹴った。

 宙を滑り迫る先駆けの海魔をヴァルフが叩き切り、それを目晦ましに接近していた女をサタナが迎え撃つ。軽くいなし体勢を崩したところを蹴り飛ばしてから、サタナは前を見据えたままヴァルフとアルクゥに先を促した。


「こちらは抑えます。二人はマニを」


 指図するなと吐き捨てたヴァルフは襲いくる魔物を切り捨てながら、遠くから魔術を行使しようとするベルティオにナイフを投擲して中断させる。


「私が行こうか?」

「いいや、ほっとけ。止めてはみたが召喚の間は大した魔術は打てねぇな。あまり気にする必要はないだろ。マニの回収が先だ。お前は後ろからついて来い。離れるなよ」


 アルクゥは頷き、宙を右手で払う。魔力の刃に貫かれて墜ちたのは十数体、しかし体感では減ったように思えない。目を凝らせば共食いをしている個体もいる。群れとしての統率はなく、ただベルティオを攻撃しないという点だけが唯一の共通した行動だ。

 絢爛な光の結界を黒々と染める魔物の中を、アルクゥはヴァルフの背に庇われながら走る。

 ヴァルフが半ば突っ込むようにして血の臭いがする獲物の争奪戦をする魔物の一団を切り払い、アルクゥが隙間を縫ってマニを抱え込む。

 首を支えて仰向けにすると、マニは細くだが目を開けて強い橙色を見せる。アルクゥは魔物の只中にもかかわらず安堵の息を吐き、


「羽……?」


 うなじを支える手の平に柔らかい感触があった。取ってみると空気よりも軽く思えるあかがねの羽毛は、傾けると光の当たり具合で微かに青や銀を帯びる。


「抱えられるか?」

「大丈夫! 逃げよう!」


 然して気にすることなく羽を捨て、アルクゥはマニに肩を貸す形で担ぐ。

 体格差にふら付きながらも大急ぎでこの場を脱しようとしたとき、ずしんと重みを持った空気が後ろからアルクゥを呼び止める。

 振り返ってはいけない。

 咄嗟の判断が半ばまで逸らした首を不自然に硬直させる。その体勢のまま息を呑んで、嫌な音を立てる首をどうにか正面に向ける。

 急かすヴァルフに返事をして歩みを再開する。後ろを意識してはいけない。禁じられていたのに振り返り、死を目の当たりにしたどこかの国のお伽噺を思い出す。

 それでも五感は正直に危険を嗅ぎ取ろうと常以上の鋭敏さを発揮した。鼻が空気を嗅ぎ耳が状況を聞く。

 肉塊の鼓動は止まっていた。噎せ返るようだった悪臭も消えている。何かしらの変化が背後で起こっているのだ。

 それでも見なければ大丈夫だと根拠もなく自分を勇気付け――ふとつい先ほどを思い出した。

 自分はもうあれと目を合わせた。

 アルクゥは襲ってきた海魔を魔術で両断して大きく振り返る。肉塊の裂け目からほの白く光る多頭多腕の何かが身を乗り出して、アルクゥの顔を覗き込むように首を傾げていた。


 

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